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産業医の復職面談の目的、従業員が職場復帰できる基準とは?

休職している従業員の職場復帰を進める場合、問題なく復帰ができるのか悩む人事担当者も多いのではないでしょうか。復職可能か判断するにあたり、復職面談を実施して復職できるかどうかの見極めをすることが重要です。本記事では、復職面談で確認したいポイントを中心に解説していきます。

産業医による復職面談の目的とは?

復職面談とは、心身の不調で休職していた従業員が、職場復帰をする前に行う面談のことです。次に、復職面談の目的について解説していきます。

従業員が復職可能かを判断する

復職面談では、休職中の従業員が職場で業務ができるのかどうかを判断するのが目的です。
休職の原因は鬱や適応障害に代表される精神的な問題から労災や事故による怪我、親の介護など多岐にわたりますが、復職面談を通じて、現在の状況から職場復帰できるか否かを判断していきます。
復職面談の参加者は会社の方針によっても異なりますが、休職者本人、人事労務担当者や産業医、そして直属の上司も参加するのが一般的です。休職者の職場復帰が可能か否かを判断する場合、立場によって確認するポイントが異なります。

まず、産業医は休職者が就業できる健康状態なのか、休職の原因となった症状や集権状況は改善しているのかなど、「業務に問題がない体調、もしくは環境かどうか」の観点から、復職可能か否かを判断します。
一方、企業の人事労務担当者は、休職者が決められた時間に出社し、待遇に見合った労務提供が可能かどうかを判断します。

再休職の防止

復職面談は、復職した従業員が再度休職しないための対策を話し合う場でもあります。会社で決めた休職期間が2~3ヶ月など短い場合は、期間内に復職ができなかったり、復職できてもすぐに再休職してしまったりするケースも珍しくありません。

一度復職したにもかかわらず、再度休職することになってしまうと休職した従業員の精神面に大きなダメージを与える可能性があります。会社に再び迷惑をかけてしまうことに対する後ろめたさから、最悪の場合は退職を選択する人も出るでしょう。

そのため、復職するまでに相応の時間を設定することが大切です。場合によっては、復職に向けたリハビリテーションを行う専門家のプログラムが必要でしょう。

また、休職中や復帰後の面談を通じて、休職者自身が不調になる仕組みや原因に気付くことが大切です。そのうえで、セルフケアができるようになることを目的に、休職となる原因の再発防止策を検討していきましょう。ある程度時間をかけてでも、再発させないように面談で解決していくことが大切です。

関連記事:従業員の再休職を防ぐために!適切な復職支援について詳しく解説

復職面談を行うタイミング

引用:厚生労働省 中央労働災害防止協会「改訂 心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」

「改訂 心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」では、職場復帰支援の流れを上記のように示しています。主治医からの復職診断書があり、休職者から復職の申し出があったタイミングで、復職面談を設定します。復職面談を実施するタイミングは、この第2ステップにあたります。

復職判定の基準とは? 復職面談で確認したいこと

 

復職面談では、実際に休職者が復職できるのか判断する基準があります。この項目について確認しておくことは、再休職を防ぐためにも非常に重要です。以下は、復職判定の基準です。

  • 労働意欲
  • 体力
  • 通勤能力
  • 生活リズム
  • 職場への適応能力、業務遂行能力 など

次に、具体的に確認したい点について解説していきます。

労働意欲:休職者が勤務を継続できるのか

復職の申し出は、復帰する意欲の表れでもあります。働く意欲があるかどうかの見極めは非常に難しいですが、復職にあたって重要なことです。
しかし、とくにメンタルヘルス不調で休職した場合、企業側としても慎重にならざるを得ません。復職面談時には完全に回復したつもりでも、状況次第では再度休職してしまうケースも多いためです。
面談では、まず休職者の話をよく聞くことが大切です。もちろん、必要以上のプレッシャーをかけてしまうのは得策ではありません。
本当に働く意欲があるのか、働く意欲を継続できるのかをしっかりと見極め、判断していく必要があります。

体力:顔色や表情、清潔感

体力が通常勤務をしていた頃の状態に戻っていることも、復職に必要な条件の一つです。
体力の著しい衰えは、集中力を欠くことにもつながります。
結果的に不利益が生じる可能性が高いと判断できる場合は、復職を延期することも視野に入れておく必要があります。体力が回復しているかどうかは、まずは主治医の診断書や意見書を参考にしていきましょう。
そのうえで、面談時の様子もしっかりと確認しておくことが大切です。顔色や表情は、十分な判断材料となり得ます。明らかな体調不良がみられる場合には、復帰を延期する必要があります。また、服装や髪形もチェックしておきましょう。
とくに適応障害に代表されるメンタル系の疾患は、身だしなみに気を配らなくなるケースも多くあります。清潔感があるかどうかは、そこまで気を回せる体力があるかどうかの判断基準にもなります。

通勤能力:必要に応じて通勤訓練も

以前のように同じ時刻に電車に乗るだけでストレスを感じたり、気分が悪くなったりする人も少なくありません。基本的な通勤能力があるかどうかを確認することは、非常に重要です。

