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産業医が復職を認めないケースとは?事業者が対応すべきことも解説

休職している従業員の病状が治癒または快方に向かっていても、産業医は復職を認めないことがあります。

休職者の復職はまだ早いとして産業医が復職を見送った場合、事業者は適切な措置を講じ従業員が職場復帰できるよう努めることが大切です。

本記事では、産業医が復職を認めないケースや、事業者が取るべき対応について解説します。

産業医が復職を認めないケース

産業医が復職を認めないケースには、主に以下5つの状況が挙げられます。

・業務遂行に必要な注意力・集中力・体力が不足している
・就業意欲を示していない
・生活リズムが整っていない
・安全な通勤の確保ができない
・職場環境の改善が進んでいない

それぞれのケースについて詳しく解説します。

【参考】厚生労働省「心の健康問題により休業した労働者の 職場復帰支援の手引き」

業務遂行に必要な注意力・集中力・体力が不足している

業務遂行に必要な注意力や集中力、体力が不十分である場合、産業医が復職はまだ早いと判断することがあります。

休職中の従業員の病状が快方に向かい、主治医が復職可能と判断していても、注意力や集中力・体力が低下した状態で復職すると、業務上のミスや事故が起こりやすくなるからです。業務遂行能力が備わっているかどうかは、以下のような点が基準となります。

・法定労働時間(1日8時間・週40時間)の就労に耐えられる体力が備わっているか
・安全確認が必要な運転業務や建設現場での業務などの場合は、集中力・注意力を保って安全に業務を継続できるか
・肉体労働の業務の場合、力仕事をこなせるまで体力が回復しているか

休職中の従業員が復職を希望しても、事業者は産業医から定期的に意見聴取をして、復職可否を慎重に決める必要があります。

【関連記事】「安全配慮義務違反に該当する基準とは?企業が取り組むべき対策も解説

就業意欲を示していない

休職の原因となった症状が回復していても、仕事に対する意欲が見られない場合、産業医が復職を認めないことがあります。就業意欲が低いまま復職を許可してしまうと、従業員にとって精神的な負担となり、ストレスから健康を損ねるリスクがあるからです。

また、仕事に対するモチベーションが低いと、業務の遂行や職場への適応に影響をおよぼす可能性があるため、産業医は慎重に復職可否を判断します。

生活リズムが整っていない

休職中の従業員の生活リズムが乱れている場合、産業医は復職を見送ることがあります。

昼夜逆転した生活や不規則な睡眠習慣などが続いていると、決められた時間までに通勤して業務を遂行できない可能性があるためです。また、生活リズムが整っていない状態で復職させると、すぐに体調を崩すリスクもあります。

産業医は必要に応じて当該従業員に生活指導を行い、生活リズムが整ってから復職しても問題ないかを判断します。

安全な通勤の確保ができない

安全な通勤が確保できるようになるまで、産業医は復職を認めないことが多い傾向にあります。これは、通勤中の事故や体調悪化のリスクを防ぐためです。

当該従業員に以下のような様子が見られる場合、産業医は安全な通勤が困難と判断し復職を見送る可能性があります。

・体力的に長時間の通勤に耐えられない
・めまいや意識障害のリスクがある
・電車の人混みに強い不安を感じている

とくに、休職の原因がうつ病などのメンタルヘルス不調である場合、電車の人混みが極度の疲労となり心身への負担になるリスクがあります。そのため、通勤の不安が解消されるまで、産業医は復職を認めないでしょう。

職場環境の改善が進んでいない

休職の原因が職場環境であった場合、職場環境の改善が進んでいなければ、産業医が復職を認めることは難しいでしょう。休職の要因が改善されていなければ、病気の再発が懸念されるからです。

たとえば、長時間労働によるメンタルヘルス不調で休職した場合、労働時間の管理強化や働き方の見直しなどの対策が必要です。

休職者が安心して復職できるよう、産業医は事業者に職場環境改善の助言や指導をすることがあります。

産業医が復職を認めない場合でも最終決定者は事業者にある

産業医が復職を認めない場合でも、復職可否を最終的に決めるのは事業者です。産業医の復職に関する意見や判断は、法的な強制力をもちません

産業医には、労働者の健康管理などについて事業者に必要な勧告ができる権利があります。しかし、産業医の勧告は、専門家による医学的見地からの参考意見という位置付けです。よって、産業医が復職を認めなかったとしても、絶対的なものではありません。

