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企業の人事労務担当者が思い悩むことの1つに、従業員のメンタルヘルス対応が挙げられるでしょう。「産業医のメンタルヘルス事件簿」では、VISION PARTNERメンタルクリニック四谷の産業医兼精神科医の先生方に、産業保健の現場で起きていることやその対応について寄稿いただきます。
今回はVISION PARTNERメンタルクリニック四谷のパートナー医師であり、榊原産業医パートナーズ株式会社代表の榊原亙先生に、休職者への企業対応の中から「コスパの良い方法」を教えていただきました。
「簡単にメンタルヘルス不調者を減らす方法があればよいのですが、難しいですよね?」
これは、私が人事労務担当者からよくいただく質問の1つです。職場におけるメンタルヘルス対策は、一次予防(不調の未然防止)・二次予防(不調の早期発見および対応)・三次予防(職場復帰支援)から成ります。これらの体制整備に相応の時間がかかることは事実ですが、具体的な取り組みの中には、それほど時間をかけなくとも効果が得られやすい「コスパの良い方法」もあります。
以下に事例を紹介しながら、その方法を解説します(事例の細部は変更しています)。
Bさんから話を伺ったのはそれから随分あとのことで、私自身がAさんの職場復帰支援に関わったわけではありません。この企業では似たようなケースが頻発していたようで、Bさんは「従業員のメンタルヘルス対策と言っても、何から始めたらよいものか…。ひとまず、ストレスチェックの受検率をもっと上げていこうと思います」と仰っていました。
他の企業でも同様の相談をいただきます。本来メンタルヘルス対策は、企業の現状を踏まえて一次~三次予防を計画的に進めていくものです。しかし、既に不調者が続出している場合、効果が比較的得られやすい対策をすぐに始めることが優先されます。そこで、私はBさんへ次のように提案しました。
「まずは、主治医へ手紙を書くところから始めてみませんか」
Aさんの休職期間中、会社から主治医にはほとんどアプローチしていませんでした。
想像してみてください。もしも、この記事をご覧になっている皆さんが主治医の立場なら、患者さん(休職者)に関する情報が多い場合と少ない場合のどちらが治療しやすいでしょうか。もちろん、情報が多い場合ですよね。
そこで役立つのが、会社から送る「主治医への手紙」です。例えば、休職者は通常どのような職場環境で、どのような業務をしているのか。会社はいつ頃から不調を把握していて、何か就業上の配慮を行ったのか。休職期限はいつまでで、会社としては復職時にどのような水準まで回復していてほしいのか。休職から復職後までどのようなプロセスになっているのか、どのような職場復帰支援制度があるのか――会社から共有される情報が充実していると、職場復帰以降まで想定した治療方針を立ててもらいやすくなります。
主治医との連携が重要なのは、休職者の状態改善に伴い、会社が復職可否を判断する際にも同じです。今度は、会社がいかに主治医から必要な情報を得るかがポイントになります。しばしば見られるのは、復職可能との診断書が提出された後になって、会社が追加情報を要請するケースです。これでは、休職者を含めて誰にとっても時間のロスとなってしまいます。そうならないためにも、復職判断に必要な情報が得られるような「復職に関する主治医意見書」の書式を、あらかじめ人事労務担当者と産業医とで協力して作成しておきましょう。
なお、主治医と連携する際には、その趣旨や連携内容を休職者へ十分に説明し、同意を得ることが必要です。また、センシティブな情報を含む書類のため、封をして休職者から主治医へ直接渡してもらう形が望ましいでしょう。
企業のメンタルヘルス対策では、現状を踏まえて一次~三次予防を計画的に進めていくことが重要です。既に不調者が続出している場合、すぐに実施可能で効果の得られやすい対策を優先しましょう。主治医との連携に使用する書類をあらかじめ作り込むことで、スムーズな不調者対応が可能となります。本記事でご紹介した「主治医への手紙」と「復職に関する主治医意見書」について、まずは自社の産業医と相談しながら雛形を作成してみてはいかがでしょうか。
【参考文献】
1) 厚生労働省:心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き
2) こころの耳:メンタルヘルス対策(心の健康確保対策)に関する施策の概要
3) 厚生労働省:職場における心の健康づくり
4) 厚生労働省:事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン
5) 厚生労働省:企業・医療機関連携マニュアル
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