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7割が実施するカスハラ防止策は?経団連の調査から対策のポイントを考える

近年、企業経営におけるリスクとして、カスタマーハラスメント(以下、カスハラ)が大きな注目を集めています。顧客からの過度な要求や迷惑行為は、従業員の心身の健康を損なうだけでなく、企業のイメージ低下や生産性悪化にも繋がりかねません。人事担当者は、カスハラ対策の最前線に立ち、従業員が安心して働ける環境を整備する重要な役割を担っています。
本稿では、日本経済団体連合会(経団連)が発表した「ハラスメント防止対策に関するアンケート調査結果」 をもとに、カスハラ対策の現状と課題を考察します。その上で、企業が取り組むべき具体的な対策についても解説します。

4割の企業がカスハラに対応

経団連の調査結果によると、カスハラについて「対策を取りまとめて実施している」または「現在、取りまとめるべく検討している」と回答した企業は、全体の43.2%に上ります 。この数字は、多くの企業がカスハラ対策の必要性を認識し、具体的な行動に移し始めていることを示しています。

ハラスメント防止対策に関するアンケート調査結果(経団連)

しかし、一方で「対策が必要と認識しているが、特に対応していない」と回答した企業も27.5%存在します 。これは、カスハラ対策の重要性は理解しているものの、具体的な対策に踏み出せていない企業が依然として少なくないことを示唆しています。企業規模や業種によって対策の進捗に差があることも考えられ、今後の課題と言えるでしょう。

カスハラ対策、7割が相談窓口

カスハラ防止策として最も多いのは「従業員を対象とした相談窓口の設置」で、73.3%の企業が実施しています。これは、従業員が安心して相談できる体制を整備することが、カスハラ対策の第一歩として重要視されていることを示しています。
次いで、「社内向けの対応マニュアルの策定」(61.7%)、「顧問弁護士や警察等との連携」(60.0%)、「カスハラ発生時の社内体制の構築」(58.3%)といった対策が上位に挙げられています。これらの対策は、カスハラの未然防止、発生時の迅速かつ適切な対応、そして従業員の安全確保のために不可欠な要素と言えるでしょう。

経団連ハラスメント調査_カスハラ対策トップ5

人事担当者が推進したい具体的なカスハラ対策

経団連の調査結果や、企業が抱える課題を踏まえ、人事担当者が中心となって推進したい具体的なカスハラ対策を、以下の4つの柱で解説します。

(1)カスハラの定義と判断基準の明確化

カスハラ対策の第一歩は、社内でカスハラの定義を明確にし、具体的な判断基準を示すことです。これにより、従業員はどのような行為がカスハラに該当するのかを理解し、適切に対応することができます。

<具体的な取り組み>
カスハラに関するガイドラインの策定:具体的な事例を交えながら、カスハラに該当する行為と該当しない行為の例を示すガイドラインを作成します。東京都が策定したガイドラインも参考になるでしょう。
研修や勉強会の実施:ガイドラインの内容を従業員に周知徹底するための研修や勉強会を実施します。
相談窓口での丁寧な対応:相談窓口では、従業員からの相談内容を丁寧にヒアリングし、カスハラに該当するかどうかを判断するための支援を行います。

【参考】
カスタマー・ハラスメントの防止に関する指針(ガイドライン)」(東京都)

(2)相談窓口の機能強化

従業員が安心して相談できる体制を整備することは、カスハラ対策において非常に重要です。相談窓口は、従業員の心のケアを行うだけでなく、カスハラの実態を把握し、対策を検討するための重要な情報源となります。

<具体的な取り組み>
相談窓口の設置:社内相談窓口と社外相談窓口の両方を設置することで、従業員が相談しやすい環境を整備します。社外相談窓口としてEAPサービスを活用するのも良いでしょう。
相談担当者の専門性向上:相談担当者に対して、カウンセリングスキルや関連法規に関する研修を実施し、専門性を高めます。
相談しやすい環境づくり:相談者のプライバシーを保護し、安心して相談できる雰囲気をつくります。
相談後のフォロー体制の確立:相談内容に応じて、適切な部署と連携し、相談者の状況に応じたサポートを行います。

(3)対応マニュアルの策定と研修の実施

カスハラ発生時の対応手順や役割分担を明確にしたマニュアルを作成し、定期的な研修を通じて従業員の対応力を向上させることは、カスハラ対策の重要な柱となります。

<具体的な取り組み>
対応マニュアルの作成:カスハラ発生時の具体的な対応手順、関係部署との連携方法、記録方法などを詳細に記載したマニュアルを作成します。
階層別研修の実施:新入社員、一般従業員、管理職など、階層別に必要な知識やスキルを習得するための研修を実施します。
ロールプレイング形式の研修:実際の場面を想定したロールプレイング形式の研修を実施することで、実践的な対応力を養います。
eラーニングの活用:時間や場所にとらわれずに学習できるeラーニングを活用することで、効率的に研修を実施します。

<対応マニュアルのポイント>
初期対応:カスハラが発生した場合の初期対応(状況の把握、関係者への聞き取り、記録など)について明確に記載します。
エスカレーション:対応困難なケースや悪質なケースが発生した場合のエスカレーションルートを明確にします。
関係部署との連携:関係部署(人事部、法務部、広報部など)との連携方法や役割分担を明確にします。
事後対応:カスハラが解決した後に行うべき対応(被害者へのケア、再発防止策の検討など)について記載します。

(4)従業員ケアの充実

カスハラ被害を受けた従業員の心身のケアを行うことは、企業の重要な責務です。適切なケアを行うことで、従業員の早期回復を支援し、職場復帰を促進することができます。

<具体的な取り組み>
カウンセリングの実施:専門のカウンセラーによるカウンセリングを実施し、従業員の精神的なケアを行います。
休職制度の活用:必要に応じて、休職制度を活用し、従業員が心身を休める時間を与えます。
配置転換の検討:職場環境を変えることが有効な場合、配置転換を検討します。
復職支援プログラムの提供:休職から復帰する従業員に対して、復職支援プログラムを提供し、スムーズな職場復帰をサポートします。

<従業員ケアのポイント>
早期発見と早期対応:カスハラ被害を早期に発見し、早期に対応することが重要です。
プライバシーの保護:被害者のプライバシーを保護し、安心してケアを受けられる環境を整備します。
継続的なサポート:一度きりのケアではなく、継続的なサポートを提供することが重要です。
管理職の理解と協力:管理職が従業員ケアの重要性を理解し、積極的に協力することが重要です。

まとめ

カスハラ対策は、従業員の安全と企業の持続的な成長のために不可欠な取り組みです。対応が不十分な場合、採用への悪影響や離職にもつながるリスクがあります。自社の状況に合わせてカスハラ対策を推進し、従業員が安心して働ける職場環境の実現が必要でしょう。

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