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適応障害は年々増加傾向にあり、企業にとって切り離せない問題になってきています。
心身に不調が現れた従業員が業務に支障をきたすケースも多いため、適応障害による休職や復職サポートで対応に悩む企業担当者もいるのではないでしょうか。
本記事では、適応障害の従業員への休職対応や復職時のサポート、適応障害で休職する従業員を発生させないための対策について解説します。
適応障害とは、日常生活の出来事や環境の変化などにうまく適応できず、ストレスが原因でさまざまな症状が引き起こされ、社会生活に支障を来す状態を指します。
さまざまなストレスの影響で一時的に眠れなくなったり、落ち込んだりすることがありますが、短期間で症状が治まるようであればとくに心配はいりません。
しかし、強いストレスにさらされるような出来事から3ヶ月以内に出現した症状によって、仕事や家庭生活に大きな影響が出るようになると適応障害と診断されることがあります。
適応障害は、DSM-Ⅳ-TRによると有病率が2−8%と不眠症と同じくらい精神科を受診する患者さんの多い病気です。
アメリカの診断基準(DSM―5)によると、原因となったストレス因子が取り除かれれば6ヶ月以内に症状は改善するとされています。
似たような症状を呈するうつ病と比べても、ストレスとの因果関係がはっきりした疾患であると考えられています。
会社員の場合であれば、新卒入社・人事異動・昇進などはじめての業務内容が追加された場合など環境の変化や、パワーハラスメント、セクシャルハラスメントなどの対人関係上の問題がストレスとなって発症する場合が多いです。
適応障害の症状には、精神的症状、身体的症状、行動的症状があります。
症状の種類 | 具体的な症状 |
精神的症状 | ・気分の落ち込み
・意欲低下(何もやる気が起こらない) ・感情失禁(突然涙が出てしまう) ・集中力の低下 など |
身体的症状 | ・頭痛
・腹痛 ・吐き気 ・動機 ・めまい など |
行動的症状 | ・過度の欠勤、遅刻、早退
・イライラ感からくる対人関係の悪化 ・アルコール多飲による問題行動 など |
適応障害の症状は、原因となったストレスや当人の性格などによってさまざまです。症状がいくつか組み合わさって複雑に現れるケースも多く見られます。
適応障害の場合、症状の原因となる明らかなストレス因子にさらされてから、3ヶ月以内に症状が出現します。従業員に上記のような適応障害の兆候と思われる症状が見られる場合は、医療機関の受診を勧めましょう。
また、従業員の体調など、状況によっては休職が必要となる場合もあります。休職させる必要があるのか、復職時期をどうするかなど、主治医の診断書や産業医の意見をもとに総合的に判断しましょう。
【関連記事】産業医は診断できない? 産業医の意見書と主治医の診断書、役割別の対応を解説
日本では適応障害の患者数が2018年〜2022年の5年間で1.7倍になり、年々増加しています。年代別に見ると、2021年時点では20代が最も多く、30代、40代、50代、10代と続いています。
適応障害はストレスとの因果関係がはっきりしており、環境の変化が生じる時期に発症しやすい傾向です。入社後に慣れない生活で生じるストレスが、20代の患者数が多い原因の一つとして考えられます。
事業者は適応障害の実態や原因を理解するとともに、現代社会を取り巻く状況を把握しておく必要があります。
また、従業員が適応障害を発症しないような取り組みはもちろん、発症してしまった場合の対策も明確にしておくことが重要です。
【参考】日本システム技術株式会社「【実態調査】患者数は5年間で1.7倍、冬に増加する適応障害の実態調査」
従業員が医療機関を受診し適応障害と診断された際は、従業員に診断書の提出を求め、休職の必要性を判断します。
従業員の主治医から休職の必要性を示されているようであれば、就業規則に沿って休職の手続きを進めましょう。
休職の申請は従業員にとって負担に感じる場合が多いため、安心して休んでもらうためには、事業者からの積極的な提案が必要です。
事業者が従業員に休職命令を出すことも可能ですが、メンタルヘルスに関連する休職命令は、本人が不当な指示と受け取る場合があるため注意が必要です。
上司命令と受け取られないよう、産業医面談などで休職が必要な状態であると伝えてもらうのもよいでしょう。
従業員本人が自分自身の病状を理解し、休職の必要性を納得してもらうために、うまくコミュニケーションを取りながら手続きを進めましょう。
【関連記事】従業員から休職の申し出があったら何をする?産業医の判断の必要性も解説
【関連資料】【産業医監修】従業員の復職対応6点セット
従業員が適応障害で休職することになった場合の休職期間に関して、法令上の定めはありません。
後々のトラブルを防ぐためにも、どういった場合にどれくらいの期間休職を認めるかを就業規則で定めておくとよいでしょう。
また、適応障害の治療に必要な期間は、従業員の状況によります。目安として、平均3~6ヶ月程度、最低でも1ヶ月程度の休職が望ましいとされています。
個人差があるため、就業規則を定める際は「最低◯ヶ月、それ以降は診断書の提出や会社と相談のうえ◯ヶ月ずつ延長」などとすると柔軟に対応しやすくなります。
適応障害で休職する際の給与も、休職期間同様に企業の規則によります。給与は労働の対価が前提であるため、休職期間中は無給と定めても問題ありません。
ただし、給与支払いによるトラブルを回避するためにも、無給の場合でも何割かの給与を支払う場合でも、休職期間中の給与について就業規則に明記しておきましょう。
また、給与の支払いをしない場合でも、社会保険料や住民税は発生します。休職期間中の給与とあわせて、納税に関する規則も定めるとよいでしょう。
休職する多くの従業員が抱える悩みの一つに、休職期間中の金銭の問題が挙げられます。従業員が休職したまま退職に至らぬよう、復職までの期間に役立つ制度を紹介します。
傷病手当金とは、休職中に給与が発生しない場合に申請できる手当金です。支給開始日から通算して1年6ヶ月支給されます。
以下の4つの条件を満たした際に申請可能です。
