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企業が工事を実施する際、自社の従業員だけでなく、同じ場所で働く一人親方に対しても、安全確保のための措置を講じる義務があります。
しかし「具体的な措置の内容が分からない」「元請け側の労災保険は適用されるのか」など、疑問をもっている企業担当者の方も多いのではないでしょうか。
本記事では、一人親方への安全配慮義務の内容や注意点、労災保険の適用について解説します。
企業は、自社の従業員と同じ場所で危険有害な作業を行う一人親方や下請け業者に対して、安全確保のための措置を講じる必要があります。
措置は、労働安全衛生法の改正省令(令和5年4月施行)にもとづく義務です。一人親方などの労災事故が多い実態を踏まえ、措置の対象が従業員以外に拡大されました。
対象となる危険有害な作業とは、同法22条にもとづく省令によって、従業員に対する健康障害防止のための保護措置の実施が義務付けられている業務です。たとえば、以下の作業が挙げられます。
「建設業の2024年問題」を背景に、建設業で働く人の安全・健康確保は注目が高まっており、下請けへの安全配慮も重要な課題です。
なお現在、厚生労働省において一人親方などのさらなる安全確保に向けた取り組みが検討されています。検討会の報告書(令和5年10月公表)は、厚生労働省のホームページから確認可能です。
【参考】
厚生労働省「『個人事業者等に対する安全衛生対策のあり方に関する検討会』の報告書を公表します」
厚生労働省「2023年4月1日から危険有害な作業を行う事業者は一定の保護措置が義務付けられます」
e-Gov法令検索「労働安全衛生法」
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一人親方への安全配慮義務の措置内容は、以下の2つに分けられます。
工事の準備にあたって、自社に必要な措置をあらかじめ洗い出しておくことが重要です。
各措置内容について説明していきます。
【参考】厚生労働省「2023年4月より労働者と同じ場所で危険有害な作業を行う個人事業者等の保護措置が義務付けられます」
危険有害な作業の一部を一人親方や下請け業者へ請け負わせる場合、従業員と同等の措置を講じる必要があります。
義務付けられている具体的な措置は、以下のとおりです。
一人親方だけが作業する場合でも、設備の稼働や作業方法の周知による安全確保が求められています。
同じ作業場所にいて請負関係がない一人親方や他社の従業員などに対しても、従業員と同等の措置を講じる必要があります。
義務付けられている具体的な措置は、以下のとおりです。
同じ作業場所にいるすべての人に目を配り、必要な周知や立ち入り制限、退避の呼びかけにより保護する義務があります。
一人親方への安全配慮義務に関する注意点は、以下の3つです。
各注意点について説明していきます。
請負の場合、安全配慮義務にもとづき措置する対象は、作業の一部を請け負わせる相手方のみです。
一次下請は二次下請に対して配慮義務がありますが、三次下請へは配慮義務を負いません。三次下請への配慮義務は、作業を請け負わせる二次下請が負うためです。
また、作業のうち一部を請け負わせる場合のみ、措置を講じる必要があります。作業の全部を請け負わせると注文者とみなされ、そもそも配慮義務が発生しないためです。
自社が措置を講じるべき相手方や場面をしっかり整理して、工事の準備を進めましょう。
【参考】厚生労働省「2023年4月1日から危険有害な作業を行う事業者は一定の保護措置が義務付けられます」
一人親方への安全配慮義務は単に配慮するだけではなく、実効性を持たせる必要があります。
たとえば、周知の方法は口頭で伝える以外にも、以下の工夫が考えられます。
また、必要な措置の周知を受けた一人親方が、措置を確実に実施することも大切です。一人親方が家族従事者を使用する場合、家族従事者にも同様の措置を行う必要があります。
工事の準備にあたっては、配慮義務の対象をリストアップしたうえで、より効果が出る具体策を検討しましょう。
元方事業者は、請負人が法令にもとづく措置を行っていない場合、必要な指示をしなければなりません。労働安全衛生法第29条第1項に定められた義務であり、請負人は指示に従う必要があります。
元方事業者とは、同一の場所で請負人に仕事の一部を請け負わせている事業者のことです。複数の請負関係がある場合はもっとも先次の注文者を指します。
すべての関係請負人が安全配慮義務を履行しているかどうかを管理するのが、元方事業者の責務です。
【参考】e-Gov法令検索「労働安全衛生法」
一人親方の労災保険の適用に関して知っておくべきことは、以下の3つです。
労災保険は万が一の事故への備えであり、元請けが一人親方へ作業を請け負わせるにあたって必須の知識といえます。
それぞれの内容について説明するので、ぜひ参考にしてください。
一人親方との契約形態が請負であっても、従業員と同様の働き方だと認められた場合、元請けの労災保険が適用される場合があります。
実質的な使用従属関係があるかどうかが、労災保険の適用の基準です。たとえば、以下をすべて満たす例では、従業員と同様の働き方であると認められます。
適用対象と認められる場合、元請けが一人親方の労災保険の加入手続きをする必要があります。もし適用対象かどうか分からなければ、近くの労働局や労働基準監督署に相談可能です。
【参考】厚生労働省「建設事業を営む事業者の皆さまへ」
一人親方には団体保険への特別加入制度があり、個人として任意で労災保険に加入できます。
労災保険は療養・休業給付や遺族への給付など、万が一の場合に確実な補償を受けられる制度です。そのため、政府も一人親方に対して労災保険の加入を促進しています。
元請けとしては、一人親方との契約の際に労災保険の加入の有無を確認し、未加入の場合には加入を推奨するのがおすすめです。
【参考】厚生労働省「特別加入制度のしおり(一人親方その他の自営業者用)」
労災事故が起きた場合、一人親方が労災保険に加入していないと、元請けに多額の損害賠償金が生じる場合があります。
たとえば、危険有害な業務により生じた怪我や病気の治療費、働けなくなった場合の損害金などです。
一人親方への安全配慮義務違反が争点となり、違反に該当した場合は損害賠償金の支払い義務が生じます。
労災保険への加入は、元請け・一人親方いずれにとっても万が一の備えとして重要です。
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企業が工事を実施する際、同じ作業場所で働く一人親方に対して、請負関係の有無にかかわらず安全配慮義務が生じます。
安全配慮にあたっては、自社が措置すべき対象を整理したうえで、安全に関する周知の仕方を工夫するなど、実効性のある取り組みの実施が不可欠です。
また、万が一の事故の際に一人親方に労災保険が適用されるよう、自社の保険への加入手続きをしたり、個人での保険加入を推奨したりする必要があります。
本記事を参考に、一人親方への安全配慮義務を適切に履行しましょう。
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