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ポピュレーションアプローチとは、事業場や部署などの集団を対象に健康リスクの低減を図る取り組みです。近年、従業員の健康保持・増進のための効果的な方法として注目されています。
本記事では、ポピュレーションアプローチの概要や施策の具体例、ハイリスクアプローチとの違いを解説します。
ポピュレーションアプローチとは、企業や事業場、部署などの「集団」を対象に健康の保持増進・疾病予防の働きかけを行い、組織全体の健康リスクを下げる取り組みです。
2020年に「事業場における労働者の健康保持増進のための指針」が改正されたことも相まって、労働者の健康保持増進につながる施策として注目されています。
ポピュレーションアプローチは、以下の3段階の健康保持・増進対策のうち、一次予防に該当します。
一次予防 | 疾病やメンタルヘルス不調の未然防止 |
二次予防 | 疾病やメンタルヘルス不調の早期発見、早期治療 |
三次予防 | 疾病やメンタルヘルス不調の治療、重症化防止、職場復帰支援 |
従業員の健康の保持・増進を図るためには、一次予防を適切に行い、二次予防、三次予防も含めた包括的な対策を講じる必要があります。
【参考】厚生労働省「職場における心とからだの健康づくりのための手引き~事業場における労働者の健康保持増進のための指針~」
ポピュレーションアプローチとハイリスクアプローチの違いは、以下のとおりです。
ポピュレーションアプローチ | 健康リスクの有無に関係なく「集団」を対象に健康リスクの低減を図る取り組み |
ハイリスクアプローチ | 健康リスクが高い「個人」を対象に健康リスクの改善を図る取り組み |
「集団」に向けて健康リスクの低減を図るポピュレーションアプローチに対し、ハイリスクアプローチは健康リスクが高い「個人」を対象に健康リスクの改善を行います。
また、ポピュレーションアプローチは一次予防ですが、ハイリスクアプローチは二次予防です。ハイリスクアプローチでは、健康診断の有所見者や生活習慣に問題がある人にアプローチすることで、症状が重症化する前に改善を図ります。
ポピュレーションアプローチは、ハイリスクアプローチと組み合わせて行うことが大切です。両方を組み合わせることで、より高い健康保持・増進効果が期待できます。
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ポピュレーションアプローチの施策の具体例としては、以下などが挙げられます。
それぞれの施策について解説します。
【参考】経済産業省「企業の「健康経営」ガイドブック (改訂第1版)」
メンタルヘルスケアは、従業員の心の健康管理が重視されている現代において欠かせないポピュレーションアプローチの取り組みです。ポピュレーションアプローチとして従業員にメンタルヘルスケアを行えば、メンタルヘルス不調を予防できます。
メンタルヘルスケアの具体的な施策には、以下などがあります。
相談窓口には、産業医などの産業保健スタッフを置きましょう。相談窓口に職場の健康問題に詳しい産業保健スタッフを置くことで、従業員が医学的なアドバイスを受けられるようになり、メンタルヘルス不調の予防、早期改善が期待できます。
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集団を対象に運動・身体活動を奨励することは、プレゼンティーズムの解消・抑制につながります。プレゼンティーズムとは、出勤しているものの、体調不良により本来のパフォーマンスを発揮できていない状況のことです。
ポピュレーションアプローチにより運動・身体活動を促せば、従業員の健康状態を良好に保ちやすくなります。そのため、プレゼンティーズムに陥る従業員を防げます。
運動・身体活動を促進するための施策には、以下などが挙げられます。
【参考】
厚生労働省「健康日本21(身体活動・運動)」
経済産業省「企業の「健康経営」ガイドブック (改訂第1版)」
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ポピュレーションアプローチの一環として食生活の改善支援をすれば、従業員が正しい食行動を取れるようになり生活習慣病を予防できます。施策を実施する際は、栄養のバランスを考えて食事を選べるよう、以下のような環境を整備することが大切です。
なかでも健康的な食事情報の発信は、小規模なオフィスでも取り組みやすく、従業員が無理なく自分の食生活について考えるよい機会になります。継続的に行えば、従業員の健康リテラシー向上が期待できます。
【関連記事】企業における食環境改善の実例とメリット【連載vol.3】
禁煙・分煙の啓発も、ポピュレーションアプローチの一つです。
そもそも喫煙に関しては健康増進法により、事業者には受動喫煙防止対策の実施が義務付けられています。そのため、禁煙・受動喫煙防止の措置を講じなければなりません。
禁煙・分煙の啓発方法としては、以下などがあります。
自社の状況に応じて適切な施策を行いましょう。
【参考】厚生労働省「健康増進法の一部を改正する法律案 概要」
