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2024年に改正雇用保険法が成立しました。改正内容の多くは2025年から順次施行されます。
雇用保険の適用拡大や育児休業給付の改正は、企業の業務に大きな影響を与える可能性があります。そのため、改正内容を把握して準備を進める必要があるでしょう。
本記事では、雇用保険制度の改正内容や企業が実施すべき対応を解説します。
雇用保険制度を改正する目的には、主に以下の3つが挙げられます。
・多様な働き方を効果的に支える雇用のセーフティネットの構築
・人への投資の強化
・共働き、共育ての推進
近年、日本では少子高齢化により労働力人口が減少しています。働く意欲のある人へのキャリア形成支援や、育児と仕事の両立支援を通じて、雇用の安定化を図ることが求められます。
このような背景から、雇用保険制度の改正が必要になりました。2024年5月には「雇用保険法等の一部を改正する法律」、2024年6月には「子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律」が成立しています。
【参考】厚生労働省「雇用保険法等の一部を改正する法律等の概要」
2024年5月に成立した「雇用保険法等の一部を改正する法律」の、雇用保険制度にかかわる改正内容は以下の5つです。
・雇用保険の適用拡大
・自己都合離職者の給付制限の見直し
・教育訓練やリスキリング支援の充実
・育児休業給付に係る安定的な財政運営の確保
・その他雇用保険制度の見直し
それぞれについて解説します。
【参考】厚生労働省「雇用保険法等の一部を改正する法律(令和6年法律第26号)の概要」
雇用保険の被保険者要件である週所定労働時間を、20時間以上から10時間以上に変更し、適用対象を拡大しました。新規対象者は現行の被保険者と同様に、基本手当や教育訓練給付、育児休業給付などを受け取れます。
また、週所定労働時間の変更に伴い、被保険者期間の算定基準や失業認定基準も以下のように見直されました。
(出典:厚生労働省「雇用保険法等の一部を改正する法律(令和6年法律第26号)の概要」)
厚生労働省の資料によると、2023年時点で週間就業時間が10時間以上20時間未満の雇用者数は約506万人です。法改正により、雇用保険の対象者が大幅に増加することが予想されます。
労働者が安心して再就職活動を行えるようにする目的で、自己都合離職者の給付制限が見直されました。
現行法では、自己都合で離職した人が失業給付(基本手当)を受給する際の給付制限期間は、待期満了の翌日から原則2ヶ月間(5年以内に2回を超える場合は3ヶ月)です。
改正により、原則の給付制限期間が2ヶ月から1ヶ月(5年間で3回以上の自己都合離職の場合には3ヶ月)へ短縮されます。
また、離職期間中や離職1年以内に自ら教育訓練を行った場合には、給付制限が解除されます。
【出典】厚生労働省「雇用保険法等の一部を改正する法律(令和6年法律第26号)の概要」
労働者の主体的な能力開発やリスキリングを支援する目的で、教育訓練給付が拡充されました。リスキリングとは、新しい職業に就いたり仕事の変化に適応したりするために必要とされるスキルを身につけることです。
改正により、教育訓練給付金の給付率上限が受講費用の70%から80%に引き上げられました。専門実践教育訓練給付金(中長期的なキャリア形成を目的とした専門的・実践的な教育訓練講座を対象)では、教育訓練の受講後に賃金が上昇した場合に10%追加給付されます。
特定一般教育訓練給付金(速やかな再就職や早期のキャリア形成を目的とした教育訓練講座を対象)では、資格取得後に就職した場合に10%追加給付されます。
(出典:厚生労働省「雇用保険法等の一部を改正する法律(令和6年法律第26号)の概要」)
また、仕事を休みながらでも教育訓練に専念できるように、教育訓練休暇給付金が創設されました。教育訓練を受けるために休暇を取得した場合、基本手当に相当する給付として、賃金の一定割合が給付されます。
教育訓練休暇給付金の対象者や支給要件は、以下のとおりです。
【出典】厚生労働省「雇用保険法等の一部を改正する法律(令和6年法律第26号)の概要」
育児休業給付の支給額は年々増加しており、給付金の予算を確保するために国庫負担割合と保険料率が以下のように改正されました。
改正前 | 改正後 |
国庫負担割合:1/80 | 国庫負担割合:1/8 |
保険料率:0.4% | 保険料率:0.5%
※実際の料金は保険財政の状況に応じて弾力的に調整 |
国庫負担割合は1/8に、保険料率は0.5%に引き上げられました。ただし、保険料率は積立金残高(見込み)と翌年度の収入の合計額(見込み)が翌年度の支出額(見込み)の1.2倍を超える場合は、0.4%を維持できます。
日本では、2030年までに男性の育休取得率85%を目指しているため、今後も育児休業給付の支給額は増え続ける可能性があります。
【関連記事】
男性の育児休暇取得における企業メリット・デメリット
【2025年4月施行】改正育児・介護休業法の内容とは?企業が実施すべき対応を解説
雇用保険制度に関わる以下の暫定措置が、2年間延長されました。
・雇止めによる離職者の基本手当の給付日数に係る特例
・地域延長給付
・教育訓練支援給付金の給付率
・介護休業給付に係る国庫負担割合を1/80(本則:1/8)とする暫定措置
教育訓練支援給付金の給付率は、基本手当の80%から60%に変更したうえで延長されます。
他にも、就業手当と就業促進定着手当が見直されました。現行法では、1年以上の雇用見込みがある職業等に早期再就職した場合、基本手当日額の30%相当額の就業手当が支給されます。
