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2022年4月の女性活躍推進法の改正により、「プラチナえるぼし」認定制度が創設されました。
今回の記事では、プラチナえるぼしの制度内容と認定取得によるメリットについて、社会保険労務士の西岡秀泰氏が解説します。職場の活性化と企業イメージのアップに向けて、認定取得を検討してみましょう。
プラチナえるぼしを解説する前に、女性活躍推進法について確認します。
女性活躍推進法の正式名称は「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」で、次の内容が定められています。
女性活躍推進法の目的は、女性がより活躍できる環境・社会の実現です。
女性の労働参加率は高まりましたが、厚生労働省の「令和2年度雇用均等基本調査」によると正社員に占める女性は27.2%、管理職(課長相当職)に占める女性は10.8%と低位に留まっています。この現状を改善するために、2015年9月(2016年4月全面施行)に10年間の時限立法として女性活躍推進法が制定されました。
女性活躍推進法は、企業に対し「一般事業主行動計画の策定」と「女性活躍に関する情報の公表」を義務付けています。当初は、従業員数301名以上の企業が対象でしたが、法改正により2022年4月1日から対象は従業員数101名以上300人以下の企業に拡大されます。
また、企業の取組を推進するために2016年4月にスタートした「えるぼし」認定(女性活躍推進への取組の実施状況が優良な企業に対する認定制度)に加え、2020年6月には「プラチナえるぼし」が創設されました。
参考:厚生労働省「一般事業主行動計画の改正内容(令和2年4月1日施行)」
プラチナえるぼしとは、えるぼし認定を取得した企業の中でも特に優れた取組を行う企業を認定するものです。2022年1月末現在、プラチナえるぼしの認定企業は23社、えるぼしは1,641社です。
具体的な認定基準やえるぼしとの違い、認定取得の流れについて説明します。
プラチナえるぼしの認定を受けるには、えるぼし認定を取得している企業が、次の4つの要件を満たす必要があります。
参考:厚生労働省「女性活躍推進法に基づくえるぼし認定・プラチナえるぼし認定のご案内」
【関連記事】女性活躍推進法、2022年4月からの改正内容とは?企業が注意したいポイントを解説
選任を要する男女雇用機会均等推進者と職業家庭両立推進者は、男女雇用均等法や育児・介護休業法に基づき、企業が任意で選任する各推進担当者です。推進者を選任して労働局長あてに選任届を提出することで、要件を満たします。
参考:厚生労働省「男女雇用機会均等推進者とは」
参考:厚生労働省「職業家庭両立推進者を選任しましょう」
すべての基準を満たす必要のある「5つの評価項目」は次の通りです。
また、8項目以上の公表が必要な「女性活躍推進法に基づく情報公表項目」は次の通りです。
(情報公表項目)
①女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供 | ②職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備 |
・採用した労働者に占める女性労働者の割合
・男女別の採用における競争倍率
・労働者に占める女性労働者の割合
・係長級にある者に占める女性労働者の割合
・管理職に占める女性労働者の割合
・役員に占める女性の割合
・男女別の職種または雇用形態の転換実績
・男女別の再雇用または中途採用の実績
|
・男女の平均継続勤務年数の差異
・10事業年度前及びその前後の事業年度に採用された労働者の男女別の継続雇用割合
・男女別の育児休業取得率
・労働者の1月当たりの平均残業時間
・有給休暇取得率
|
出典:厚生労働省「女性活躍推進法に基づくえるぼし認定・プラチナえるぼし認定のご案内」
プラチナえるぼしは、えるぼし認定企業の中でも優れた取組を行う企業を認定するものであるため、認定基準はえるぼしよりも厳しくなります。認定基準の違いは次の通りです。
なお、えるぼしは、女性活躍推進への取組の実施状況に応じて、1~3段階目に区分されます。
(プラチナえるぼしとえるぼしの認定基準)
えるぼし | プラチナ
えるぼし |
|||
一段階目 | 二段階目 | 三段階目 | ||
「5つの評価項目」の基準達成 | 1つ以上 | 3つ以上 | 全項目 | 全項目 |