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長時間労働を削減する働き方制度の導入も、ポピュレーションアプローチの施策です。ポピュレーションアプローチの一環として長時間労働を削減する働き方を採用すれば、従業員が終業後に十分な休息を取れるようになり、心身の健康保持・増進が図れます。
長時間労働の削減のために、以下のような施策を検討するとよいでしょう。
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ポピュレーションアプローチを行うメリットには、主に以下の3つが挙げられます。
それぞれのメリットについて解説します。
ポピュレーションアプローチは、健康リスクの有無を問わずすべての従業員を対象に行うため、病気の発症者を減らしやすい点がメリットです。健康リスクが高まる前の早い段階で実施すれば、症状が悪化する前に対処が可能です。
ポピュレーションアプローチを行えば、企業全体で健康の保持・増進や疾病予防に取り組む風土が醸成されるため、従業員の健康意識の向上につながります。
ポピュレーションアプローチは、階段を積極的に使う、食事の栄養バランスに配慮するなど、比較的簡単な施策から始められます。実行へのハードルが低く、従業員にとって取り組みやすいため、健康意識が低い従業員の健康意識向上も見込めるでしょう。
企業全体の生産性向上が見込めることも、ポピュレーションアプローチのメリットです。
ポピュレーションアプローチによって健康リスクが低減すれば、従業員が心身ともに健康に働けるようになります。従業員の心身が健康な状態だと、パフォーマンスやモチベーションが高まりやすいため、より高い成果の創出や業務効率化が期待できます。
ポピュレーションアプローチには、メリットだけでなく以下のようなデメリットもあります。
それぞれのデメリットについても把握しておきましょう。
ポピュレーションアプローチは、集団ごとに働きかけるため、個人に対して健康の保持・増進や健康リスクの改善を促すことが難しい点がデメリットです。個人へのアプローチを図りたい場合は、ハイリスクアプローチが適しています。
ポピュレーションアプローチは、集団を対象とした大規模な取り組みであるため、実施するにはまとまったコストがかかります。新たな設備の導入や施策を実施する場合は、初期費用に加え時間や人材などリソースを確保する必要があります。
そのため、ポピュレーションアプローチを行う際は、実現可能であるかをよく考え、費用対効果が見込める施策を実施しましょう。
ポピュレーションアプローチの取り組み手順は、以下の5ステップです。
それぞれの手順について解説します。
【参考】厚生労働省「ポピュレーションアプローチの強化・ 推進に向けて都道府県・市区町村が取り組むべき方向性」
効果的なポピュレーションアプローチを行うためには、まずは自社の現状を把握し、健康課題を洗い出す必要があります。
健康課題の把握には、以下のようなデータを参考にすると定量的な分析がしやすくなります。
あらゆる視点から自社の健康課題を抽出しましょう。
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次に、健康課題の改善に向けた目標を設定します。具体的な数値目標を設定すると、施策の実施前後の状況を把握しやすくなり、効果の検証・評価が効率的にできます。
目標を設定したら、解決すべき健康課題の優先順位をつけます。以下の点を考慮して健康課題を評価し、優先順位を決めましょう。
施策を実施する順番に加えて評価方法も決めておくと、取り組みがスムーズに進められます。
健康課題を改善するための施策を決めて実行します。施策を実行する際は、施策が組織全体の取り組みであることを従業員に周知しましょう。
施策の実施後は、効果を分析・評価し必要に応じて実施内容を改善することが大切です。以下のような点を振り返り、実施した施策の評価をしましょう。
目標を達成できなかったり、実施計画通りに進められなかったりした場合は見直しが必要です。改善策を検討する際は、取り組みの参加率や効果を上げるために、従業員の声を反映することを心がけましょう。
改善策を決めたら、次回のポピュレーションアプローチに取り入れ、再び計画・実施・評価・改善を行います。このようにPDCAサイクルを回すことで、ポピュレーションアプローチの効果が高まり、従業員の健康リスクの低減につながります。
組織全体でポピュレーションアプローチを行えば、病気の発症者を減らしやすくなります。また、従業員の健康リスクが下がり健康に働けるようになることで、生産性向上が期待できる点もメリットです。
効果的なポピュレーションアプローチを行うためには、まずは自社の健康課題を把握することが大切です。自社の健康課題に合った施策を実行し、PDCAサイクルを回すことでポピュレーションアプローチの実効性が高まります。
ポピュレーションアプローチを行って、従業員の健康リスク低減を目指しましょう。
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