ただし、産業医の判断を軽んじて復職を認めると、当該従業員の健康状態が悪化するリスクがあります。

事業者は産業医の意見を参考にしつつ、主治医の診断や休職者の健康状態、職場環境なども考慮して復職可否を決める必要があります。

産業医が復職を認めない場合に対応すべきこと

産業医が復職を認めない場合、休職中の従業員が職場復帰できるよう、事業者は以下のような対応を取る必要があります。

・産業医とよく話し合う
・主治医と産業医の両方から意見を聴く
・就業措置を検討する
・通勤訓練を行う
・職場環境を改善する

それぞれの内容について解説します。

【参考】厚生労働省「心の健康問題により休業した労働者の 職場復帰支援の手引き」

産業医とよく話し合う

産業医が復職を認めない場合は、産業医と協議を重ねることが重要です。復職を認めない理由を把握することにより、職場復帰に向けて必要な対策が講じられるからです。

産業医が指摘する懸念点に対する改善策や、段階的な復職計画を産業医に提案し、復職を認めてもらえるように働きかけましょう

主治医と産業医の両方から意見を聴く

休職者の復職を産業医が認めない場合、事業者は産業医の意見だけでなく休職者の主治医の意見も聴き、総合的に判断したうえで復職可否を決めることが大切です。主治医と産業医では、それぞれ異なる視点で復職可否を判断しているからです。

主治医は、病気の回復具合や「日常生活を問題なく送れるか」などに重きを置き、医学的観点から復職可否を判断します。そのため、復職可能と認めても、問題なく業務を遂行できるまで回復しているとは限りません。

一方、産業医は「健康を維持して安全に業務を遂行できるまで回復しているか」に重きを置いて、復職可否を判断します

主治医と産業医の両意見を参考に、復職させても問題ないかを慎重に判断しましょう。

【関連記事】〈医師解説〉産業医とは?役割・業務内容・臨床医との違い

就業措置を検討する

業務に必要な集中力や注意力が不十分で、休職者の復職を産業医が認めない場合は、就業措置を検討しましょう。

業務負荷を軽減して段階的に休職前の業務に戻れるように配慮すれば、産業医が復職を認める可能性があります。具体的には、以下のような就業措置を検討するとよいでしょう。

・業務量の調整
・業務内容の変更
・配置転換
・出勤時間の変更
・労働時間の短縮
・時間外労働や深夜業の制限、禁止

就業措置を検討する際は、休職者の意見も考慮しましょう。

通勤訓練を行う

安全な通勤確保の懸念により産業医が復職を認めない場合は、通勤訓練を検討するとよいでしょう。通勤訓練とは、自宅から職場までの通勤経路で実際に職場の近くまで移動し、職場付近で一定の時間を過ごして帰宅する訓練です。

休職前の出勤時間、通勤経路で出勤をシミュレーションすることで、通勤に必要な体力や通勤での心理的な負担などを確認できます。通勤訓練により体力が回復して生活リズムが整えば、産業医は復職を認めるでしょう。

【関連記事】​​リハビリ出勤(試し出勤)制度とは?期間の目安や導入時の注意点を解説

職場環境を改善する

産業医が復職を認めない理由が職場環境の懸念であれば、職場環境の改善を進めましょう。産業医が指摘する問題点を真摯に受け止め、必要な改善策を講じることで復職判断の見直しにつながる可能性があります。

職場環境の改善例としては、以下などが挙げられます。

・ハラスメント対策を実施
・休憩スペースの充実
・デスクや設備などの見直しによる作業スペースの快適化
・相談窓口の設置など、従業員が相談しやすい体制の整備

従業員の心身の負担になりにくい環境を整え、復職させても問題ないだろうと産業医に判断してもらえるようにすることが大切です。

【関連記事】
職場におけるハラスメントとは? 定義、具体例、法的義務を要確認!
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産業医が復職を認めない理由を知り適切な対応をしよう

休職中の従業員の病状が快方に向かっていても、業務遂行に必要な体力が不足していたり、生活リズムが整っていなかったりする場合、産業医は復職を見送ることがあります。

事業者は産業医と協議を重ね、当該従業員に対して産業医が懸念していることを理解し、適切な措置を講じることが大切です。就業措置や通勤訓練、職場環境の改善などを実施し、休職中の従業員が円滑に復職できるように努めましょう。

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