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企業の人事労務担当者の皆様、従業員の健康管理は重要な経営課題の一つです。中でも、40歳から74歳までの被保険者・被扶養者を対象とした「特定健康診査(特定健診)」は、生活習慣病予防の第一歩として、企業と従業員双方にとって重要な役割を担っています。
しかし、「特定健診とは具体的に何をするのか」「健康診断と何が違うのか」「企業としてどのように対応すべきか」といった疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
本稿では、人事労務担当者の皆様が特定健診について理解し、効果的な健康管理を推進できるよう、制度の概要から実施方法、受診率向上に向けた取り組みまでを網羅的に解説します。
特定健診は、メタボリックシンドローム該当者やその予備群を早期に発見し、生活習慣病の発症や重症化を予防することを目的とした健康診査です。高齢者の医療の確保に関する法律に基づき、医療保険者(健康保険組合、全国健康保険協会、共済組合、国民健康保険など)に実施が義務付けられています。
特定健診の対象となるのは、40歳以上74歳未満の医療保険の被保険者および被扶養者です。年齢は、当該年度の4月1日時点の年齢で判断されます。
特定健診は、加入している医療保険者が主体となり実施します。
特定健診の費用は、原則として無料です。ただし、医療保険者によっては、一部自己負担が発生する場合や、追加の検査項目を希望する場合は別途費用がかかることがあります。
特定健診は法律で義務付けられていますが、企業が直接的な実施義務を負うわけではありません。しかし、従業員の健康管理は企業の重要な責務であり、特定健診の受診を推奨し、受診しやすい環境を整備することは、生産性向上やリスク管理の観点からも非常に重要です。
一般的に行われる企業の健康診断は、労働安全衛生法に基づき、従業員の健康状態を把握し、適切な措置を講じることを目的としています。一方、特定健診は、生活習慣病予防に特化した、より詳細な検査項目が含まれています。
項目 | 特定健診 | 健康診断(労働安全衛生法に基づく) |
---|---|---|
目的 | メタボリックシンドローム該当者・予備群の早期発見と生活習慣病予防 | 従業員の健康状態の把握と適切な措置 |
対象者 | 40歳~74歳の被保険者・被扶養者 | 企業の従業員 |
実施主体 | 医療保険者 | 事業者(企業) |
費用負担 | 原則無料(一部自己負担の場合あり) | 事業者負担 |
検査項目 | 身体計測、血圧測定、血液検査、尿検査、腹囲測定、問診など(詳細後述) | 身体計測、視力・聴力検査、胸部X線検査、血圧測定、尿検査、血液検査、心電図検査など(企業や年齢により異なる) |
結果に基づく措置 | 特定保健指導 | 就業上の措置、保健指導など |
企業によっては、法定の健康診断に特定健診の項目を加えて実施する場合もあります。
特定健診では、メタボリックシンドロームの診断に必要な基本的な検査項目に加え、生活習慣病のリスクを高める要因を把握するための詳細な項目が含まれています。
これらの検査項目によって、以下のような健康状態やリスク要因を把握することができます。
・メタボリックシンドロームのリスク: 腹囲、血圧、血糖、脂質の検査結果から、メタボリックシンドロームに該当するか、その予備群であるかがわかります。
・生活習慣病のリスク: 高血圧、糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病の発症リスクを評価できます。
・肝臓・腎臓の機能: 血液検査や尿検査により、肝臓や腎臓の機能の状態を確認できます。
・生活習慣の問題点: 問診を通じて、食生活、運動習慣、喫煙、飲酒といった生活習慣の問題点を把握し、改善のきっかけとすることができます。
特定健診の結果、生活習慣病のリスクが高いと判定された方には、医療保険者による「特定保健指導」が行われます。特定保健指導は、対象者が主体的に生活習慣を改善できるよう、管理栄養士や保健師などの専門家が個別の支援を行うものです。
特定健診の結果に基づき、以下の基準を満たした方が特定保健指導の対象となります。
または、
特定保健指導は、対象者のリスクレベルや生活状況に合わせて、以下の3つの段階で実施されます。
従業員が特定保健指導を受けることは、生活習慣病予防だけでなく、健康意識の向上にも繋がります。企業が特定保健指導への参加を推奨し、職場環境を整備することは、従業員の健康維持・増進に大きく貢献し、結果として企業の生産性向上にも繋がります。
企業が特定健診・特定保健指導を積極的に推進することは、従業員の健康を守るだけでなく、以下のようなメリットがあります。
【従業員の健康維持・増進】
生活習慣病の発症リスクを低減し、健康寿命の延伸に貢献します。
【生産性の向上】
従業員の活力向上、欠勤や休職の減少に繋がり、企業の生産性向上に貢献します。
【医療費の抑制】
生活習慣病の重症化予防により、医療費の抑制に繋がる可能性があります。
【企業イメージの向上】
従業員の健康を重視する企業として、社会的な評価が高まります。
【リスクマネジメント】
従業員の健康問題による労務リスクを低減できます。
従業員が特定健診を受診しやすい環境を整備することが重要です。
【受診スケジュールの調整】
