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ストレスチェックの対象者は?義務・範囲・判断基準を解説

ストレスチェックの実施は、従業員のメンタルヘルス不調を未然に防ぎ、快適な職場環境を維持するために不可欠です。しかし、「誰が対象者になるのか」「パート社員や役員も含まれるのか」といった疑問を抱える人事労務担当者の方も少なくありません。この記事では、ストレスチェックの対象者について、労働安全衛生法に基づいた基本的な定義から、判断に迷いやすいケース、さらには対象とならないケースまで、網羅的に解説いたします。この記事をお読みいただくことで、貴社がストレスチェックを実施する上で、対象者を正確に把握し、法的な義務を果たすための明確な知識が得られます。

ストレスチェックの対象者とは?労働安全衛生法に基づく定義

ストレスチェック制度は、労働安全衛生法第66条の10に基づき、常時使用する労働者を対象に実施が義務付けられています。ここでいう「常時使用する労働者」とは、正社員だけでなく、期間の定めのない労働契約を結んでいる方や、1年以上の雇用が見込まれる方も含まれます。つまり、雇用形態にかかわらず、継続的に労働に従事している方が対象となるのです。

「常時使用する労働者」の具体的な範囲

「常時使用する労働者」の具体的な範囲は以下の通りです。

  • 無期雇用労働者: 正社員、契約社員、パートタイマーなどで、期間の定めのない労働契約を結んでいる方。
  • 有期雇用労働者: 契約期間が1年以上である方、または契約更新により1年以上使用されることが見込まれる方。ただし、1週間の所定労働時間が通常の労働者の4分の3以上である必要があります。

これは厚生労働省が定める「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル」でも明記されている内容です。

法律で定められた実施義務の有無

従業員数が50人以上の事業場には、ストレスチェックの実施が義務付けられています。50人未満の事業場については努力義務ですが、従業員の健康管理の観点から実施が推奨されています。実施しない場合の罰則規定も存在するため、対象となる事業場は必ず実施しなければなりません。

ストレスチェックの対象者か判断に迷うケース

ストレスチェックの対象者選定において、人事労務担当者様が特に判断に迷うケースは少なくありません。ここでは、具体的な事例を挙げながら、対象者となるかどうかの判断基準を解説いたします。

パートタイマー・アルバイトの対象範囲

パートタイマーやアルバイトも、前述の「常時使用する労働者」に該当すればストレスチェックの対象となります。具体的には、以下のいずれかに該当する場合です。

  • 期間の定めのない労働契約を結んでいる場合。
  • 契約期間が1年以上である、または契約更新により1年以上使用されることが見込まれる場合で、かつ1週間の所定労働時間が通常の労働者の4分の3以上である場合。

短時間勤務のパートタイマーであっても、上記の条件を満たせば対象となりますので、注意が必要です。

【参考】
厚生労働省「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル」

派遣社員のストレスチェックは誰が実施する?

派遣社員の場合、ストレスチェックの実施義務は派遣元事業主にあります。これは、労働安全衛生法が「労働者を使用する事業者」に義務を課しているため、雇用関係にある派遣元が責任を負うためです。派遣先企業は、派遣社員の健康管理に協力する義務はありますが、直接ストレスチェックを実施する義務はありません。

役員・管理職はストレスチェックの対象か?

役員のうち、労働基準法上の「労働者」に該当しない方(代表取締役など)は、ストレスチェックの対象外となります。しかし、取締役や執行役員であっても、実態として労働者としての側面が強い場合(他の従業員と同様に業務命令を受け、賃金を得ている場合など)は対象となる可能性があります。管理職は、一般的に「労働者」に該当するため、ストレスチェックの対象となります。

休職者・育児休業中の社員の取り扱い

休職中の社員や育児休業中の社員は、原則としてストレスチェックの対象外となります。これは、ストレスチェック制度が「就労中の労働者」の健康状態を把握することを目的としているためです。ただし、休職期間が短く、復職が間近に控えている場合など、個別の状況によっては対象とすることが望ましい場合もありますので、産業医や保健師とご相談のうえ判断されるのが賢明です。

入社直後の新入社員は対象か?

