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労働安全衛生法が2025年改正!人事労務担当者が知るべき改正ポイントを解説

2025年4月1日、労働安全衛生法が改正されました。今回の改正は、作業場所における安全措置の対象範囲拡大や、請負人に対する安全衛生教育の義務化など、企業の人事労務担当者にとって、対応が必須となる重要な改正です。

改正内容を十分に理解せずにいると、企業が法令違反となるだけでなく、労働災害の発生につながる可能性もあります。

本稿では、2025年労働安全衛生法改正のポイントを、具体的な事例や対策を交えながら、人事労務担当者の方向けにわかりやすく解説します。

改正の背景や、企業の実務への影響、具体的な対応策まで網羅的に解説していますので、ぜひ最後までお読みください。

労働安全衛生法とは

労働安全衛生法とは、職場における労働者の安全と健康を確保し、快適な職場環境を形成することを目的として、1972年に制定された法律です。

事業者が守るべき最低限のルールを定めており、労働災害や健康被害の防止のために、さまざまな措置を事業者に義務付けています。

労働安全衛生法に違反した場合、罰則が科される可能性もあるため、企業の人事労務担当者は常に最新の情報をキャッチアップし、法改正に適切に対応することが求められます。

労働安全衛生法2025年改正のポイント

2025年4月1日に施行された労働安全衛生法改正のポイントは、以下の2点です。

  • 保護措置の対象範囲拡大
  • 請負人に対する周知義務の新設

本項では、改正の背景と合わせて、改正内容の詳細を解説します。

1.保護措置の対象範囲拡大

2025年4月以降、事業者が行う退避や立ち入り禁止等の措置について、その対象が拡大されます。

改正の背景

今回の改正は、2021年5月の最高裁判決が大きく影響しています。

最高裁は、労働安全衛生法第22条の「健康障害を防止するための措置」について、労働者のみならず、同じ作業場所で働くすべての人を対象と解釈しました。

この判決を受け、労働安全衛生法の解釈が明確化され、2025年4月の改正に至りました。

改正の内容

2025年4月以降、事業者は、自社の労働者だけでなく、同じ作業場所で働く以下のような労働者以外の人に対しても、退避や立入禁止等の措置を講じる必要があります。

  • 他社の労働者
  • 一人親方
  • 下請業者
  • 資材搬入業者
  • 警備員

具体的には、以下のような措置が対象となります。

  • 事故が発生した作業場所からの退避
  • 危険箇所への立ち入り禁止
  • 火気の使用禁止場所での喫煙、火気使用の禁止
  • 悪天候時の作業禁止

これらの措置は、自社の労働者だけでなく、上記のような人に対しても適切に実施しなければなりません。

請負人に対する周知義務の新設

2025年4月以降、事業者は、請負人(一人親方、下請業者など)に作業の一部を請け負わせる場合、特定の事項について周知を行うことが義務付けられます。

改正の背景

この改正も、前述の最高裁判決が大きく影響しています。

裁判では、労働安全衛生法第22条の解釈が明確化されただけでなく、元請業者が、自社の労働者だけでなく、下請業者や一人親方などの労働者以外の人の安全にも配慮すべきであるという判決も示されました。

この判決を受け、請負人の安全確保のために、周知義務を新たに設けることとなりました。

改正の内容

事業者は、請負人に作業の一部を請け負わせる場合、以下の事項について周知を行う必要があります。

  • 立ち入り禁止とする必要があるような危険な場所で、例外的に作業を行わせるために、労働者に保護具等を使用させる必要がある場合、請負人に対しても、保護具等を使用する必要がある旨

また、以下のケースにおいても、請負人への周知が推奨されています。

  • 保護具等を使用させることが義務付けられている作業を請け負わせる場合
  • 特定の作業手順や作業方法によって作業を行うことが義務付けられている作業を請け負わせる場合

周知の方法は、以下のいずれかの方法で行う必要があります。

  • 常時作業場所の見やすい場所への掲示・備え付け
  • 書面の交付(請負契約時の書面交付も含む)
  • 磁気テープ、磁気ディスク等への記録と、各作業場所での内容確認
  • 口頭での伝達(内容が簡潔な場合のみ)

労働安全衛生法2025年改正を受けて企業が対応すべきこと

2025年の労働安全衛生法改正を受けて、企業は以下の2点について対応する必要があります。

  • 作業場所の安全確保に関する措置の見直し
  • 請負人に対する安全衛生教育の実施

作業場所の安全確保に関する措置の見直し

2025年4月以降、作業場所における安全確保に関する措置の対象者が拡大されます。

企業は、今までの措置で労働者以外の人の安全も確保できるか、措置の内容を見直す必要があります。

措置の内容を具体的に見直す際は、以下の点に注意しましょう。

  • 退避経路は適切に確保されているか
  • 安全通路が設けられているか
  • 必要な保護具が準備されているか
  • 危険箇所への立ち入り禁止措置は適切か

また、措置の内容を、労働者だけでなく、他社の労働者、一人親方、下請業者などにも周知することも重要です。

請負人に対する安全衛生教育の実施

2025年4月以降、請負人に作業を請け負わせる場合、安全衛生教育を実施する必要があります。

教育の内容は、作業内容に応じた保護具の使用方法や、安全な作業手順などです。

教育を実施する際は、以下の点に注意しましょう。

  • 教育の内容は、作業場所の状況や作業内容に合わせて適切か
  • 教育の方法は、口頭だけでなく、資料や動画なども活用しているか
  • 教育の実施記録を作成し、保管しているか

