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メンタル不調のサインとは?人事労務がすべき初期対応と予防策

従業員のメンタルヘルス不調は、休職や離職につながるだけでなく、組織全体の生産性にも影響を及ぼす重要な課題です。実際に、メンタルヘルス不調により1か月以上休業または退職した従業員がいる事業所は1割にのぼります。

不調の深刻化を防ぐためには、管理職や人事労務担当者が初期のサインにいち早く気づき、適切に対応することが求められます。この記事では、職場で観察できるメンタル不調のサインを「行動面」「精神面」「身体面」に分けて詳細に解説します。あわせて、不調者への対応方法や、従業員が安心して働ける職場をつくるための予防策についても紹介します。

メンタル不調のサインとは?職場で気づける変化を解説

メンタルヘルスの不調は、精神面だけでなく、身体や行動にも変化として現れます。これらのサインは、うつ病や適応障害といった精神疾患の前兆である可能性もあり、早期発見が重要です。職場で気づきやすいサインを3つの側面に分けて解説します。

行動面のサイン

勤怠状況や業務遂行能力など、客観的に観察しやすく、周囲が最も気づきやすい変化です。

  • 勤怠の乱れ
    遅刻、早退、欠勤(特に月曜日や連休明け)が増えるのは、代表的なサインです。以前は勤怠が安定していた従業員に変化が見られる場合は特に注意が必要です。
  • 業務パフォーマンスの低下
    報告・連絡・相談が滞る、単純なミスや判断ミスが増える、仕事の効率が著しく落ちるといった変化が見られます。集中力が続かず、業務遂行に時間がかかるようになります。
  • コミュニケーションの変化
    周囲との会話を避け、孤立するようになる傾向があります。一方で、些細なことでイライラし、同僚と対立しやすくなるケースも見られます。
  • 外見の変化
    服装が乱れたり、髪が手入れされていなかったりと、身だしなみに気を使わなくなります。また、表情が乏しくなったり、声に張りがなくなったりすることもサインの一つです。

精神面のサイン

本人の言動や態度からうかがえる内面的な変化です。行動面の変化と合わせて観察することが大切です。

  • 気分の落ち込み・意欲の低下
    「何もやる気が起きない」「仕事が楽しくない」といった発言が増え、何事にも関心を示さなくなります。以前は楽しんでいた趣味に対しても興味を失うことがあります。
  • 思考力・集中力の低下
    物事に集中できず、考えがまとまらなくなります。「頭が働かない」と感じ、重要な決断を避けるようになります。
  • 不安や焦り、イライラ
    常にそわそわして落ち着きがなかったり、過度に将来を悲観したりします。ささいなことで怒りっぽくなるのも、ストレスが限界に近いサインです。

身体面のサイン

本人が訴える体調の変化や、周囲から見てもわかる症状です。原因不明の体調不良が続く場合は注意が必要です。

  • 睡眠トラブル
    「夜中に何度も目が覚める」「寝つきが悪い」といった不眠の訴えや、逆に休日に寝すぎるなどの過眠が見られます。
  • 原因不明の体調不良
    頭痛、めまい、吐き気、腹痛、動悸など、検査をしても異常が見つからない身体症状が現れることがあります。
  • 食生活の乱れ
    食欲が極端になくなったり、逆に過食になったりします。急激な体重の増減もサインの一つです。
  • 慢性的な疲労感
    十分な休息をとっても「疲れがとれない」「いつも身体がだるい」といった状態が続きます。

不調のサインに気づいた際の企業の対応

部下や同僚の不調のサインに気づいたら、深刻化を防ぐために迅速かつ慎重な初期対応が重要です。

個別面談で話を聞く

まず、他の従業員のいない静かな環境で、1対1で話を聞く機会を設けることが第一歩です。目的は相手を評価したり、問題を解決したりすることではなく、本人の話に真摯に耳を傾け、気持ちを受け止めることです。
意見を押し付けたり、安易に「頑張れ」と励ましたりすることは避けましょう。心配しているという姿勢を伝え、本人が安心して話せる雰囲気を作ることが求められます。

専門家への相談を促す

人事労務担当者だけで問題を抱え込まず、産業医や社外の相談窓口(EAP)など、専門家のサポートにつなげることが重要です。産業医面談は、従業員の健康状態を専門的な視点から評価し、就業上の措置について助言を得るための重要な機会です。
相談を促す際は、相談内容のプライバシーは厳守されることを伝え、本人が安心して専門家につながれるよう配慮します。

職場環境の調整を検討する

本人の状態やストレスの原因に応じて、一時的な業務負荷の軽減、残業の制限、配置転換など、ストレス要因を減らすための環境調整を検討します。これは、労働安全衛生法で定められた事業者の「安全配慮義務」にも関わる重要な対応です。産業医の意見も参考にしながら、本人と話し合い、最適な措置を講じることが望まれます。

メンタル不調を未然に防ぐための職場づくり

個別の対応だけでなく、組織全体でメンタル不調を予防する取り組みが不可欠です。

  • ストレスチェックの有効活用
    定期的にストレスチェックを実施し、高ストレス者を早期に発見するだけでなく、集団分析結果を用いて職場ごとのストレス要因を特定し、環境改善に役立てることが重要です。結果を職場改善のアクションプランにつなげることで、実効性のある予防策となります。
  • 管理職へのラインケア研修
    部下の異変に早期に気づき、適切に対応する能力(ラインケア)は管理職にとって不可欠なスキルです。研修を通じて、メンタルヘルスに関する正しい知識、部下とのコミュニケーション方法、相談対応のスキルを習得させることが、職場全体の対応力向上につながります。
  • 相談しやすい風土の醸成
    メンタルヘルスに関する情報を社内でオープンに共有し、誰もが気軽に相談できる窓口があることを周知することで、従業員が不調を一人で抱え込まない環境をつくります。産業医面談や外部相談窓口の利用方法を定期的に案内することも有効です。

メンタル不調は特別なことではなく、誰にでも起こりうるものです。従業員一人ひとりの変化に関心を持ち、組織として支える体制を構築することが、企業の持続的な成長と発展につながります。

エムスリーキャリア健康経営コラム編集部

エムスリーキャリア健康経営コラム編集部

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