入社直後の新入社員も、雇用契約を締結し、継続的に労働に従事している場合はストレスチェックの対象となります。ただし、入社して間もない時期のストレスチェックは、まだ職場環境に慣れていないこともあり、高ストレス状態と判断されやすい傾向があります。実施時期については、入社から一定期間が経過した後に実施するなどの配慮もご検討いただけます。

【関連記事】
新卒社員がメンタルヘルス不調に陥る原因とは?不調の判断基準や対策を紹介

ストレスチェックの対象者とならないケースとその理由

ここでは、ストレスチェックの対象者とならない具体的なケースと、その理由について解説いたします。

契約期間が短い・勤務日数が少ない労働者

  • 契約期間が1年未満の有期雇用労働者: 契約期間が短く、継続的な雇用が見込まれない労働者は対象外となります。
  • 1週間の所定労働時間が通常の労働者の4分の3未満の労働者: 短時間勤務のパートタイマーやアルバイトで、所定労働時間が通常の労働者の4分の3を下回る場合は対象外となります。これは、厚生労働省のガイドラインで定められている基準です。

これらの労働者は、「常時使用する労働者」の定義に当てはまらないため、対象外となるのです。

雇用形態 契約期間

 

週の労働時間 ストレスチェックの対象可否
正社員 期間の定めなし フルタイム(週40時間) 対象
契約社員・パート・アルバイト 1年以上 通常の労働者の4分の3以上 対象
契約社員・パート・アルバイト 1年以上

 

通常の労働者の4分の3未満 対象外
契約社員・パート・アルバイト 1年未満 通常の労働者の4分の3以上 対象外
契約社員・パート・アルバイト 1年未満 通常の労働者の4分の3未満 対象外

事業の特殊性による例外

ごく一部の特殊な事業形態では、ストレスチェックの実施が困難な場合や、対象者の定義が異なる場合があります。しかし、一般的な企業においては、基本的に上記の基準が適用されるとお考えください。不明な点がございましたら、労働基準監督署や専門機関にご確認いただくことが重要です。

ストレスチェック対象者リスト作成のポイントと注意点

ストレスチェックを適切に実施するためには、正確な対象者リストの作成が不可欠です。ここでは、リスト作成の際のポイントと注意点を解説いたします。

従業員情報の正確な把握

人事データベースなどを活用し、従業員の氏名、雇用形態、入社年月日、所定労働時間などの情報を正確に把握してください。特に、雇用形態や契約期間の変更があった場合は、随時情報を更新することが重要です。

産業医・保健師との連携

対象者の選定に迷うケースや、個別の事情がある場合は、必ず産業医や保健師にご相談ください。専門家からの助言を得ることで、適切な判断を下し、トラブルを未然に防ぐことができます。

個人情報保護への配慮

対象者リストは、個人情報を含むため、厳重な管理が必要です。アクセス制限を設ける、パスワードを設定するなどの対策を講じ、情報漏洩のリスクを最小限に抑えなければなりません。

【参考】
・厚生労働省「ストレスチェック制度導入ガイド」
・厚生労働省「厚生労働省版ストレスチェック実施プログラム」

【関連記事】
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まとめ:ストレスチェック対象者を正しく理解し、適切な実施を

ストレスチェックの対象者を正しく理解することは、企業の法的義務を果たす上で非常に重要です。本記事では、労働安全衛生法に基づく基本的な定義から、パートタイマー、役員、休職者、入社直後の社員など、判断に迷いやすいケースの取り扱い、さらには対象とならないケースまで詳しく解説いたしました。

ストレスチェックは、単なる義務ではなく、従業員のメンタルヘルスを守り、企業の生産性向上にも繋がる重要な取り組みです。この記事で得た知識を活かし、貴社のストレスチェック制度を適切に運用し、従業員が安心して働ける職場環境づくりに貢献できることを願っております。

ストレスチェックの実施に関してさらに詳しい情報が必要な場合や、個別の事例についてご相談されたい場合は、産業医や専門機関へのご相談をご検討いただくことをお勧めいたします。

エムスリーキャリア健康経営コラム編集部

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