また、早期再就職後の賃金が離職前よりも低下していた場合に、基本手当支給残日数の30~40%を上限として就業促進定着手当が支給されます。
改正後は就業手当が廃止になり、就業促進定着手当の上限が20%に引き下げられました。
2024年6月に成立した「子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律」の、雇用保険制度にかかわる改正内容は以下の3つです。
・出生後休業支援給付の創設
・育児時短就業給付の創設
・子ども・子育て支援特別会計(こども金庫)の創設
それぞれの改正内容について解説します。
【参考】厚生労働省「子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律(令和6年法律第47号)の概要」
育児休業給付の支給額を手取りの10割相当にするために、出生後休業支援給付が創設されました。
現行法では、育休開始から180日までは賃金の67%、180日経過後は50%の育児休暇給付が支給されます。
改正後は、以下の条件をすべて満たすと最大28日間、賃金の13%相当額が追加で支給されます。
・被保険者とその配偶者がともに、14日以上の育児休業を取得する
・子の出生直後の一定期間以内(男性は子の出生後8週間以内、女性は産後休業後8週間以内)に育児休業を取得する
出生後休業支援給付と育児休業給付をあわせた給付率は80%になり、これは手取りの10割相当です。配偶者が専業主婦(夫)の場合やひとり親家庭の場合には、配偶者の育児休業がなくても給付率が80%になります。
【出典】厚生労働省「子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律(令和6年法律第47号)の概要」
「共働き・共育て」の推進や、育児とキャリア形成の両立支援を目的とした育児時短就業給付が創設されました。
2024年時点では、育児のために短時間勤務制度を選択した労働者の賃金低下に対する給付制度はありませんでした。
改正後は、2歳未満の子どもを育てるために時短勤務をしている場合、時短勤務中に支払われた賃金額の10%が支給されます。
子ども・子育て政策の全体像と費用負担の見える化を進めるために、子ども・子育て支援特別会計が創設されました。
この特別会計は、年金特別会計の子ども・子育て支援勘定と、労働保険特別会計の雇用勘定(育児休業給付関係)が統合したものです。一般会計と区分することで、子ども・子育て政策に関しての予算が管理しやすくなります。
雇用保険制度の改正内容の施行日は、以下のとおりです。
改正内容 | 施行日 |
育児休業給付に係る安定的な財政運営の確保 | 国庫負担割合:2024年5月17日
保険料率:2025年4月1日 |
教育訓練やリスキリング支援の充実 | 教育訓練給付金の給付率の引き上げ:2024年10月1日
教育訓練休暇給付金:2025年10月1日 |
自己都合離職者の給付制限の見直し | 2025年4月1日 |
その他雇用保険制度の見直し | 2025年4月1日
※介護休業給付の暫定措置は2024年4月1日 |
出生後休業支援給付の創設 | 2025年4月1日 |
育児時短就業給付の創設 | 2025年4月1日 |
子ども・子育て支援特別会計(こども金庫)の創設 | 2025年4月1日 |
雇用保険の適用拡大 | 2028年10月1日 |
雇用保険制度を改正する法律の多くは、2025年4月1日から施行されます。中でも、出生後休業支援給付や育児時短就業給付の創設は、企業の育休制度に影響を与えます。
また、2028年10月1日から施行される雇用保険の適用拡大により業務量が増加すると予想されるため、企業は準備を進める必要があるでしょう。
【参考】厚生労働省「雇用保険法等の一部を改正する法律等の概要」
雇用保険制度の改正に伴い、企業が実施すべき対応は以下の2つです。
・雇用保険の新規対象者を把握する
・制度の変更点を従業員に周知する
それぞれの内容について説明します。
雇用保険の適用拡大により、社内で雇用保険の加入が想定される新規対象者を事前に把握しましょう。
2024年10月の社会保険の適用拡大では、従業員が51人以上の事業所が新たに適用対象となりました。それに対し雇用保険の適用拡大は、原則として従業員数に関係なく対応しなくてはなりません。
施行日までは一定期間ありますが、雇用保険にかかわる事務処理の増加が予測されます。施行日前後で業務が滞らないよう、従業員の労働時間の調査や雇用契約書の見直しなどの対応が必要です。
【関連記事】社会保険適用拡大に向けて対応すべきことは?加入対象となる要件も解説
雇用保険制度の変更点を周知し、従業員と認識の相違が起きないようにしましょう。
新たに雇用保険の加入対象者になる従業員には、失業給付や育児休業給付、介護休業給付が受けられることや、保険料負担が発生することなどを伝える必要があります。
また、従業員から育児休業にかかわる申し出があった場合には、育児休業給付に加えて出産後休業支援給付も受けられるようサポートしましょう。
【関連記事】従業員から産休・育休の申し出があったらどうする?
雇用保険制度の改正内容は、出生後休業支援給付の創設やリスキリング支援の充実など多岐にわたります。多様な働き方を支え、共働き・共育てを推進するために今回の改正が行われました。
雇用保険の対象者が増加するため、事業者は新規対象者を把握して業務を見直す必要があります。また、従業員に改正内容を周知し、手続きのサポートをすることが求められます。
業務を円滑に進めるために、雇用保険制度の改正点を理解して体制を整えましょう。
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