業務に支障のない日時を設定する、受診のための特別休暇を付与するなどの配慮が必要です。
【情報提供の徹底】
特定健診の目的、重要性、受診方法などを従業員に周知徹底します。
【医療機関との連携】
地域の医療機関と連携し、スムーズな受診体制を構築します。
【費用負担の明確化】
受診費用が無料であることを改めて伝え、安心して受診できる環境を整えます。
【オンライン予約システムの導入】
受診予約の利便性を高めます。
【事業所内健診の実施】
一定規模以上の事業所であれば、事業所内で特定健診を実施することも有効です。
受診率向上に向けて、様々な施策を検討・実施しましょう。
・経営層からのメッセージ: 経営層が特定健診の重要性を発信し、受診を奨励する姿勢を示します。
・インセンティブの導入: 受診者に対して、健康ポイントの付与や福利厚生サービスの提供などのインセンティブを設けます。
・部署ごとの目標設定: 部署ごとに受診率の目標を設定し、達成度を評価・表彰します。
・受診勧奨の実施: 未受診者に対して、個別に受診を促す声かけや案内を行います。
・健康セミナー・イベントの開催: 生活習慣病予防に関するセミナーやイベントを開催し、従業員の健康意識を高めます。
・ポスター・社内報での啓発: 特定健診の重要性や受診方法を視覚的に訴求します。
・家族への情報提供: 被扶養者である家族にも特定健診の情報を提供し、受診を促します。
・受診後のフォローアップ: 受診結果の説明会や個別相談を実施し、必要に応じて特定保健指導への参加を促します。
特定保健指導の対象となった従業員が積極的に参加できるよう、企業としてサポート体制を整えましょう。
・参加しやすい時間帯の調整: 業務時間内での参加を認める、時間外の場合は振替休日を付与するなどの配慮が必要です。
・情報提供と理解促進: 特定保健指導の内容やメリットを従業員に丁寧に説明し、参加への不安を解消します。
・上司からの声かけ: 上司が部下の参加を促し、励ますことで、心理的なハードルを下げることができます。
・参加者の成功事例の共有: 特定保健指導を通じて生活習慣を改善した従業員の事例を共有し、他の従業員のモチベーションを高めます。
・プライバシーへの配慮: 特定保健指導の参加状況や内容は、本人の同意なしに他の従業員に公開しないなど、プライバシー保護に十分配慮します。
特定健診・特定保健指導の推進は、従業員の健康増進を図り、企業の生産性向上を目指す「健康経営」の重要な要素の一つです。特定健診の結果データを分析し、企業の健康課題を把握することで、より効果的な健康経営戦略を策定・実行することができます。
A1. 特定健診は、受診者本人に直接的な罰則はありません。しかし、生活習慣病のリスクを見過ごし、重症化させてしまう可能性があります。また、企業においては、従業員の健康管理を怠ったとして、安全配慮義務違反を問われる可能性も否定できません。
A2. 特定健診は、生活習慣病予防に特化した基本的な健康診査であり、費用は原則無料です。一方、人間ドックは、より広範囲な検査項目を含み、早期の病気発見を目的とした総合的な健康診断で、費用は自己負担となるのが一般的です。ただし、医療保険者によっては、人間ドック費用の一部補助制度を設けている場合があります。
A3. まずは、特定健診の目的や重要性を丁寧に説明し、受診することのメリットを理解してもらうことが大切です。例えば、「早期発見できれば、大きな病気になる前に治療できる可能性がある」「健康状態を把握することで、安心して生活できる」といった点を具体的に伝えましょう。また、受診の予約や付き添いなど、具体的なサポートを申し出ることも有効です。
A4. 特定健診の結果通知時期や通知方法は、医療機関や医療保険者によって異なります。一般的には、受診後1~2週間程度で郵送または医療機関での直接説明という形で通知されます。オンラインで結果を確認できる場合もあります。
A5. 特定健診の結果、再検査が必要となった場合の費用は、原則として保険診療となりますので、自己負担が発生します。治療が必要となった場合も同様です。
A6. 特に決まった服装はありませんが、脱ぎ着しやすい服装がおすすめです。血圧測定や腹囲測定の際に、ゆったりとした服装の方がスムーズに検査を受けられます。
A. 多くの医療機関で、夕食は軽めに済ませ、夜9時以降の食事は控えるよう指示されています。アルコールやカフェインの摂取も控えた方が良いでしょう。当日の朝食については、医療機関の指示に従ってください。
A. 特定健診と保険診療を同日に受けることは、原則として可能です。ただし、医療機関によっては対応していない場合や、事前に連絡が必要な場合があります。また、初診料や再診料などの費用が発生する場合がありますので、事前に医療機関にご確認ください。
まとめ
特定健診は、従業員の健康を守り、企業の成長に繋がる重要な取り組みです。人事労務担当者の皆様は、本稿で得られた知識を活かし、従業員が安心して特定健診を受診できる環境を整備し、受診率向上に向けた効果的な施策を推進してください。従業員一人ひとりの健康が、企業の活力となり、持続的な成長の基盤となることを信じています。
今後も、特定健診に関する最新情報や、企業の健康管理に関する有益な情報を提供してまいりますので、ぜひご活用ください。
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