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華麗なる連携プレーで、メンタル不調の兆しをキャッチ!―産業医のメンタルヘルス事件簿vol.4

企業の人事・労務担当者が思い悩むことの1つに、従業員のメンタルヘルス対応が挙げられるでしょう。本連載では、「産業医のメンタルヘルス事件簿」と題し、VISION PARTNERメンタルクリニック四谷の産業医兼精神科医の先生方に、産業保健現場で起きていることやその対応について寄稿いただきます。今回は、関係者の連携によってメンタル不調の兆しを捉えられたことについて、院長の尾林誉史先生が押さえておきたいポイントを語ります。

従業員が「産業医面談を申し出るまで」のハードルとは?

従業員自らが産業医面談を希望され、その結果、必要な打ち手に繋がればベストです。しかしながら、そこに至るまでは大きく3つのハードルが存在することも事実です。

  1. ①産業医面談の認知度が低い、産業医面談に対する心理的負荷が大きい
  2. ②自分自身の健康状態に気付きにくい
  3. ③現場と人事・労務、産業医の連携が不十分

これらのハードルを越え、従業員から産業医面談を申し出てもらうには、人事・労務担当者はどのような工夫をすればよいでしょうか。ハードルごとに解説していきます。

ハードル①:産業医面談の認知度が低い、産業医面談に対する心理的負荷が大きい

まず、①に関しては、日頃からの普及活動が欠かせません。衛生委員会の参加メンバーに一人でも多くの従業員代表を選出し、衛生委員会における産業医のコメントやメッセージを多く残し、後日議事録として社内広報する、産業医主催の社内イベントや勉強会を積極的に開催するなど、具体的な活動が効果的です。

ハードル②:自分自身の健康状態に気付きにくい

②に関しては、従業員の方々が正しい知識を有すること(セルフケアの促進)が大切です。とはいえ、自分自身の健康状態を客観的に捉えることは、なかなか困難なもの。そのために、メンター制度の活用や上長による1on1ミーティングの実施など、周囲によるサポート体制を構築しておくことも大変重要な考え方です。

ハードル③:現場と人事・労務、産業医の連携が不十分

③に関しては、産業医面談の位置付けを大きく変えること。長時間労働に対する事後措置、休職もしくは復職時、ストレスチェック後のフォロー時など、産業医面談の実施タイミングを必要最小限の機会にとどめるのではなく、従業員と産業医のコミュニケーション活性化を目的としたカジュアルな産業医面談を実施できるように制度設計し直すことです。

今回は、これらの点をうまくクリアしながら、メンタル不調の兆しを捉えることに成功した事例を共有します(事例の細部は変更しています)。

「ここまでやるの?!」くらいがちょうどいい

IT系企業に新卒で入社したAさん(25歳女性)は、明るく社交的で知識欲も高く、業務も精力的にこなしていました。この会社では新人研修時にメンターが配属され、定期的に1on1ミーティングを実施する仕組みがありました。ある1on1ミーティングの実施時、Aさんがメンター(30歳男性)に、「最近、気候変化のせいなのか、片頭痛がひどくて」とこぼしました。「他に気になる症状はない?」とメンターが尋ねたところ、「実は上長のBさん(37歳男性)に進捗報告をする時には、決まってお腹を壊します。あと、食欲もちょっと落ちました」との返答がありました。Aさんのメンターは、衛生委員会の参加メンバーにこのことを相談。心配したメンバーを通じて、労務担当のCさん(35歳女性)にアラートが上がりました。CさんはAさんにチャットツールを通じて、経緯の報告を受けたこと(ここまでの流れについて、Aさんを含む関係者の承諾を得て進めていること)や状況の整理を行い、隔週で労務面談が実施されることになりました。また、メンターの配慮で、同期と離れた施設に勤めるAさんを同期が多く勤める本社のランチに誘ったり、配置転換を検討できることをお伝えしたり、いざという時には産業医面談を行えることも説明していました。労務面談を開始して2ヶ月後、Aさんから産業医面談の依頼がありました。産業医がAさんと面談したところ、「半月前に心療内科を受診して、お薬の服用を始めました」とのお話になりました。身体症状や精神症状をヒアリングした上で、休職がすぐに必要とまでは言えないものの、業務上の配慮がより必要だと産業医は判断。産業医より労務Cさんに、業務の区切りが付く1ヶ月後までは就業制限を行い、その後は配置転換を視野に入れるべきであると助言がなされました。労務Cさんから上長Bさんには、Aさんの適正配置の必要性という文脈でチーム異動が打診され、現在はAさんも気持ちを新たに業務に専念しています。

「ここまで細やかにやるのか」と驚かれた方もいらっしゃるかもしれません。この会社では、冒頭に記した留意点がしっかり浸透することで、多くの従業員の方々が気軽に人事・労務の担当者、そして産業医につながる仕組みが自然とできています。一朝一夕にはできないことかもしれませんが、決して不可能な仕組み作りではありません。社内の風通しをよくする好事例として、ぜひみなさんの会社における産業衛生の場面でも活かしていただければと思います。

尾林 誉史 (おばやし たかふみ)

VISION PARTNERメンタルクリニック四谷 院長(精神科医・産業医) / 精神科医・産業医

東京大学理学部化学科卒業後、(株)リクルートに入社。退職後、弘前大学医学部医学科に学士編入し、東京都立松沢病院にて臨床初期研修修了後、東京大学医学部附属病院精神神経科に所属。現在、VISION PARTNERメンタルクリニック四谷の院長を務めながら、19社の企業にて産業医およびカウンセリング業務を担当。メディアでも精力的に発信を行なっている。著書に「元サラリーマンの精神科医が教える 働く人のためのメンタルヘルス術」(あさ出版)、共著に「企業はメンタルヘルスとどう向き合うか―経営戦略としての産業医」(祥伝社新書)などがある。

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