環境問題や社会問題への関心の高まりにより、近年ESG投資が投資家たちから注目されています。ESG投資を意識した企業経営をしたいと考えているものの、どのようにESGの要素を事業戦略に取り入れたらいいのか分からない企業も多いのではないでしょうか。
ESG投資では、企業の収益だけでなく、社会的な取り組みや環境への配慮なども重要な評価ポイントとなります。
本記事では、ESG投資が注目を集めている背景やESG投資に対応するメリット、取り組みの具体例について解説します。
ESG投資は、環境（Environment）、社会（Social）、ガバナンス（Governance）の3要素を評価のポイントとして投資先を検討する投資方法です。
従来、投資家の企業評価の主なポイントはキャッシュフローや利益率などの財務上の数値でした。しかしESG投資では、企業の社会的な取り組みや環境への配慮、企業統治がとれているかなども評価のポイントとなります。
【参考】財務省「ESG投資について」
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ESG投資が注目されている背景には、以下の2つが挙げられます。
それぞれの内容を詳しく解説します。
ESG投資は、2006年に国連が「責任投資原則（PRI）」を提唱し、機関投資家に対してESGの視点を考慮して投資をするよう求めたことをきっかけに広まりました。
さらに、2015年に世界最大級の機関投資家であるGPIF（年金積立金管理運用独立行政法人）がPRIに署名したことにより、日本においてもESG投資が注目されるようになりました。
GPIFは、企業のESGに関する取り組みを評価したESG指数を算出して投資の判断材料にしており、ESG指数を参考にして投資先を検討している投資家は少なくありません。
【参考】国連「責任投資原則」
持続可能な社会への関心の高まりもESG投資が注目されるようになった理由の一つです。
資本主義では、社会や環境に配慮しながら事業活動をすると利益が減ってしまうため、これらに配慮する必要はないと考えられていました。
しかし、グローバル化が進み経済活動が活発になるにつれて、環境問題や労働問題などが引き起こされました。
利益を追求するあまりさまざまな問題が引き起こされてしまったことを踏まえて、近年では社会や環境に配慮した経営が求められています。
ESG投資を意識した事業活動を行うメリットには、以下などがあります。
それぞれのメリットについて詳しく解説します。
ESG投資を意識して経営していると、投資家からの評価や社会的信用が高まります。
近年、PRIに署名する機関投資家は増加傾向にあり、投資先を検討する際にESGを重視している投資家は増えていると考えられます。
環境への配慮や社会貢献を重視して経営することで、投資家との信頼関係を深めることにつながるでしょう。
【参考】国連「責任投資原則」
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ESG投資を意識した事業活動を行うことで、長期的に安定した資金調達ができる可能性が高くなります。
投資家は、企業の成長の可能性と将来得られるリターンを検討して投資先を決めています。持続的な成長が期待できるビジネスを展開していると、投資家が長期にわたって資金を投資する可能性が高くなるため、安定的な資金調達につながるでしょう。
ESGの項目に沿って経営することで、持続可能なビジネスを構築できます。
売上至上主義が見直された現代においては、自社の利益を追い求めるだけのビジネスは社会的な支持を得られにくい傾向があります。
自社の利益だけでなく、社会や環境が抱える問題に配慮したり、組織の健全化に努めたりすることで従業員エンゲージメントが向上し、企業の経営安定化につながるでしょう。
ESGに積極的に取り組むことで、イノベーションや新たなビジネス機会の創出につながります。
環境や社会が抱えている問題を解決するために、企業は新しいサービスを開発します。環境に配慮した商品や社会的責任をはたすためのサービスを提供することで、他社との差別化につながり、企業の競争力が向上するでしょう。
ここからはESG投資を意識した取り組みの具体例を紹介します。自社で取り組めるものがあるか検討してみましょう。
環境に関する取り組み例には、以下などが挙げられます。
できることから少しずつ取り組んでいきましょう。
社会的責任に関する取り組みには、多様な働き方に対応する施策があります。リモートワークの導入や時短勤務などの子育てや介護をしている従業員への支援も、社会的責任に関する取り組みの一つです。
また、外国語に対応した製品や障がいのある人にも使いやすい製品の開発は、多様性に配慮した取り組みであり、社会が抱える課題解決に向けた取り組みといえます。
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ガバナンス強化に関する取り組みでは、社外の人材活用が有効です。社外取締役の割合を増やしたり、委員会のメンバーに外部の有識者を含めたりすることが該当します。
複数の子会社をもつ企業の場合は、それぞれの子会社にガバナンス体制を構築した上でグループ全体を監査する機関を設立して、リスク管理をする必要があります。
ESG投資を意識した事業活動をする際には、以下のような注意点があります。
これらの注意点を踏まえて、ESG投資を意識した事業活動に取り組みましょう。
ESG投資を意識した事業活動では、短期的な収益は見込めません。
エネルギー効率の優れた設備の導入や福利厚生の充実など、ESG投資を意識した取り組みには、初期投資や継続的なコストがかかります。また、社会的な課題解決を主眼においた取り組みであるため、短期的な収益は期待できません。
効果を実感できるまでには数年かかると理解し、長期的な視野で取り組むことが大切です。
財務状態から投資先を判断する従来の投資とは異なり、ESG投資には明確な評価基準がありません。
ESG投資の市場拡大に伴って評価基準が確立されていくと考えられますが、現時点では投資家、調査会社、企業がそれぞれの最適解を模索している段階です。
他社が行っている事業内容を参考にしながらESG投資に対する取り組みを検討するとよいでしょう。
従来の利益至上主義が見直されるようになった現代において、企業が今後も安定した経営をしていくためにはESG投資を意識しなければなりません。
ESG投資には統一的な評価基準がなく、投資家の評価基準も明確ではありません。ESG投資が注目されるようになった背景を理解し、自社で行える取り組みを検討していくことが大切です。
短期的な利益を追求するのではなく、ESG投資を意識して持続的に組織を成長させられるビジネスの構築を目指しましょう。
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