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健康相談は、従業員の健康状態を把握し、健康を保持するために必要な指導や就業上の措置を検討する機会です。
しかし、どのような場合に従業員に健康相談を受けてもらえばよいのか、よく分からない方も多いでしょう。
本記事では、健康相談を実施するケースやメリット、健康相談を受けてもらいやすくするために取り組むべきことを解説します。ぜひ職場環境を改善するうえでの参考にしてください。
従業員からの健康相談は、従業員が心身ともに健康に働けるように産業医が対応します。実施される目的は、主に次のとおりです。
健康相談にはさまざまな目的があるので、企業の状況を考慮して事前に実施目的・実施基準を決めておくとよいでしょう。
【関連記事】産業医面談を依頼・実施する基準とは?―今さら聞けない産業保健vol.2
事業者は、必要と判断した場合には従業員に健康相談を受けるように促す義務があります。しかし、従業員には健康相談を受ける義務はないので、無理に受けさせないよう注意が必要です。
ただし、従業員が拒否するからといって健康相談を実施しないと、法律違反に問われる可能性があります。企業には、従業員に対する安全配慮義務が課せられているためです。
事業者は従業員の生命・身体の安全を確保しながら仕事ができるように配慮しなくてはならないと、労働契約法第5条で定められています。業務に支障をきたすような健康上の問題がある場合、労災につながらないような対応が求められます。
【参考】
こころの耳「Q14:管理職が知っておくべき個人情報保護と安全配慮義務とは?」
e-Gov法令検索「労働契約法」
産業医への健康相談が必要になるのは、次の5つのケースです。
それぞれのケースにおいて、気をつけるべきポイントを解説します。
【関連記事】産業医面談は義務?利用基準7タイプと企業担当者が注意すべきポイント
健康相談が必要になるケースは、健康診断の結果で従業員に異常の所見が見られた場合です。健康診断は、事業者が従業員の心身の状況を把握し、健康保持のための指導や就業上の措置を検討するために実施します。
業務に支障が生じる恐れのある所見が見られた場合、労働安全衛生法および労働安全衛生規則にもとづいて3ヶ月以内に産業医から意見をもらわなくてはなりません。
産業医は面談を通じて、労働時間の短縮や休職など就業上の措置を検討し、事業者に報告します。産業医の勧告・助言をもとに、最終的には事業者が必要な措置を判断し、健康相談を実施しなくてはなりません。
【参考】
e-Gov法令検索「労働安全衛生法第66条の4」
e-Gov法令検索「労働安全衛生規則51条の2」
従業員が基準を上回る長時間労働を行い申し出があった場合は、健康相談を受けてもらいます。健康相談が必要になる基準は、労働者・研究開発業務従事者・高度プロフェッショナル制度適用者それぞれにおいて次のとおりです。
労働者 | 研究開発業務従事者 | 高度プロフェッショナル制度適用者 | |
義務 | 時間外労働・休日労働が月80時間以上で、健康相談を申し出た場合 | ・時間外労働、休日労働が月100時間以上の場合
・時間外労働・休日労働が月80時間以上で、健康相談を申し出た場合 |
「1週間あたりの健康管理時間(40時間)」から100時間を超えている場合 |
努力義務 | 事業者が定めた基準に該当する場合 | 事業者が定めた基準に該当する場合 | 上記の義務に該当しない従業員が健康相談を申し出た場合 |
義務に該当する場合は、健康相談を実施しないと労働安全衛生法、および労働安全衛生規則の違反になります。
長時間労働は脳や心臓の疾患につながる場合があるため、健康相談を通じて適切な措置を講じましょう。
【参考】
厚生労働省「長時間労働者への医師による面接指導制度について」