労働安全衛生法2025年改正で実務担当者は何が変わる?具体的な対応を解説

2025年4月の労働安全衛生法改正で、企業の実務担当者は具体的に何が変わるのでしょうか。

本項では、改正によって新たに必要となる業務や、業務フローの変化について解説します。

保護措置対象者への安全配慮の徹底

2025年4月以降、事業者は、労働者以外の作業者に対しても、労働者と同水準の安全配慮を行う必要があります。

具体的にどのような対応が必要になるのか、ケース別に見ていきましょう。

ケース1:建設現場

元請業者は、自社の労働者だけでなく、下請業者の労働者や一人親方など、建設現場で働くすべての人に対し、安全な作業手順の指示や、必要な保護具の使用徹底など、労働者と同水準の安全配慮を行う必要があります。

また、危険区域への立ち入り制限や、事故発生時の避難誘導なども、労働者以外の人も含めて適切に行わなければなりません。

【対応のポイント】

  • 多重下請構造になっている場合でも、各事業者が責任を持って安全配慮を行う
  • 安全衛生協議会などを活用し、意思疎通を図り、共通認識を持って安全管理に取り組む

ケース2:工場

工場内で、自社の従業員だけでなく、派遣社員や請負業者の従業員が同じ場所で作業を行う場合、事業者はこれらの従業員に対しても、安全教育の実施や、作業手順の遵守、保護具の使用徹底など、労働者と同水準の安全配慮を行う必要があります。

【対応のポイント】

  • 派遣契約や請負契約の内容を見直し、安全配慮に関する責任分担を明確にする
  • 関係請負人との間で、安全衛生に関する協定を締結する

ケース3:清掃業務

清掃業者が、事業所の従業員と清掃スタッフが同じ場所で作業を行う場合、事業者は清掃スタッフに対しても、安全教育の実施や、危険物の周知、保護具の使用徹底など、労働者と同水準の安全配慮を行う必要があります。

【対応のポイント】

  • 清掃業務の手順や安全上の注意点などを書面で作成し、清掃業者に提示する
  • 定期的な連絡会などを実施し、情報共有や意見交換を行う

請負人が複数いる場合の対応

2025年4月以降、請負人が複数いる場合、元請業者は、各請負人に対して、作業に必要な安全衛生教育を実施する必要があります。

具体的な対応としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 各請負人が実施する安全衛生教育の内容を確認し、必要に応じて補足教育を実施する
  • 安全衛生教育の実施状況を記録し、保管する
  • 請負人からの安全衛生に関する相談に対応する窓口を設置する

【対応のポイント】

  • 請負契約の内容を見直し、安全衛生教育に関する事項を明確にする
  • 安全衛生教育の実施に関する費用負担について、請負人と協議する

周知事項の徹底

2025年4月以降、事業者は、請負人に対して以下の事項を周知する必要があります。

  • 立ち入り禁止とする必要があるような危険な場所で、例外的に作業を行わせるために、労働者に保護具等を使用させる義務がある場合、請負人に対しても、保護具等を使用する必要がある旨

この周知は、以下のいずれかの方法で行う必要があります。

  • 常時作業場所の見やすい場所への掲示・備え付け
  • 書面の交付(請負契約時の書面交付も含む)
  • 磁気テープ、磁気ディスク等への記録と、各作業場所での内容確認
  • 口頭での伝達(内容が簡潔な場合のみ)

【対応のポイント】

  • 周知事項をわかりやすくまとめ、請負人に確実に伝わる方法を選択する
  • 周知を行った日時、内容、方法などを記録し、保管する

労働安全衛生法2025年改正に関するQ&A

ここでは、労働安全衛生法2025年改正に関して、よくある質問とその回答を紹介します。

Q1. なぜ、労働者以外の人も保護措置の対象となるのですか?

A. 2021年の最高裁判決において、労働安全衛生法第22条の「健康障害を防止するための措置」について、労働者のみならず、同じ作業場所で働くすべての人を対象と解釈されたためです。

Q2. 保護措置の対象となる「労働者以外の人」とは、具体的に誰を指しますか?

A. 他社の労働者、一人親方、下請業者、資材搬入業者、警備員などが該当します。

Q3. 請負人に対する安全衛生教育は、どのような内容を実施すればよいですか?

A. 作業内容に応じた保護具の使用方法や、安全な作業手順など、作業に必要な安全衛生に関する教育を実施する必要があります。

Q4. 請負人がさらに別の業者に作業を委託している場合、安全衛生教育は誰が行うのですか?

A. 元請業者は、直接契約している請負人に対して安全衛生教育を実施する義務があります。

再委託先の業者への教育は、元請業者から教育を委託された請負人が行うことになります。

Q5. 周知事項は、口頭で伝えても問題ないですか?

A. 内容が簡潔な場合は口頭での伝達も認められますが、できる限り、書面や掲示などの方法で周知することが望ましいです。

まとめ

2025年4月に施行された労働安全衛生法の改正は、すべての事業者が対応しなければならない重要な改正です。

改正内容を十分に理解し、必要な措置を適切に実施することで、労働災害の防止と安全な職場環境の実現につながります。

エムスリーキャリア健康経営コラム編集部

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