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従業員の健康増進の取り組みとして、厚生労働省はトータルヘルスプロモーションプラン(Total Hearth Promotion Plan)を推奨しています。
しかし、「導入するメリットとは?」「どのように自社に取り入れたらよいのか?」と悩んでいる担当者もいるのではないでしょうか。
この記事では、トータルヘルスプロモーションプランが注目されている理由や導入するメリット、推進方法を解説します。他社の導入事例も紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
トータルヘルスプロモーションプラン(THP)とは、従業員の心身の健康増進のために企業が行う取り組みのことをいいます。
以前までは、中高年の健康維持を目的としたシルバーヘルスプラン(SHP)が促進されていました。しかし、事業場および働く従業員を取り巻く環境が変化し、若年層のメンタルヘルス不調による休職者が増加しました。
そこで、すべての年齢の従業員を対象としたトータルヘルスプロモーションプランが推進されるようになったのです。
【参考】厚生労働省「令和4年「労働安全衛生調査(実態調査)」の概況」
トータルヘルスプロモーションプランが注目されている理由についてみていきましょう。
仕事のストレスや不安を感じている人が増えているため、トータルヘルスプロモーションプランが注目されています。
厚生労働省が公表している「令和4年労働衛生調査」によると、現在の仕事に関して強い不安やストレスを感じる事柄があると回答した労働者の割合は82.2%です。
この調査結果から、多くの人が仕事や職場生活にストレスや不安を感じていることが分かります。企業には、従業員への健康増進の取り組みが求められているといえます。
定期健康診断で異常所見が認められる人が増加していることも、トータルヘルスプロモーションプランが注目されている理由の一つです。
下表は、厚生労働省の「健康診断有所有者の推移」の結果をもとに、直近3年分の有所見者の割合を示したデータです。異常所見がある人は、年々増加傾向にあります。
年次 | 有所見者率の割合 |
平成30年 | 60.7% |
令和元年 | 61.0% |
令和2年 | 63.6% |
労働安全衛生法には、事業者は従業員の健康増進のために適切な指導をするようにと定められています。
そのため、従業員の心身の健康増進・保持のためにトータルヘルスプロモーションプランが注目されていると考えられます。
【参考】e-Gov法令検索「労働安全衛生法」
2023年3月に、トータルヘルスプロモーションプランの指針の一部が改正されました。改正の主な内容は以下のとおりです。
加齢による筋力や認知機能の低下は、転倒など労働災害の要因になる恐れがあります。そのため、改正指針にはロコモティブシンドローム(運動器の低下により日常生活に支障をきたす身体状態)などの予防の取り組みが重要と強調されています。
また、従業員の体力状況を客観的に把握し、身体機能向上につなげるための健康測定方法として、身体機能セルフチェックやロコモ度テスト・フレイル(健常と要介護の中間の状態)チェックが例示されました。
【参考】厚生労働省 愛知労働局「THPに取り組みましょう」
トータルヘルスプロモーションプランの導入には、主に以下のようなメリットがあります。
それぞれのメリットについて解説します。
トータルヘルスプロモーションプランに取り組み従業員が心身ともに健康に労働できれば、意欲的に業務を遂行できるため職場の活性化につながります。
いきいきと仕事をする従業員が増えることで職場の雰囲気が明るくなり、コミュニケーションも活性化されるでしょう。
トータルヘルスプロモーションプランを導入し従業員が健康を維持できると、仕事に集中できるようになります。仕事に集中できると作業効率が上がり、仕事の生産性向上につながります。
その結果、企業の利益向上も見込めるでしょう。
トータルヘルスプロモーションプランを推進することで、メンタルヘルス不調の予防・改善が期待できます。
うつ病などのメンタルヘルスの不調は見た目では分かりにくく、周囲の人だけでなく本人自身もなかなか気がつかないことも少なくありません。
しかし、産業医などによるメンタルヘルスの指導ができれば、従業員がストレスを自覚するきっかけになり、メンタルヘルス不調を予防できます。
また、長時間座りっぱなしだと身体だけでなくメンタルにも悪影響をおよぼすことが分かっています。デスクワークが多い職種の場合は、仕事の合間に従業員に適度な休憩を取ってもらうことで、メンタルヘルス不調の予防が可能です。
【参考】文部科学省「テレワークで座位時間が増えた方向け」
従業員の健康維持の取り組みを積極的に実施していることが広まれば、企業のイメージアップにつながります。
企業のイメージが向上すれば求職者の応募増加が期待でき、優秀な人材を確保しやすくなります。
また、世間に対してよい企業イメージを与えられると企業の信頼性が高まり、資金調達しやすくなるのもメリットです。
トータルヘルスプロモーションプランを推進し、従業員が体調不良で病院に受診する頻度が減れば、企業が負担する医療費の削減につながります。
従業員が通院や入院が必要になれば、医療費だけでなく休業手当などの費用負担も発生してしまいます。そのため、トータルヘルスプロモーションプランを推奨して、従業員の健康維持に努めることが大切です。
