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ストレスチェック「高ストレス者」の基準と対応 | 人事担当者向け

ストレスチェック制度は、従業員のメンタルヘルス不調を未然に防ぎ、快適な職場環境を築く上で欠かせない制度です。特に、ストレスチェックの結果から「高ストレス者」と判定された従業員への適切な対応は、企業が従業員の安全と健康を守る上で極めて重要となります。

しかし、「高ストレス者」の具体的な基準や、その後の対応について、「これで本当に合っているのか?」「他にやるべきことはないか?」と疑問や不安を感じている人事労務担当者の方も多いのではないでしょうか。

本記事では、企業の人事労務担当者様に向けて、ストレスチェックにおける高ストレス者の判定基準から、面接指導の勧奨、そしてその後の具体的な対応フロー、さらには個人情報保護における注意点まで、実践的な情報を分かりやすく解説します。

ストレスチェック制度とは?高ストレス者対応の重要性

ストレスチェック制度は、2015年12月に施行された労働安全衛生法に基づく制度です。従業員の心理的な負担の程度を把握するための検査であり、ストレスの高い状態にある従業員を早期に発見し、面接指導によってセルフケアや職場環境改善につなげることを目的としています。

この制度において特に重要なのが、「高ストレス者」への対応です。高ストレス者とは、ストレスチェックの結果、心身のストレスが非常に高いと判断された従業員のことであり、放置するとメンタルヘルス不調に陥るリスクが高まります。企業には、このような高ストレス者に対して適切な措置を講じ、従業員の健康を守る「安全配慮義務」があります。そのため、高ストレス者の基準を正しく理解し、迅速かつ適切に対応することが、企業のコンプライアンスと従業員のウェルビーイング向上に直結するのです。

ストレスチェックにおける「高ストレス者」の基準

では、具体的にどのような従業員が「高ストレス者」と判定されるのでしょうか。高ストレス者の判断基準は、主に厚生労働省が推奨する「職業性ストレス簡易調査票(57項目版)」を用いて、以下の2つのいずれかに該当する場合とされています。

量的評価による基準

職業性ストレス簡易調査票の各項目には点数が設定されており、ストレスの度合いを数値で評価します。

  • 「心身のストレス反応」の合計点が高い場合: 具体的には、「非常に疲れている」「イライラする」といった心身の状態に関する質問の合計点が高い場合に高ストレスと判断されます。厚生労働省のモデルでは、「心身のストレス反応」尺度(29項目)の評価点数が77点以上(※調査票の質問項目や評価方法により点数は変動する可能性があります)であることなどが目安とされています。
  • 「ストレスの原因」と「ストレス反応」の組み合わせ: ストレスの原因となる職場環境や仕事の内容に関する項目(例:「仕事の量が多い」「人間関係が悪い」など)の点数が高く、かつ心身のストレス反応の点数も高い場合に高ストレスと判断されることがあります。

これらの点数基準は、標準的な集団との比較によって客観的にストレスの度合いを評価するために用いられます。

医師(主に産業医)による総合評価

ストレスチェックの結果、量的な基準には該当しなかった場合でも、医師(主に産業医)が個々の状況を総合的に判断し、必要と認める場合に高ストレス者と判定されることがあります。これは、数値だけでは測れない個人の状況や背景、例えば「最近、家庭環境に大きな変化があった」「特定のハラスメントを受けている可能性がある」といった要因を考慮に入れるためです。

この医師(主に産業医)による総合評価は、特に従業員からの自由記述や、ストレスチェック後の面談を通じて得られる情報に基づいて行われることが多いです。

高ストレス者と判定された従業員への対応フロー

高ストレス者と判定された従業員がいた場合、企業は以下のフローで対応を進めることが一般的です。

面接指導の勧奨

高ストレス者と判定された従業員に対しては、医師(主に産業医)による面接指導を受けるよう勧奨する義務があります。これは、従業員自身の健康状態を医師(主に産業医)の専門的な視点から評価してもらい、今後の対応について助言を得るための重要なステップです。

  • 勧奨方法: 原則として、ストレスチェック実施者(医師・産業医、保健師など)または実施事務従事者(人事労務担当者など)から、書面または口頭で速やかに勧奨を行います。勧奨の際には、面接指導を受けることのメリットや、プライバシーが保護されることなどを丁寧に説明し、従業員が安心して受診できるよう配慮することが重要です。
  • 勧奨期間: 面接指導の申出期間は、ストレスチェック結果通知後、概ね1ヶ月以内とすることが推奨されています。