(出典:全国健康保険協会「病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)」)
申請先は協会けんぽです。協会けんぽへの申請は、事業者から従業員本人からのどちらでも可能なため、事業者主体で手続きを進めるとスムーズに行えるでしょう。
自立支援医療制度とは、通院による治療を要する場合に利用できる制度です。申請する時点ですでに通院していることが前提ですが、治療費に上限額が設定され、自己負担額が高額になるのを防げます。
申請には診断書が必要になるため、従業員に通院する病院で相談するように促すとよいでしょう。
申請先は、従業員の住む各自治体です。事業者側で行う申請手続きはありません。
【参考】東京都福祉局「自立支援医療(精神通院医療)について」
労働者と企業側双方で復職できると判断しても、サポートは終わりません。適応障害が再発しないように、職務内容や業務時間を検討し、労働者が安心して復職できる環境を作りましょう。
従業員のストレス要因が職務内容であった場合、復職後の職務内容変更を検討する必要があります。
たとえば、ノルマにプレッシャーを感じていた場合はノルマの無い業務へ、時間の細かい制約が厳しいと感じていた場合は時間制約の少ない業務への復職を検討するとよいでしょう。
職務内容の変更により新しい部署へ異動する場合、新しい業務を1から覚えたり人間関係がガラッと変わったりすることもあります。環境を変えること自体が大きなストレスになる可能性もあるため、従業員と相談し段階的に変更しましょう。
労働時間の長さが適応障害の要因だった場合は、就業時間の調整が必要です。休みを多くする方法以外にも、1日の労働時間を短くして徐々に通常の就業時間に移行していくなどの対応をしましょう。
フルタイムでの勤務が可能でも、業務量を調整し一定期間は残業をさせないよう配慮したほうがよいといえます。
適応障害が発症した際のケアは大切ですが、まず適応障害で休職する従業員を発生させないようにすることが重要です。
従業員がストレスを抱え込みすぎないよう、事業者が行うべき対策を解説します。
【関連記事】職場のメンタルヘルスケアとは? 企業が知っておくべき対策を徹底解説
労働者が常時50人以上働いている職場では、ストレスチェックが義務付けられています。年に1回はストレスチェックを実施し、ストレスを抱えている従業員に対しフォローできる体制を整えましょう。
厚生労働省が2022年に行ったストレスチェックに関するアンケート調査では、以下のような結果が出ています。
(参考:厚生労働省「ストレスチェック制度の効果検証に係る調査等事業報告書」)
このことから、ストレスチェックは従業員に自身のストレスを自覚してもらうことに有用であると分かります。
一方で事業者はその後の職場環境改善の実施と、改善内容の周知や改善後のアンケートまで行うことが重要だと考えられます。
【参考】厚生労働省「ストレスチェック等の職場におけるメンタルヘルス対策・過重労働対策等」
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職場の人間関係に起因する適応障害の場合、個人のパワハラやセクハラをはじめとした認識不足が要因となっている可能性もあります。
とくに管理職や部下をもつ社員は、適応障害をはじめとしたメンタルヘルス上の問題に関して、正しく理解する必要があります。
新人社員向けの研修だけではなく管理職向けの研修も設置し、パワハラやセクハラが発生しない職場づくりを目指しましょう。
従業員がカウンセラーや産業医に相談できる窓口の設置も大切です。
「職場の不満や悩みを、上司や同僚に話すのは気が引ける」「評価に影響があるのでは」と考えてしまう人は多くいます。
そのため、直接業務にかかわらない第三者をはさむことで、安心して相談をできるようになる点が相談窓口設置の大きなメリットです。
相談窓口は、ただ設置して終わるのではなく、相談時のプライバシーが守られる点を具体的に説明し、相談方法や受付時間を積極的に告知しましょう。
事業所内に部屋を用意するのであれば一目につかない場所を選んだり、対面が苦手な人のためにメールや電話相談を受け付けたりするなど、多方面から配慮が必要です。
【関連記事】EAPとは?メンタルヘルス対策としての概要や導入メリットを解説
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業務に関して分からないことがあっても上司や同僚に聞けず、業務についていけなくなることがストレス要因となり、メンタルヘルス不調の症状が現れ医療機関を受診するケースもあります。
慣れない仕事に対するプレッシャーやストレス軽減のために、業務内容に対する疑問点や不安がないかを適宜確認し、こまめに業務のフォローをしましょう。
適応障害は環境になじめないなどのストレスが原因となり、精神・身体に症状が生じる病気です。
事業者は、従業員が適応障害で休職してしまわないよう対策を講じることが重要です。定期的なストレスチェックや職場改善、相談窓口の設置など従業員がストレスを抱え込まないようフォローしましょう。
また、適応障害で従業員が休職になった場合に備えて就業規則を定めるとともに、復職時の適切な対応で再発防止に努めましょう。
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休職中の従業員が職場復帰をするにあたり、事業者にはさまざまな対応が求められます。 本資料は産業医監修のもと、厚生労働省「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」の内容に基づいて作成した以下の資料をセットにしたものです。 流れがわかる!従業員の職場復帰支援ガイド 復職及び就業上の配慮に関する情報提供書 復職支援に関する情報提供依頼書 産業医面談記録表 両立支援プラン/職場復帰支援プランの作成フォーマット 生活記録表 「従業員の職場復帰の流れについて把握したい」 「従業員の職場復帰時に必要な資料がほしい」 とお考えでしたら、ぜひご活用ください。
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※有害業務従事の場合は500人以上
単発の面談が必要な事業場向け