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従業員の再休職を防ぐために!適切な復職支援について詳しく解説

企業にとって、人材はまさに宝。労働者のメンタルヘルスを気にかけることは、経営面でも重要なポイントになりつつあります。ストレス社会と呼ばれる現代ではうつ病などで休職する労働者の数も増えており、再休職を防ぐためにも適切な復職支援の実施が欠かせません。そこで、今回は労働者が休職した場合、どのような流れで復職をサポートすれば良いのかについて詳しく解説していきます。

1.適切な復職支援の必要性とは

厚生労働省の調査によると、職業生活において強いストレスや不安を感じている労働者の割合は、平成29年の段階で58.3%となっています。
同時に、メンタルヘルスの問題で連続1カ月以上休職した、または退職した労働者がいる事業所は6.7%という結果になりました。
実に14~15事業所に1事業所の割合で、メンタルヘルスの問題により大切な人材を失った経験があるということです。
労働者が休職・退職してしまえば、企業は代替人員の確保や教育に多大なコストと時間をかけなければならないため、この結果は決して楽観視できません。
さらに、うつ病による傷病休暇から復職した労働者のうち、約半数近くが復職後5年以内に傷病休暇を再取得しているという調査結果も出ています。
【参考資料】平成 30 年「労働安全衛生調査(実態調査)」の概況

一度はうつ病から回復して復職したものの、仕事や環境にうまく適応できず再び休職してしまったということです。
これらの結果から、職場における労働者のメンタルヘルスがいかに重大な問題となっているかがわかるでしょう。
このような状況を受け、厚生労働省も「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」を公表して各企業へ積極的なサポートを呼びかけています。
職場環境の改善とともに適切な復職支援を行っていく必要性は、今後も増していくと考えられるでしょう。

2.復職支援の流れ

仕事に悩む男性
復職支援の必要性がわかったところで、次は適切な復職支援を行うためのポイントを押さえることが大切です。休職者に対してどのような流れで復職支援を行えば良いのか、具体的に見ていきましょう。
 

2-1.病気休職の開始・休職中のケア

労働者が主治医による診断書を提出して休職を開始したら、まずは療養に専念できるように支援を行うことが必要です。
メンタルヘルスの問題では不眠や食欲減退、気分の落ち込みなどの症状が出ていることが多いため、休職期間に入ったらしばらくはリラックスした生活を送れるように配慮しましょう。
会社からの連絡に辛さを感じやすい時期なのであまり頻繁には連絡せず、1~2カ月に1回を目安として、休職者の状態に応じて連絡をするのが基本です。
休職期間の後半になったら、起床・就寝時間や日中の過ごし方を生活記録表に記入するなど、復職に向けたリハビリを少しずつ開始します。
たとえば、パソコンを使う事務職なら1日のうち数時間パソコンの前に座るなど、無理のない範囲で簡単なことから挑戦してもらいましょう。
 

2-2.主治医による職場復帰可能かどうかの判断

休職期間ののち、休職者が自ら「復職したい」という意思を示したとしても、すぐに受け入れてはいけません。
復職が可能かどうかを判断するのは本人でも企業でもなく、休職を指示した主治医です。まったく症状が回復していないにもかかわらず、主治医が「復職可能」との判断を下すことはありません。復職を受け入れるかどうかは、主治医の判断を待ってから決めるようにしましょう。
ただし、主治医による診断はあくまでも日常生活における状態を判断材料としている場合が多く、必ずしも職場での業務遂行能力が回復しているとは限りません。このため、企業側は主治医による診断だけではなく、産業医など専門家の意見も参考にしながら慎重に対応することが必要です。
 

2-3.職場復帰の可否の判断・職場復帰支援プランの作成

主治医や産業医の意見を参考に復職を受け入れたら、復職の流れについて具体的に検討を始めることになります。
まずは、「労働者が勤務に十分な意欲を示しているか」「通勤時間帯に一人で安全に通勤できるか」「決まった勤務日・時間に継続して就労が可能か」など、問題なく働けるかどうかを判断する項目を定めます。項目ごとに評価を行い、復職が可能かどうかを検討しましょう。
その後、復職する日や、就業にあたって管理監督者が求められる配慮などについて、具体的な復職支援プランを作成していきます。
 

2-4.職場復帰の最終的な決定

具体的な復職支援プランが固まったら、最後のステップとして事業者による復職の最終的な決定を行います。
うつ病などの疾患がある場合、再発の有無などについて休職者の状態を最終確認しましょう。
産業医などの専門家が、判断材料として「職場復帰に関する意見書」を作成することもあります。復職させることを最終的に決めたら、事業者は休職者にその旨を伝え、就業上どのような配慮を行うかといった点についても説明しておきましょう。就業上の配慮があれば、休職者はより安心して復職しやすくなります。
 