面接指導の実施

従業員から面接指導の申出があった場合、企業は遅滞なく医師(主に産業医)による面接指導を実施する義務があります。

  • 実施者: 面接指導は、産業医などの医師が行います。
  • 内容: 面接指導では、医師(主に産業医)が従業員の心身の状態、ストレス状況、就業状況などを詳細にヒアリングし、医学的な見地から必要な指導や助言を行います。必要に応じて、医療機関への受診勧奨や、休職・異動などの就業上の措置の必要性を判断します。
  • 記録の作成: 面接指導を行った医師(主に産業医)は、その結果を記録し、企業に報告します。この記録は、今後の対応の根拠となるため、正確に作成する必要があります。

就業上の措置の検討と実施

面接指導の結果、医師(主に産業医)から就業上の措置が必要である旨の意見が出された場合、企業はその意見を参考に、適切かつ必要な措置を講じる義務があります。

【措置の例】

  • 労働時間の短縮や残業の制限: 過重労働がストレス要因である場合。
  • 配置転換や異動: 人間関係や業務内容がストレス要因である場合。
  • 休職: 心身の回復に専念する必要がある場合。
  • 業務内容の見直し: 業務負荷の軽減や内容の調整。
  • その他: 産業医との継続的な面談、外部専門機関の紹介など。

【従業員との合意形成】
措置を講じる際には、従業員の意見を十分に聞き、合意形成を図ることが重要です。一方的な措置は、かえって従業員のストレスを増大させる可能性があります。

【プライバシーへの配慮】
措置の内容によっては、他の従業員に情報が伝わる可能性があるため、最大限のプライバシー保護に配慮する必要があります。

職場環境改善への活用

高ストレス者が出たということは、その背景に職場全体のストレス要因が潜んでいる可能性があります。個別の対応だけでなく、ストレスチェック全体の集団分析結果も踏まえ、職場環境の改善に取り組むことが重要です。

【具体的な取り組み例】
・長時間労働の是正
・ハラスメント対策の強化
・コミュニケーションの活性化
・相談窓口の設置・周知
・管理職へのメンタルヘルス研修の実施
・業務プロセスの見直し

これらの取り組みを通じて、ストレス要因を根本から解消し、従業員全員が健康で安心して働ける職場づくりを目指しましょう。

高ストレス者対応における重要な注意点

高ストレス者への対応はデリケートな問題であり、以下の点に特に注意が必要です。

個人情報保護の徹底

ストレスチェックの結果や面接指導の内容は、「要配慮個人情報」に該当し、厳重な管理が求められます。

  • 情報共有の制限: 従業員の同意なく、結果を第三者に開示したり、部署内で共有したりすることは厳禁です。面接指導の必要性や就業上の措置を検討する際も、必要最小限の情報に留め、目的外の利用は行わないようにしましょう。
  • データ管理: ストレスチェックの結果や面接指導の記録は、施錠できる場所やパスワードで保護されたシステムで厳重に管理し、アクセス権限を限定するなど、情報漏洩のリスクを最小限に抑える対策を講じましょう。

不利益取扱いの禁止

高ストレス者と判定されたこと、あるいは面接指導を申し出たこと、面接指導を受けたことを理由に、従業員に対して不利益な取り扱いをすることは法律で禁じられています。

  • 具体例: 配置転換、降格、解雇、賃金の引き下げなど、従業員にとって不利になるような措置は絶対に行ってはなりません。
  • 目的の理解: ストレスチェック制度は、従業員の健康を守り、働きやすい環境を作るためのものであり、罰則や評価に繋がるものではないことを従業員に明確に伝えることが重要です。

産業医・外部機関との連携

自社だけでの対応が難しい場合や、より専門的な知見が必要な場合は、産業医や外部のEAP(従業員支援プログラム)機関などと積極的に連携することが非常に有効です。

  • 産業医の役割: 産業医は、面接指導の実施だけでなく、就業上の措置に関する意見具申や、職場環境改善へのアドバイスなど、多岐にわたるサポートを提供してくれます。
  • 外部機関の活用: EAPなどの外部機関は、従業員へのカウンセリング提供や、企業への専門的なコンサルティングを通じて、メンタルヘルス対策を総合的に支援してくれます。

まとめ:ストレスチェック高ストレス者対応のポイント

本記事では、ストレスチェックにおける「高ストレス者」の基準とその後の対応について解説しました。

  • 高ストレス者の基準は、 職業性ストレス簡易調査票の量的評価と医師(主に産業医)による総合評価の2つの側面から判断されます。
  • 対応フローは、 面接指導の勧奨から面接指導の実施、就業上の措置の検討、そして職場環境改善への活用まで一連の流れがあります。
  • 対応においては、 個人情報保護の徹底と不利益取扱いの禁止が特に重要であり、必要に応じて産業医や外部機関との連携も積極的に行いましょう。

高ストレス者への適切な対応は、従業員一人ひとりの健康を守るだけでなく、企業全体の生産性向上と健全な組織運営に不可欠です。本記事が、貴社におけるストレスチェック制度の運用、ひいては従業員が心身ともに健康に働ける職場環境づくりのお役に立てれば幸いです。

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