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「働き方改革関連法が成立したことで、“産業医や産業保健が変わるらしい”が具体的にどのような変化があるのだろうか・・・」――働き方改革の社内旗振り役である人事や総務、労務担当者の中には、このような疑問を持つ人がいらっしゃるのではないでしょうか。
2018年6月に働き方改革関連法が成立したことを受け、2019年4月から“産業医・産業保健機能”に関する内容が整備・強化されることになりました。
この記事では「関連法改正の前後で産業保健の取り組みにどのような変更があるのか?」「企業として、労働者や産業医に対してどのような対策が必要なのか?」など、ご担当者が抱きやすい疑問や懸念を解消していきます。
“法案成立による社内影響が気になる方”や“産業医や産業保健に関する調整に携わる方”をはじめ、“働き方改革関連法における課題洗い出しや対策検討に励む方”にとってもぜひ理解してほしい内容です。
働き方改革関連法を一言で述べるのであれば、“一億総活躍社会の実現”です。労働人口が減少の一方である日本社会において、労働から遠ざかっていた人材の登用や確保をはじめ、生産性向上の必要性を訴えています。
本改革は、労働者の健康確保という面でも重要視されています。それは労働者の健康に配慮したメリハリのある仕事環境の構築につながると考えられているからです。
具体的には“時間外労働の上限規制”等による長時間労働の改善、“勤務時間インターバル制度の普及促進”等による休息時間の確保、“年次有給休暇の指定付与の義務付け”による休暇取得の向上などが挙げられます。
ここでは“健康確保”という側面から関連法を紹介しましたが、仕事への価値観やライフスタイルが多様化する中で、自身の働きたい形で社会へ貢献できる土台となるのが働き方関連法案です。
【参考記事】ウェルビーイングとは? 企業の経営、産業医選任との関わりを解説
ここからは“産業医・産業保健”において変更があった2点について紹介します。産業医と日頃から関わる方はもちろん、産業保健や関連問題に携わる方にも一緒に知ってほしい内容です。
1つ目は、“産業医・産業保健機能の強化”です。変更点は大きく2つあります。
【変更点】
1.事業者における労働者の健康確保対策の強化
2.産業医がより一層効果的な活動を行いやすい環境の整備
【参考】厚生労働省 【資料】働き方改革実行計画を踏まえた今後の産業医・産業保健機能の強化について(建議)
「1.事業者における労働者の健康確保対策の強化」では、産業医が労働者に対して適切な健康管理を実施するにあたり、事業者が労働者の労働状況や稼働時間等の必要な情報を提供することが求められます。現行のように必要に応じて産業医が事業者へ勧告するわけではなく、情報提供を受けた上で判断するのです。
また労働者が雇用における不当な扱いを心配することなく直接産業医に相談できる職場づくりをはじめ、その周知や措置等が必要となってきます。
これからは、継続的かつ計画的に行うという努力目標ではなく、しっかりと指針を定めて運用することが求められているのです。
「2.産業医がより一層効果的な活動を行いやすい環境の整備」では、産業医から受けた勧告内容を衛生委員会(※)へ報告しなければなりません。
それによって、問題点や改善対策を話し合っていく必要があるからです。これまでのように、勧告を尊重するだけというわけにはいかず、産業医の活動ならびに衛生委員会との関係性強化が求められます。
併せて産業医が業務を遂行するにあたり、現場からの情報収集や事業者への意見提供など、事業場の実情に応じた産業医に対する権限の明確化も必要です。
改正前までは事業者は産業医の勧告に対して受け身で問題ありませんでしたが、改正に伴い社内で労働者の情報を適切に取り扱い、産業医や衛生委員会へと提供・共有する必要が出てきました。
※衛生委員会:労働者の健康増進をはじめ、健康障害を防止する対策を審議し、事業者へ意見を述べることを目的とする。常時50人以上の労働者を使用する事業場ごとに設置しなくてはいけない。メンバーは産業医をはじめ、衛生管理者や事業場の労働者などで構成される。
2つ目は、“面接指導“です。面接指導では過労死等のリスクを抱えている労働者を見逃さないためにも、面接指導のあり方を従来から“拡充”“新規”とし変更・追加することで対策を講じています。ここでは、広島労働局が発行している資料を参照しながら、説明します。
【出典】広島労働局 改正労働基準法・改正労働安全衛生法の概要P13. 【参考】⻑時間労働者に対する医師による 時間労働者に対する医師による⾯接指導の流れ
本改定で注意をしてほしいのが“拡充”“新規”にて加わった5箇所です。“拡充”は面接指導の前半部分に適応され、“新規”は後半部分に追加されています。
これらは、“変更点1:産業医・産業保健機能の強化”が反映されたためです。以下に変更箇所をまとめます。
【変更箇所】
●拡充
・事業者が全ての労働者の労働時間の状況を把握
・事業者が産業医に残業時間80h/月超の労働者の情報を提供
・残業時間80h/月超の労働者が事業者に面接指導の申出
●新規
・事業者が産業医に措置内容を情報提供
・事業者が産業医の勧告内容を衛生委員会に報告
制度変更の初期だと過去の運用に引きずられやすいため、行政機関が作成した資料を活用する等しながら、“拡充”“新規”に気をつけて全体の流れを覚えるところからはじめましょう。
最後に改正を受けて、これから企業が取れる対策を簡単に3つ紹介します。
まずは自社の現状把握が重要です。産業医との関係性や連携度合いなどを一度整理し、新制度において満たしていない点を認識するところからはじめましょう。
自社の現行体制が、改正にあたり動きが鈍くなったり、阻害されることはありませんか。この機会に変更点と照らし合わせることで、状況によっては体制変更も含め検討されることをおすすめします。
改正に伴い、産業医の関わる比重や度合いがこれまでよりも大きくなります。
本格的に新制度で動きはじめる前に、産業医を交えて話し合う機会を設けるだけでも、制度変更や体制構築に共通認識を持って取り組むことが可能です。
どのケースが当てはまるかは、事業者によって異なってきます。
そのため自社に合う対策からはじめることをおすすめします。産業医からのアクションを待つのではなく、まず自分たちから行動するようにしてください。
【参考記事】産業医の仕事や役割とは?働き方改革で企業が取り組むべきこと
働き方改革関連法改正に伴い、“産業医・産業保健”において変化する箇所を中心に紹介しました。
今後は、事業者の主体的な行動、そして産業医をはじめとする関係者との密接な連携が強く求められます。
ぜひ、自社の動きを見直す中で最適な行動を取るための一歩を早めに踏み出すようにしましょう。
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