復職前に面談をする場合、復職した場合をシミュレーションさせることも大切です。ある程度の期間、同じ時間に起床し、同じルートで会社まで通勤するような通勤訓練を行うことで、休職者本人も現在の自分の状況をより正確に判断できるでしょう。

また、その際にはシミュレーションの結果を記録して、提出させることも重要です。会社としては判断材料になり、休職者としてはアピール材料になります。

生活リズム:規則正しく生活を送れるか

規則正しい生活を送れているか、就業時間に合った生活ができているかをチェックすることも重要です。休職期間中であっても、規則正しい生活を送れているのかを把握するためには、生活記録表の提出などを依頼しましょう。面談時には、起床や就寝時間はもちろん、日中の過ごし方などを可能な限り確認していきます。休職直後の生活記録ではなく、直近の生活において、仕事に支障がない睡眠時間かどうか、日中は外出ができているかなどを確認することで、復帰した場合に合わせた生活が送れているかどうか判断しやすくなります。

職場への適応能力、業務遂行能力:在籍社員との関係性にも配慮を

復職しても再度休職してしまうなど、休職と復職を繰り返してしまうケースも少なくありません。職場環境に適応できずに休職したとしても、環境が変わっていない場合も当然あります。
休職者本人にそもそもの休職原因を考えさせ、本当に職場に復帰して適応できるのか否かを、慎重に判断する必要があります。休職に関しては、本人を思いやることはもちろん大切です。しかし、それと同じくらい在籍社員に気を配ることも重要です。
極端な環境変化は、在籍社員の反感を買ってしまうケースもあります。十分に注意したうえで、環境を変えずとも復帰できるのかどうかを判断していきましょう。

復職の可否を決定するポイント

復職の可否を決定するポイントを押さえておかないと、適切な判断のもと従業員を復職させるか、それとも休職期間を延長するのか決められません。判断を間違えると従業員にとっても会社にとっても大きなダメージになるため、しっかりと基準を押さえておきましょう。

 

主治医の治療方針に従っているか

まずは、主治医の治療方針に反していないかチェックしましょう。主治医は休職中の職員の様子から治療計画を立て、回復の手助けをしてくれる存在です。もし主治医の治療方針に従わず慌てて復職をした場合、無理がたたって再度休職、最悪の場合退職する可能性も否定できません。

あらかじめ主治医からも従業員の様子や復職についての方針を聞きましょう。

プライベートで問題が発生していないか

プライベートな理由で休職していた場合、問題が解決したか確認しておきましょう。家族の離別や環境の変化が原因で、心身に不調をきたすケースは珍しくありません。企業側は基本的に従業員のプライベートの問題に首を突っ込む必要はないですが、企業の安全配慮義務の観点からメンタルヘルスに関するケアを行うのが望ましいです。

休職の原因となった問題が解決していない場合、再び従業員が休職する可能性が高くなります。従業員が話せる範囲で聞き取りを行い、復職が可能か判断しましょう。

復職を焦っていないか

従業員が復職を希望するのは、単に焦っているからではないか、よく見極めましょう。責任感の強い人ほど、会社を休むことに対して罪悪感を抱きがちです。また、自分が本来こなすはずだった業務を他の従業員が行うことで、自身の居場所が失われるのではないかと不安感を抱く人もいるでしょう。

その場合は、上司や産業医から焦って復職する必要がないことを伝えましょう。また、その上で職場に戻って来るのを待っていると、従業員が安心できる言葉もかけてください。

復職面談時の注意事項

復職面談を実施するにあたり、注意したいポイントについて解説します。

従業員に対する配慮の把握

復職後まもなく、復職前と同じような業務時間・対応を求めるのは休職者に負担がかかることが懸念されます。「改訂 心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」にもある通り、事業者側には段階的にステップアップできる復職支援プランの作成、試し出勤制度や時短業務の検討など、休職者への配慮が求められます。

具体的には、以下の項目について話し合います。

  • 労働時間
  • 部署異動
  • 業務内容の見直し

復職したばかりの従業員が無理をして再度休職するのは避けるべき事態です。産業医の意見や主治医の診断書をもとに、休職者が段階的に職場へ復帰できる手助けをしましょう。

就業規則

休職者が復職可能になった場合、就業規則に則って復職支援を進めていくため、一度目を通しておくことをおすすめします。また、復職面談を通じて、職場復帰を延期したほうがいいと判断した場合、休職期間がどのくらい残っているかを確認しておきましょう。休職期間が残っている場合は、期間満了まで休職できますが、残っていない場合は退職や解雇などの対応をとる必要があります。

関連記事:【人事担当者必見】休職に必要な手続きと対策とは?うつ病時の手当から復職対応まで

通院状況

復職する従業員の通院状況についても把握しておきましょう。職場へ復帰できる健康状態になっても、主治医から通院を指示されるケースがあります。その場合は、職場と協力して通院しやすい環境を整えましょう。