e-Gov法令検索「労働安全衛生法」
e-Gov法令検索「労働安全衛生規則」
【関連記事】過重労働者に産業医面談は必要! 長時間労働の基準、面接指導の対象者や流れを解説
ストレスチェックの結果で、高ストレスと認定された従業員から健康相談の申し出があった場合にも実施します。ストレスチェック後の健康相談に関しては、労働安全衛生法にも明記されており事業者の義務です。
健康相談の実施後、事業者は面談を担当した産業医から健康を保持するための措置についての意見を聞かなければなりません。最終的には事業者側で判断して、職場や業務内容の変更、労働時間の短縮などの措置を取ります。
ただし、ストレスチェックや健康相談の結果を理由に、従業員に不利益が生じる扱いをしてはなりません。
【参考】
e-Gov法令検索「労働安全衛生法第66条の10」
厚生労働省「労働者の心の健康の保持増進のための指針」
【関連記事】ストレスチェックにおける産業医の面接指導―徹底解説
健康相談は、休職している従業員をフォローする目的でも実施する必要があります。休職者面談の明確な基準はありませんが、月1回程度で実施するのが一般的です。
健康相談を通じて休職者の心身状態を把握し、復職を希望する場合には職場復帰が可能か判断します。
休職者の健康相談は、労働安全衛生法や労働契約法に定められている安全配慮義務にあたる可能性があり、違反しないよう取り組まなくてはなりません。休職者のフォローは産業医以外に、主治医とも連携して実施する必要があります。
【参考】
e-Gov法令検索「労働安全衛生法第3条」
e-Gov法令検索「労働契約法第5条」
【関連記事】
安全配慮義務とは?違反しないために企業が取り組むべき必須ポイント徹底解説
従業員がメンタルヘルス不調や身体疾患で休職したら―産業医による面談を活用しよう!
従業員に問題が見られない場合でも、健康相談の希望があれば実施しなくてはなりません。たとえば、慢性化している体調不良や、病気の治療と仕事の両立に関する悩みなどが挙げられます。
産業医は職場の事情を把握しているため、従業員にとっては相談しやすい存在でもあります。産業医から専門的なアドバイスをもらうことで、従業員の業務効率が向上する可能性もあるでしょう。
ただし、産業医は治療を実施できず、あくまでも助言・指導のみです。事業者は必要に応じて、従業員に受診することを勧めましょう。
健康相談を行う際に注意すべきことは、相談内容の記録と最低5年間の記録保管義務がある点です。
健康相談を行ったら、事業者は面接を担当した産業医からの報告をもとに面接指導結果報告書を作成する必要があります。報告書は就業上の措置を取る場合や、休職を判断する場合に重要になるので必ず記録しておきましょう。
健康相談の内容は、個人のプライバシーなので保護しなければなりません。作成した報告書は、第三者に見られることのない場所・方法で保管しましょう。
【参考】厚生労働省「長時間労働者への医師による面接指導制度について」
産業医へ健康相談をするメリットは次の5つです。
それぞれのメリットについて解説します。
産業医への健康相談のメリットには、健康障害・メンタル不良で従業員が退職・休職することを未然に防げる点です。健康相談を通じて、従業員の状況に合わせた必要な措置を早めに講じられるためです。
事業者や企業の担当者は、産業保健の知識が豊富でないことがほとんどです。健康相談を行って産業医から専門的な意見をもらったり、指導をしてもらったりすれば適切に就業上の措置を取れます。
高ストレス者にとっては、産業医に話を聞いてもらえるだけでもストレスが軽減する可能性があります。従業員に自身の疲労やストレス状況を自覚してもらうためにも、事業者は健康相談を促しましょう。
【関連記事】【産業医寄稿】高ストレス者の面談を行う意義とは?