トータルヘルスプロモーションプランの推進は、以下の手順で進めます。
適切に推進できるよう、具体的な推進の流れを解説します。
【参考】厚生労働省「職場における心とからだの 健康づくりのための手引き」
トータルヘルスプロモーションプランの推進にあたりまず取り組むべきことは、健康保持増進方針の表明です。
トータルヘルスプロモーションプランの効果を発揮し継続して実施していくには、事業者が健康保持増進方針を表明し従業員の健康意識を高めることが重要です。以下を従業員に表明しましょう。
トータルヘルスプロモーションプランを推進するためには、以下のような推進スタッフを選任し体制を確立する必要があります。
専門職のスタッフを確保できない場合は、外部委託をすることも可能です。
推進専門スタッフに意見を求めたり、従業員にアンケートをとったりして、従業員の現状の課題を把握しておかなければなりません。
課題の把握には、従業員の健康診断の結果など数値化されたデータの活用も役立ちます。従業員の健康状態を把握することで、効果的な措置をとりやすくなります。
健康保持増進で把握した課題を踏まえ、健康保持増進の具体的な数値目標を掲げます。目標を数値化することで、進捗状況の確認がしやすくなるためです。
健康保持増進対策は中長期的に進めなければ評価できない場合もあるので、短期的な目標だけでなく中長期的な目標も立てるのが望ましいです。
続いて、健康保持増進措置を決めます。取り組むべきことは、以下の4つです。
健康診断の血液検査の結果などから、食生活に問題があると判断された従業員に対し産業医が栄養指導します。従業員が取り組めそうな目標を考え、食生活の改善指導を行います。
健康診断結果や産業医の指導内容などをもとに、運動指導者が運動指導プログラムを作成し、運動指導を行います。
はじめはストレッチやウォーキングなど、日常的に無理なく取り組める運動を提案するのが望ましいです。
従業員の年齢や性別、体力なども考慮し個々に適した運動指導をすることが大切です。
メンタルヘルスの不調が疑われる従業員や、ストレスチェックで高ストレス判定だった従業員に対し、産業医などの指示のもとメンタルヘルスケアを行います。
具体的には、ストレス緩和のためのセルフケアや、リラックスするための方法などを指導する必要があります。
勤務形態や生活習慣などに起因する健康上の問題を改善するために、産業医などの保健指導担当者が保健指導をします。
健康診断結果や生活状況のアンケート調査結果などをもとに、睡眠、飲酒、喫煙などに関する改善策を提案し実践してもらいます。
トータルヘルスプロモーションプランは継続的に実施する必要があるため、健康保持増進計画書を作成しなければなりません。盛り込んでおくべき内容は、以下のとおりです。
健康保持増進計画を確実に実行するために、年に1回見直して策定するのが望ましいです。
健康保持増進措置で決定した内容を、適切かつ継続的に実施する必要があります。
健康保持増進対策への参加を促す伝達には、管理職を巻き込むことが重要です。管理職が関与しない状態では、職場全体に措置が届かない恐れがあります。
健康保持増進計画の実施後、取り組みの結果を評価して分析する必要があります。目標が達成できなかった場合、その原因を探り対策を検討しなければなりません。
評価ポイントには、以下のような要素が挙げられます。
取り組み結果を評価・分析することで追加・廃止すべき施策が把握でき、健康保持増進対策の効率化が図れます。
ここでは、トータルヘルスプロモーションプランを実施している企業事例を紹介します。自社で実施する取り組みを検討する上で参考にしてください。
タビオ株式会社は、靴下専門店を国内で約270店舗展開している企業です。人間関係などを理由とした休職者や離職者が多くなったことをきっかけに、トータルヘルスプロモーションプランの取り組み体制を整えました。
取り組みの内容は、本部と店舗従業員の全員面談の実施です。面談の実施により従業員の問題把握や改善につなげています。また、毎月メルマガを配信し従業員の心身ケアの意識を高める工夫もしています。
この事例のように、面談を通じて多くの従業員とコミュニケーションをとれば現状の課題を明確に把握できるため、効果的な対策がとりやすいでしょう。
【参考】中央労働災害防止協会「事例5 タビオ株式会社」
世界的に有名な大手自動車メーカーのトヨタ株式会社は、健康推進室が中心となってトータルヘルスプロモーションプランに取り組んでいます。
主な取り組みは、「健康チャレンジ8」です。健康チャレンジ8とは、以下8つの健康習慣改善に向けた取り組みです。
年に2回取り組み結果を評価し、各健康習慣改善別における施策の強みや弱点を明確化しています。また、必要に応じて産業保健スタッフの健康出前講話も実施しています。
この事例のように、対策項目を細かく分けて取り組めば、メタボや糖尿病など疾患の罹患率低下につなげられるでしょう。
【参考】中央労働災害防止協会「事例8 トヨタ自動車株式会社」
トータルヘルスプロモーションプランを導入することで、従業員の健康を維持できるだけでなく、仕事の生産性向上や企業のイメージアップなども見込めます。
トータルヘルスプロモーションプランは、決定した健康保持増進措置の結果を評価・分析・改善をしながら継続的に行っていくことで効果が期待できます。
従業員の健康増進を図るために、トータルヘルスプロモーションプランの導入を検討してみましょう。
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