復職したのだからもう病院へ行かなくてもよいと考える人も一定数いますが、無理をした結果、症状がぶり返してしまうケースもあります。主治医から指示があった場合は必ずそれに従うように従業員に言い聞かせてください。

必要に応じてリワークプログラムを検討

リワークプログラムとは、主に精神疾患を原因とする休職者を対象とした訓練のことです。プログラムに応じてあらかじめ決められた時間に施設へ通い、仕事に近い内容の軽作業を行ったり、うつ病などを再発しないための心理療法を行ったりします。

基本的には、主治医の指示に疑問がある場合に使用する訓練です。主治医とは異なった視点から意見を聞けるため、復職の役に立つこともあるでしょう。

復職面談における診断書の取り扱い

復職面談をするにあたって、主治医から診断書を出されるケースもあるでしょう。診断書が復職面談でどのような存在となるかについて解説します。

会社によって診断書の扱いは異なる

診断書は会社によって扱いが異なります。提出が求められるかどうかは、就業規則など会社ごとに決められているため、都度確認が必要です。なお厚生労働省は、復職可能と書かれた診断書の提出を推奨しています。

業務遂行能力の判断材料ではない

診断書は業務遂行能力の判断材料ではありません。診断書は日常生活を送れるか否かに焦点が当てられており、業務に支障が出ないかは別の話です。また、従業員の早く現場に復帰したい希望が含まれているケースもあります。

そのため、診断書の内容のみで復職の判断をするのは危険です。もし診断書の内容が不十分な場合、産業医が情報提供依頼書などを用いて復職に必要な情報を収集する必要があります。

復職面談にあたっての主治医と産業医の役割

復職面談にあたって、主治医と産業医の存在は重要です。それぞれどのような役割をになっているのか解説します。

主治医と産業医の違い

主治医と産業医の役割は異なります。

主治医は、患者と接して診察を行い治療計画を立てるのが仕事です。活動している場所は自身が所属しているクリニックや病院が中心で、治療している患者の職場に足を運ぶ機会はほぼありません。

一方で産業医は、専門的な立場から従業員が職場で問題が起きていないか判断し、必要に応じて面談を行うのが仕事です。主に企業内で活動し、病人に対してもそうでない人に対しても幅広く対応しています。

主治医の診断書と産業医の意見書の違い

主治医の診断書と産業医の意見書も、それぞれ異なった役割を有しています。

主治医の診断書は日常生活における症状の回復程度など、純粋に医学的な内容が記載された文書です。復職の可能性についても記載されている場合があり、従業員本人に内容を確認してもらわずに発行されます。

一方で産業医の意見書は、労働者の症状や業務遂行能力の回復程度、実際の職場環境を踏まえて復職の可否について記載された文書です。一般的には復職面談など、復職初期に必要とされるケースが多く、記載内容は産業医が従業員と一緒に検討し、従業員本人が確認した上で発行されます。

復職を最終的に判断するのは事業者

復職面談などを通じて、主治医や産業医が「復職可能」と判断しても、休職者の復職可否を最終的に判断するのは事業者になります。主治医や産業医の判断はあくまでも判断材料ですので、事業者はそれらを踏まえて慎重に方針を決めることが求められます。

主治医と産業医の意見が違ったら?

上述の通り、主治医と産業医の意見はあくまでも復職を判断する材料にすぎません。しかし、ときには主治医と産業医の意見が異なる場合があります。この場合、休職者の健康と安全を最優先にした対応を取るべきです。詳細に関しては、関連記事「産業医は診断できない? 産業医の意見書と主治医の診断書、役割別の対応を解説」をご確認ください。

鬱や適応障害の従業員の復職はよりシビアな判断が必要

鬱や適応障害の従業員の復職を検討する際は、慎重な判断が求められます。精神的な病気は、何がきっかけでぶり返すか分かりません。そのため、必ず主治医が職場復帰を認めたこと、または復職しても問題ない旨が書かれた診断書が発行されたことを確認してください。復職を焦っている場合、休職者が診断書を偽装するケースも考えられるため、必要に応じて主治医からの説明を直接聞きましょう。

また、可能であれば休職者の家族からも復職について意見を求めましょう。家族が復職は難しいのではないかと考えている場合は、要注意です。そのときは、家族からも復職を焦らず休むように伝えてもらいましょう。

復職面談を適切に実施し、従業員が働きやすい職場づくりを

復職面談は、従業員が復職できるか否かはもちろん、企業の問題が改善できているかを確認するためにも必要です。ただし、適切な復職面談のプロセスを踏めていない場合は、従業員の復職やその関連問題に対して間違った判断を下してしまう可能性が高まります。とくに鬱や適応障害から復職する従業員には、再発の可能性も考慮して慎重に判断を下さなければなりません。

そのためには、形式的な復職面談ではなく、従業員に寄り添う復職面談を実施する必要があります。従業員に対する聞き取り、主治医の診断書など、得られた情報から適切な復職のルートを示せるようにしましょう。

エムスリーキャリア健康経営コラム編集部

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