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健康経営オフィスとは?メリットや取り組み手順、企業事例を紹介

健康経営オフィスとは、従業員が自発的に健康の保持・増進の行動をとる環境が整った場のことです。近年は、従業員の健康管理を経営的な視点で考え戦略的に実施する健康経営が推進されており、この流れから健康経営オフィスは注目されつつあります。

健康経営オフィスを実現するためには、取り組みの手順を理解しておくことが大切です。

本記事では、健康経営オフィスを実現するメリットや取り組み手順、企業事例を紹介します。

健康経営オフィスとは

健康経営オフィスとは、従業員が健康を保持・増進する行動をとるように誘発させる要素を取り入れた場のことです。

健康を保持・増進する行動を誘発させることで、心身の調和や活力向上を図れるため、パフォーマンスを発揮しやすくなるオフィス環境の実現につながります。

健康経営オフィスを実現するには、設備の充実や見直しなど、組織全体で従業員の健康の保持・増進を促すための施策が必要です。

【参考】経済産業省「健康経営オフィスレポート」

【関連記事】健康経営とは?企業が取り入れるメリットや取り組み方法・必要性を徹底解説

健康経営オフィスを実現するメリット

健康経営オフィスを実現するメリットには、以下の3つが挙げられます。

  • プレゼンティーズムとアブセンティーズムを解消できる
  • 従業員の労災保険料を抑えられる
  • 企業のブランディングに役立つ

それぞれの内容について詳しく解説します。

プレゼンティーズムとアブセンティーズムを解消できる

健康経営オフィスは、プレゼンティーズムとアブセンティーズムの解消に効果的です。

プレゼンティーズムおよびアブセンティーズムとは、以下のような従業員の健康状態を指します。

プレゼンティーズム 心身の不調や疾病が原因で就業時のパフォーマンスが低下している状態
アブセンティーズム 欠勤や休職など、心身の不調や疾病により業務そのものが行えない状態

健康経営オフィスを実現し、従業員が健康の保持・増進の行動をとるようになることで、以下の心身の不調の健康増進効果が期待できると報告されています。

  • 運動器・感覚器障害(眼精疲労、肩こり、頭痛、腰痛など)
  • メンタルヘルス不調
  • 心身の障害(ストレス性の内科的疾患)
  • 生活習慣病
  • 感染症やアレルギー

(参考:経済産業省「健康経営オフィスレポート」

結果的に、プレゼンティーズムとアブセンティーズムの解消につながります。

また、プレゼンティーズムとアブセンティーズムが解消されれば、企業全体の生産性向上も期待できます

【関連記事】プレゼンティズム、アブセンティズムとは?違いや原因、改善方法を解説

従業員の労災保険料を抑えられる

健康経営オフィスを実現すると、従業員の労災保険料を抑えられます。

従業員の健康を意識していないオフィスでは、疾病やメンタルヘルス不調のリスクが高まり労働災害が起こりかねません。従業員の疾病やメンタルヘルス不調が労災と認められ、労災発生率が上がった場合は、労災保険のメリット制により労災保険料率が引き上げられる可能性があります。

健康経営オフィスを実現すれば労災の発生を抑制でき、労災保険料率の軽減が期待できます

【関連記事】社労士監修】労災とは?人事労務担当者が知っておくべき基礎知識と対応方法

企業のブランディングに役立つ

健康経営オフィスは、企業のブランディングにも有効です。従業員の健康の保持・増進に努めている企業として社外にアピールすれば他社との差別化が図れ、採用活動で有利に働きます

また、健康経営を行っている企業として認知されれば、ステークホルダーから高い評価を得られることが期待できます

健康経営オフィスの実現のために従業員に促したい行動

健康経営オフィスを実現するためには、従業員に以下のような行動・意識を誘発させることが大切です。

  • 快適性を感じる
  • コミュニケ―ションをとる
  • 休憩・気分転換をする
  • 体を動かす
  • 適切な食行動をとる
  • 清潔にする
  • 健康意識を高める

経済産業省の「健康経営オフィスレポート」を参考に、それぞれの内容を解説します。

【参考】経済産業省健康経営オフィスレポート」

快適性を感じる

健康経営オフィスを実現するには、従業員が快適性を感じられる環境に整えることが大切です。以下のような行動・感覚を誘発させる環境をつくりましょう。

  • 姿勢を正しくする
  • 触感を快適と感じる
  • 光を快適と感じる
  • 音を快適と感じる
  • 香りを快適と感じる
  • パーソナルスペースを快適と感じる

快適性を向上させることで、運動器や感覚器の障害、メンタルヘルス不調、ストレス性の内科的疾患の予防・改善効果が期待できます

コミュニケ―ションをとる

従業員が心身ともに健康で働きやすいオフィスにするには、コミュニケーションをとりやすい環境整備が必要です。コミュニケーションが生まれやすい環境・制度をつくり、以下のような行動を従業員に促すことが望まれます。