健康相談をもとに現状を的確に把握し、職場環境の改善につなげられることもメリットといえます。産業医を通じて、なかなか聞き出せない従業員の声を反映できるためです。
従業員は職場環境になにかしらの不満を抱えていても、人事担当者や上長との面談では本音を話してくれないことがあります。不満を口にすると自身の評価に影響するかもしれないと気になってしまうためです。
産業医は外部の人間で、労働安全衛生法によって守秘義務が課せられているため、従業員は安心して相談できます。健康相談をもとに産業医から助言や勧告を受けることで、従業員が働きやすい職場環境に改善可能です。
【参考】e-Gov法令検索「労働安全衛生法第105条」
定期的に休職中の従業員に健康相談を受けてもらうことで、早期の回復・復職につながる点もメリットといえます。産業医が休職者の状況を把握し、必要なサポートができるためです。
休職期間中の従業員の対応は、主治医に任せて回復を待つケースも多く見られますが、回復状況が分からなくなってしまいます。月1回程度、休職者に健康相談を受けてもらえば、復職の判断もしやすくなるでしょう。
【関連記事】精神科産業医が推す、「ランダム面談」「休職者面談」とは? ―産業医のメンタルヘルス事件簿vol.1
従業員の健康に対する意識を高められる点も、産業医への健康相談のメリットです。健康相談は個別の面談形式なことから、従業員個人の状況に応じた改善指導ができるからです。
従業員は自分でも意識しないうちに、疲労やストレスを蓄積している場合があります。健康診断で異常の所見が見られたり、高ストレスと判断されたりしたタイミングであれば、産業医のアドバイスを聞いてもらえる可能性が高いでしょう。
従業員の健康意識が高まれば症状の悪化を防げるだけでなく、業務効率の向上なども期待できます。
産業医への健康相談では、産業医と従業員の信頼構築にもつながります。健康相談は、従業員が産業医を知り、コミュニケーションを取るきっかけになるためです。
従業員は普段の業務で産業医と接する機会は少なく、自ら相談しに行くことは少ないかもしれません。
健康相談が受けられることを従業員に周知し、相談しやすい環境を整備することで従業員が安心して働ける職場に近づくでしょう。
健康相談をしやすくするために事業者が取り組むべきことは次の4つです。
それぞれのポイントを解説します。
従業員が気軽に相談できる、コミュニケーション能力が高い産業医を選任しましょう。健康相談を受ける従業員は、なんらかの不安を抱えている状態です。人当たりがよく、相談者の本音を引き出せる産業医が望ましいといえます。
産業医の主な探し方は次の4つです。
自社に合った探し方を選んで、適正な産業医を選任しましょう。
【関連記事】【まとめ】産業医の探し方 産業医紹介4つの相談先と選び方のポイント
従業員に健康相談を受けてもらうためには、健康相談のことを確実に周知することが重要です。周知する方法としては、主に次の3つが挙げられます。
また、健康相談を受けるメリットもあわせて周知しておきたいところです。企業のためだけではなく、従業員自身の健康のためにも受けるものであることを意識してもらいましょう。
従業員に健康相談を受けてもらうためには、健康相談が実施しやすい場所を確保する必要があります。
従業員が安心して相談できるよう、話している内容が外部にもれない人目につきにくい場所を用意しましょう。できれば産業医が専用で使える診療室や個室が望ましいです。
人通りが多い廊下に面したブースやオープンスペース、相談者が外から見えてしまう場所は避けましょう。
対面での健康相談だけでなく、オンラインでも健康相談が受けられる環境の整備も重要です。
新型コロナウイルスの流行もあり、2020年11月からWeb会議ツールなどを使用したオンラインでの健康相談が可能になりました。オンライン面談なら出社する必要がないため、対面よりも気軽に実施でき、面談実施率が上がった事例も見られます。
対面での健康相談と同様に、オンライン相談でも相談内容が第三者に知られないようにプライバシーに配慮しなくてはなりません。その他にもオンラインでの健康相談が実施できる産業医の条件を確認し、環境を整備しましょう。
【参考】厚生労働省「情報通信機器を用いた労働安全衛生法の規定に基づく医師による面接指導の実施について」
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健康相談の目的は、従業員の健康状態を把握して健康を保つために必要な指導や措置をすることです。健康診断で異常の所見が見られたり、ストレスチェックで高ストレスと判定されたりした従業員は、産業医への健康相談の対象になります。
健康相談を適切に実施すれば、従業員の健康障害やメンタル不調の防止、職場環境の改善につながります。コミュニケーション能力の高い産業医を選任して相談しやすい環境を整備し、働きやすい職場を実現しましょう。
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