3.復職支援の際の注意点について

休職者の復職支援を行う場合、いくつか注意しておきたいポイントがあります。
まず、うつ病などメンタルヘルスの問題による休職や復職は、労働者のプライバシーに大きくかかわります。
労働者の健康情報などは特に取り扱いに配慮が必要となるため、情報漏えいの予防や取り扱いルールの策定など、プライバシー保護を十分に心がけるようにしましょう。これに関連し、主治医と連携して休職者の情報を提供してもらうときは、必ず先に本人の同意を得ることも必要です。
同意を得ないまま第三者が個人情報をやり取りしたとなれば、たとえ自社の従業員に関することでも問題になる可能性があります。
また、休職者の体調が万全ではないのに早急な判断で復職させると、再休職のリスクも大きくなるため注意しなければなりません。
社内に「試し出勤制度」などを導入し、休職者の状態を確認しつつ無理なく復職させると良いでしょう。復職直後に休職前と同じ量の業務を任せるのは負担が大きいので、軽作業などから段階的に元に戻していくという配慮も必要です。
 

4.復職トレーニングの流れ

駅の階段を登る男性
急に元通りの業務に復職させると、再休職してしまう恐れもあります。このような事態を防ぐには、無理なく復職できるようサポートする「復職トレーニング」の導入も欠かせません。次は、復職トレーニングの内容や、実施するときの流れについて紹介します。
 

4-1.通勤練習

復職トレーニングの最初のステップは、「通勤練習」です。具体的なトレーニング方法としては、まず会社の始業時間に間に合うように起床して家を出発し、目的の駅まで向かうことから始めます。少しずつ移動距離を伸ばし、会社の前までスムーズに行けるようにしましょう。
会社まで通勤しても、最初のうちは職場まで行ったり業務を行ったりする必要はありません。そのまま近くの図書館などに行き、会社の終業時間まで自己学習を行います。自己学習の内容は何でも構いませんが、業務に関連するものや自己啓発系のものがおすすめです。
このようにトレーニングすることで、毎日業務を遂行できるほど休職者の体力・集中力が回復しているのか、通勤そのものに耐えうるのかどうかなどを確認できます。
 

4-2.社内軽作業

通勤練習が問題なく済んだら、次は社内で軽作業など負担の少ない業務を行うステップへ進みましょう。まず、朝出勤してから半日ほどを目安に社内で自己学習や簡単な作業などを行います。簡単な作業とはいっても、お客さまや取引先の電話対応は責任が大きく心理的プレッシャーもかかりやすいため、避けたほうが無難です。
午後になったら図書館で自己学習を行い、定時になったら退社するという過ごし方を1~2週間ほど続けましょう。
次は、社内で軽作業を行う時間を15時頃までに延ばし、これも1~2週間ほど続けます。ただし、会社と労働者本人の合意があれば、この過程を飛ばして次のステップへ進んでも構いません。
最後に、社内で退社時間まで終日軽作業、または自己学習を行う日々を1~2週間続けます。この段階で問題がなければ、「復職可能」と判断を下しても問題ないでしょう。
 

4-3.徐々に通常勤務に移行

復職可能の判断を下したら、いよいよ通常勤務に移行します。復職後、3カ月以内は残業や出張など疲れやすいことはさせず、定時勤務をしながら少しずつ業務負荷を増やしていきましょう。3カ月間問題なく勤務できたら、1カ月あたり20時間までの残業であれば付与可能と見なします。
なお、残業のない職域の場合、復職トレーニングはここで終了です。それ以外の職域では、そこから2カ月経過したら残業を1カ月あたり40時間まで付与可能とし、さらに2カ月後には残業などの制限を解除します。ただし、くれぐれも病み上がりであることを忘れず、過度な負担をかけないよう注意しなければなりません。
これらの過程において、月に2日以上休むようであれば、会社には直接言えないものの無理をしている状態だと判断できます。労働者が何も言わないからといってトレーニングを継続するのではなく、改めて処遇を検討するようにしましょう。
 

まとめ

労働者が不安を感じずスムーズに復職するためにも、企業が主導する復職支援は必要不可欠なものです。
ただし、復職支援は適切な方法で行わなければ再休職のリスクがさらに大きくなるため、労働者に寄り添った対応を心がけなければなりません。
適切な復職支援を行うためには専門家のアドバイスが欠かせないため、復職支援に悩んでいる場合は産業医に相談してみると良いでしょう。

エムスリーキャリア健康経営コラム編集部

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