「女性活躍推進法に基づく情報公表項目」の公表 | 企業規模に応じて0~2項目以上 | 8項目以上 | ||
「認定基準に関する実績」の毎年公表 | 必要 | |||
「男女雇用機会均等推進者」と「職業家庭両立推進者」の選任 | 不要 | 必要 |
参考:厚生労働省「女性活躍推進法に基づくえるぼし認定・プラチナえるぼし認定のご案内」
プラチナえるぼし認定を取得するまでの流れについて説明します。主な手順は次の通りです。
①一般事業主⾏動計画の策定・届出
(現状の把握・分析、計画の策定と社内通知、都道府県労働局への届出など)
②⼥性の活躍に関する情報公表
(「⼥性の活躍推進企業データベース」や⾃社ホームページなどへ公表)
③えるぼし認定申請
④プラチナえるぼし認定申請
プラチナえるぼしの認定申請は、えるぼし認定が前提です。また、えるぼし認定を受けるには、一般事業主⾏動計画の策定後に取組を行い、実施結果が認定基準を満たさなければなりません。
つまり、一般事業主⾏動計画の策定から始める場合、企業がプラチナえるぼし認定を取得するには、一定の期間が必要になります。長期的な計画を立てて、実績を積み上げなければなりません。
プラチナえるぼし認定後は、少なくとも年に1回、「⼥性の職業⽣活における活躍の推進に関する取組の実施の状況」を公表しなければなりません。具体的には次の通りです。
次のタイミングで、「⼥性の活躍推進企業データベース」に状況を公表します。
なお、プラチナえるぼし認定を受けると、「一般事業主⾏動計画の策定と届出」は不要になります。
プラチナえるぼしの認定基準と認定取得の流れを説明しましたが、認定取得によって企業にどのようなメリットがあるのでしょうか。主なメリットを5つ紹介します。
メリットの1つ目は、プラチナえるぼしの認定取得が企業イメージの向上につながることです。認定企業は厚生労働省の公式ホームページで公表され、「⼥性の活躍推進企業データベース」に自社の取組状況などが掲載されます。
また、自社商品や⾃社ホームページに「プラチナえるぼし認定マーク」を掲載できるため、積極的にPRして企業イメージを高めることが可能です。2022年1月末現在、プラチナえるぼしの認定企業は23社しかないため、訴求効果は高いでしょう。
メリットの2つ目は、採用活動で優位になることです。
ある人材会社が実施した女子学生の就職活動に関するアンケート調査(2021年3月)では、「企業研究で意識したこと、女子学生向け情報の閲覧度」の上位は次の通りでした。
アンケート調査より、就職先選びの基準として、女性の働きやすさや育児と仕事の両立などを重視する女性が多いと考えられます。プラチナえるぼしの認定企業であることで他社と差別化できるため、優秀な人材を集めやすくなります。
【参考】女子学生の就職活動に関するアンケート調査(2021年3月)キャリタス就活2021学生モニター調査
メリットの3つ目は、女性の活躍で組織が活性化することです。プラチナえるぼしの認定取得に至る取組により女性の職場環境は改善され、女性が能力を存分に発揮できるようになります。
また、効果のある女性活躍推進策を実施するには、男性社員を含めた組織改革や業務改善、意識改革などが伴うケースが多いため、組織の活性化が期待できます。
メリットの4つ目は、公共調達で有利になることです。えるぼしやプラチナえるぼしの認定企業は、次のような「公共調達における優遇措置(加点評価)」が受けられます。
引用:厚生労働省「女性活躍推進法に基づくえるぼし認定・プラチナえるぼし認定のご案内」
メリットの5つ目は、日本政策金融公庫による低金利融資が受けられることです。対象となるのは「働き方改革推進支援資金(企業活力強化貸付)」で主な内容は次の通りです。
プラチナえるぼしが認定取消になるのは、次の5つのケースに該当した場合です。(⼥性活躍推進法第15条)
※認定取得後「5つの評価項目」のうち、同じ項目について連続して基準達成できなかった場合
プラチナえるぼし認定取消後、または認定辞退後の3年間はプラチナえるぼし認定の再申請はできません。認定維持に向け、継続的な取組が必要です。
最後に、厚生労働省の女性活躍・両立支援総合サイトの事例集を参考に、プラチナえるぼし認定企業3社の取組事例を「取組のきっかけ」「取組内容」「成果」に分けて紹介します。
【企業プロフィール】
設立:1990年
所在地:東京都港区
事業内容:サービス業(銀行バックオフィス業務)
