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自己保健義務は、従業員が自身の健康を管理する義務です。企業が従業員の健康を守る施策を講じても、従業員が施策に協力的でなかったり、セルフケアを怠ったりしていては、健康の維持が難しくなる可能性があります。
そのため、企業は従業員に自己保健義務を果たしてもらうよう、働きかけることが大切です。
本記事では、自己保健義務の内容や安全配慮義務との違い、従業員が自己保健義務を果たすために企業が行うべき取り組みを解説します。
自己保健義務とは、従業員が健康的かつ安全に労働するために、自身の健康管理の維持に努める義務です。
従業員が健康を維持しながら働くためには、事業者が安全配慮義務を果たすだけでは不十分であり、従業員も自身の健康を保つよう努めなければなりません。
たとえば、企業が手配したストレスチェックの受診や、病気の際に療養を積極的に取ることなどが自己保健義務として挙げられます。
自己保健義務は、労働安全衛生法の以下の条項で定められています。
第69条2項 | 労働者は、前項の事業者が講ずる措置を利用して、その健康の保持増進に努めるものとする |
第66条5項 | 労働者は、前各項の規定により事業者が行なう健康診断を受けなければならない |
第66条の7第2項 | 労働者は、前条の規定により通知された健康診断の結果及び前項の規定による保健指導を利用して、その健康の保持に努めるものとする |
(出典:e-Gov法令検索「労働安全衛生法」)
法令には「自己保健義務」とは表記されていません。しかし、事業者が講じた措置や用意した環境(健康診断・保健指導など)を利用して、労働者が自身の健康管理に努めるよう記載されています。
規程を守らない場合は、自己保健義務を怠っていると判断される場合があります。
【関連記事】健康診断は企業の義務!実施すべき健診の種類や対象者を解説
自己保健義務は従業員の義務であるのに対し、安全配慮義務は事業者が守るべき義務です。
労働契約法には事業者の安全配慮義務として、従業員の生命や身体などの安全を確保しつつ、労働できるよう配慮しなければならない旨が記載されています。
安全配慮義務に違反すると罰則を科せられます。また、民法において損害賠償請求が発生した場合は、企業のイメージダウンにつながりかねません。
安全配慮義務に関する詳しい内容は、以下の記事で紹介しているので参考にしてください。
【関連記事】安全配慮義務違反に該当する基準とは?企業が取り組むべき対策も解説
【参考】e-Gov法令検索「労働契約法」
従業員には自己保健義務と自己安全義務が課されていますが、両者は以下のように管理する範囲が異なります。
自己保健義務 | 私生活を含めた健康管理に努める |
自己安全義務 | 労働中の自身の安全確保に努める |
自己保健義務は、私生活を含めた健康管理にかかわる義務です。それに対して自己安全義務は、労働中の自身の安全確保にかかわる義務です。
自己安全義務に関しては、労働安全衛生法に明記されており、従業員は労働災害を防止するために事業者が講じた措置を取るよう努めなければなりません。
たとえば、安全靴やヘルメットの着用規定があるにもかかわらず、就業中に従業員が自己判断で着用しない場合は自己安全義務違反に該当します。
【参考】e-Gov法令検索「労働安全衛生法」
従業員が自己保健義務を果たすために実施することは、主に以下などが挙げられます。
それぞれの内容について解説します。
労働安全衛生法には、自己保健義務として従業員が年1回の健康診断を受診しなければならないことが明記されています。
なお、事業者が実施する健康診断ではなく、既定の検査項目を満たしていれば人間ドックの受診などでもよいとされています。ただし、健康診断の結果を事業者に提出しなければなりません。
【関連記事】
健康診断は企業の義務!実施すべき健診の種類や対象者を解説
人間ドック費用は会社負担?福利厚生費にする要件や覚えておくべきポイントを解説
従業員が事業者に体調不良の自覚症状を申告することは、自己保健義務の一つです。
たとえば、めまいや動悸があるなどの体調不良が認められる場合は、事業者に申告し悪化させないよう努めなければなりません。
従業員は就労中だけではなく、私生活においても健康管理をしなければなりません。
私生活では、暴飲暴食や寝不足などの健康を阻害する行動を避け、栄養のある食事や適度な運動を心がけることが重要です。
従業員は、事業者が講じる健康管理に関わる措置に協力しなければなりません。
事業者が保健指導を適切に実施していても医療機関を受診しない場合や、安全配慮義務に則り残業を抑制していても従わない場合は、協力していないと判断されます。
病気やけがにより従業員が療養に専念することは自己保健義務の一つです。病気を理由に欠勤しているにもかかわらず遊びに出かけたり、病気であることを隠して出勤したりすることをしてはなりません。
自己保健義務を怠った場合の罰則はありません。ただし、自己保健義務を果たさず体調不良に陥った場合は、労災認定を受けられなかったり、損害賠償が過失相殺されたりします。
安全配慮義務違反で損害賠償を申し出たときに、自己保健義務を怠っていなかったかどうかが争点となることがあります。
実際の判例では、従業員が自身の判断で防塵マスクをしなかったことや、自覚症状があったにもかかわらず自己判断で治療を中止したことなどが争点として挙げられました。
【参考】
裁判所「三井金属神岡鉱山じん肺損害賠償請求控訴事件」
裁判所「九州建設アスベスト損害賠償請求(2陣)事件」
裁判所「国家賠償請求事件」
従業員に自己保健義務を果たしてもらうために、企業は以下の取り組みを実施しましょう。
それぞれの取り組みについて解説します。
従業員が守るべき義務として、自己保健義務があることを周知しましょう。自己保健義務に該当する行為や、違反した場合は従業員にどのような不利益があるかを説明しておくとよいでしょう。
さらに、安全配慮義務との区別を明確に示しておくことも、自己保健義務で果たすべき範囲を理解してもらうためには重要です。
就業規則に自己保健義務を遵守させる項目を記載しておきましょう。健康診断やストレスチェックを受診しない場合の企業の対応などを明文化しておくことが大切です。
【関連記事】会社のルールを決める就業規則は絶対必要?役割や注意点を解説!
従業員に対し健康管理に関する教育を実施し、自己保健義務を果たすよう促す必要もあります。
たとえば、セルフケアの方法についての研修や、パルスサーベイの結果から判明した健康課題に関する教育を実施するとよいでしょう。
パルスサーベイのやり方は、以下の記事で詳しく解説しているので参考にしてください。
【関連記事】
パルスサーベイとは?質問項目や実施するメリットを解説
従業員のパフォーマンスを高めるためのセルフケアについて徹底解説
従業員に健康管理を意識してもらうには、自己保健義務について周知し、教育することが重要です。
事業者が提供する健康診断やストレスチェックの受診や、体調不良の自覚症状の申告など、従業員に自身が果たすべき内容を理解してもらう必要があります。
事業者と従業員が協力し、従業員の健康を維持できれば、仕事のパフォーマンスの向上が期待できます。従業員に自己保健義務が課されていることを周知して、健康管理を促しましょう。
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