従業員数:1,923名(うち女性1,841名)
企業認定・表彰等:えるぼし(認定段階3)、プラチナえるぼし
※2021年度取材
三井住友トラスト・ビジネスサービス株式会社の取組事例
取組のきっかけ | ・女性が9割を占めるが管理職の大半が男性・グループからの出向者
・会社合併を機にプロパーの女性管理職を育成する取組をスタート |
取組内容 | ・プロパーの女性管理職育成のため、階層別の研修を充実
・スタッフ社員(主に有期雇用社員)から業務社員(正社員)への転換制度を導入 ・両立支援制度として19パターンの柔軟な短時間勤務制度を設ける ・育児休業からの復職者を対象に「復職予定者研修」を実施 など |
成果 | ・女性管理職(課長以上)の割合は62%(2021年9月末時点)
・係長職以上の22名(2021年9月末時点)は短時間勤務制度を利用し、職場内に多様な働き方のモデルケースが多くみられるようになった ・プラチナえるぼしの価値や意義を理解した学生などの応募が増えた など |
【企業プロフィール】
設立:1990年
所在地:和歌山県和歌山市
事業内容:窓装飾インテリア商品の製造・販売
従業員数:310人(うち女性256人)
企業認定・表彰等:くるみん認定、えるぼし(認定段階3)、プラチナえるぼし
※2020年度取材
株式会社インテリックスの取組事例
取組のきっかけ | ・女性社員は多かったが、妊娠や出産を機に退職する女性が多かった
・経験やスキルのある人が辞めるのは本人・会社にとって損失であるため、3・4年前から女性が働きやすい環境づくりに取り組み始めた |
取組内容 | ・出産や育児による休職中や復帰後の不安の解消を目的に相談窓口設置
・法律を上回る育児短時間勤務制度や育児目的休暇を導入 ・子育てや介護による欠員をワークシェアリングでフォロー ・育児休業の一部有給化 ・有期雇用スタッフの正社員への転換制度を導入 など |
成果 | ・出産を理由とする退職者が減った
・ワークシェアリングによって有休を取りやすくなり、男性の育休取得も増えた ・辞める人が減り採用や人材育成にかかるコストが削減された ・女性管理職は係長以上で41.8%、課長以上で30.8%。 ・ロールモデルとなる女性が多いため、若い女性のモチベーションアップにつながる など |
【企業プロフィール】
設立:1967年
所在地:愛知県名古屋市
事業内容:眼鏡卸売業(問屋的50%、メーカー的50%)
従業員数:正社員59人(うち女性32人)、パート社員52人(うち女性37人)
企業認定・表彰等:くるみん認定、プラチナくるみん認定、えるぼし(認定段階3)、プラチナえるぼし
※2020年度取材
名古屋眼鏡株式会社の取組事例
取組のきっかけ | ・2000年までは、女性社員は結婚と同時に辞める人が多く、出産後も働き続ける人はほとんどいなかった
・2006年に初めて産休・育休後も働きたいという女性が現れ、結婚・出産後も働き続けられる環境づくりに着手 ・具体的な目標としてくるみん認定を掲げて活動をスタート |
取組内容 | ・性別や年代の異なるメンバーを集めワークライフハーモニーチームを結成。くるみん認定を目標に実態調査、勉強会、制度の整備等を行った
・男性の育児休業推進(少なくとも1日は取得することを義務化) ・毎週水曜日の早帰りデーや在宅制度を導入 ・外部講師による妊娠・出産後の女性の健康確保について勉強会を開催 ・女性管理職登用小チーム制(チームリーダーを設ける)を導入して女性管理職の増加を図った など |
成果 | ・出産後も復職することが当たり前になり女性が辞めなくなった
・くるみんやえるぼし等の認定により、求職者や取引先から良い印象を持たれるようになった ・係長級職の女性労働者の割合は55.6%になった ・部署間の異動を短期化したことで業務の見直しと効率化が進み、生産性が向上した など |
プラチナえるぼしとは、えるぼし認定を取得した企業の中でも特に優れた取組を行う企業を認定するものです。
認定基準はえるぼしよりも高いですが、2022年1月末現在の認定企業は23社しかないため、希少価値が高く対外的なPR効果(取引先や求職者に対する企業イメージのアップなど)は高いでしょう。
また、プラチナえるぼしは、女性の活躍だけでなく全従業員のモチベーションアップや組織の活性化などの効果も期待できるため、認定取得を検討してみましょう。
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