  • 気兼ねなく話す
  • 挨拶する
  • 笑う
  • 感謝する・感謝される
  • 同僚の業務内容や会社の目標などを理解する
  • 共同作業をする

コミュニケーションの充実は、メンタルヘルスの不調やストレス性の内科的疾患の予防・改善につながります

休憩・気分転換をする

健康経営オフィスの実現には、従業員が休憩や気分転換を適切にできる環境整備も求められます。以下のような行動を促進する設備やサービスを提供しましょう。

  • 飲食する
  • 雑談する
  • 新聞・インターネットを閲覧する
  • 音楽を楽しむ
  • 身の回りの整理整頓をする
  • 仮眠する・体を休める
  • 昼休みを十分にとる

一例として、自由に使えるリラクゼーションルームやカフェを設け、従業員が休憩や飲食をできるようにするなどの方法があります。

従業員が気軽に休憩・気分転換ができる環境をつくることで、運動器や感覚器障害、メンタルヘルス不調、ストレス性の内科的疾患の予防につながります

体を動かす

健康経営オフィスを実現させるには、従業員がオフィス内で体を動かせる環境づくりも必要です。運動できるスペースや設備を設けるなどをして、従業員に以下のような行動を促しましょう。

  • 座位行動を減らす
  • 歩く
  • 階段を使う
  • ストレッチや体操をする

たとえば、立ったまま業務ができるデスクの設置や、オフィスの椅子をバランスボールにするなどの取り組みを行うのもよいでしょう。

従業員が自主的に体を動かすようになれば、肩こりや腰痛、生活習慣病の予防・改善が期待できます

適切な食行動をとる

従業員の健康を保持・増進するためには、従業員が適切な食行動をとれるようにすることも大切です。

食堂やカフェなどを運営する際は、単なる食事の提供ではなく、健康や栄養に配慮したメニューにするなどの工夫を施すことがポイントです。従業員の適切な食行動を促進すれば、生活習慣病の予防・改善が期待できます。

清潔にする

従業員の健康を保持するために、オフィスと従業員が清潔な状態を保てる環境を整備しましょう。清潔な状態を保てる環境の整備により、手洗いやうがい、身の回りの掃除などの行動を誘発させることが重要です。

施策の具体例としては、手洗いやうがいの啓発ポスターの掲示が挙げられます。従業員が自ら身体や職場環境を清潔にすることで、感染症やアレルギーの発生防止につながります

健康意識を高める

従業員の健康の保持・増進を図るには、従業員自身が健康について高い意識をもつことが不可欠です。そのため、従業員の健康意識が高まるオフィス環境をつくる必要があります。

たとえば、社内掲示板に健康情報を掲示したり、血圧や体脂肪率が測れる健康ブースを設置したりするなどの施策を実施するとよいでしょう。従業員が自発的に健康情報を閲覧したり、自身の健康状態をチェックしたりするなどの行動の変容を促すことが大切です。

従業員自らが健康意識を高めることで、幅広い健康問題の予防・改善につながります。

健康経営オフィスを実現するための取り組み手順

健康経営オフィスを実現するための取り組み手順は、以下の6ステップです。

  1. 健康経営オフィスの実現を宣言する
  2. 実現のためのチームを編制する
  3. 課題を洗い出し目標を設定する
  4. 施策を検討する
  5. 施策を実行する
  6. 評価・改善する

取り組みを適切に進めるために、それぞれの手順について把握しておきましょう。

1.健康経営オフィスの実現を宣言する

まずは、健康経営オフィスの実現に向けて取り組みを始めることを宣言します。企業全体に周知すれば、健康経営オフィスの実現を全社的な経営課題として従業員に認識してもらえるため、施策を効率的に実施できます

【関連記事】健康経営優良法人制度とは?認定されるメリットや申請方法を解説

2.実現のためのチームを編成する

健康経営オフィスを実現するためのチームを編成しましょう。チーム編成の際は、さまざまな視点の意見を反映できるよう、人事労務部以外にも総務部や管理職、衛生管理者など部署・役職を横断して人材を集めることが大切です。

また、産業医を選任している企業の場合は、必要に応じて産業医に協力を仰ぐのもよいでしょう。

産業医は定期的な職場巡視により、職場環境や従業員の状況を把握しています。そのため、健康経営オフィス実現のために必要な取り組みなどに関してアドバイスしてくれるでしょう。

【関連記事】
【総まとめ】産業医とは?医師との違い・企業での役割・業務内容を解説
衛生管理者とは?選任義務や具体的な仕事内容を解説

3.課題を洗い出し目標を設定する

自社の健康経営上の課題を洗い出し、目標を設定します。課題の把握には、経済産業省の健康経営オフィスレポートに掲載されている「簡易チェックシート」を活用するとよいでしょう。

目標を設定する際は、スモールステップで達成していけるよう細分化し、達成の基準が分かる具体的な数値を決めることがポイントです。

【参考】経済産業省健康経営オフィスレポート」

4.施策を検討する

設定した目標を達成するための施策を検討します。新たな設備の導入が必要な場合はコストがかかるため、自社の財務状況も踏まえて実現できる施策を立案しましょう

実施する優先度や期間、評価方法なども決めて具体的な計画を立てます。

5.施策を実行する

作成した計画に沿って施策を実行します。施策を実行する際は、社内に周知したり運営チームを中心に従業員へ設備の利用を奨励したりすると、従業員の積極的な行動を促せます

6.評価・改善する

施策の実施後は、アンケートなどにより従業員から施策に対するフィードバックを集め、施策の結果を分析・評価します。効果が思うように得られない施策があった場合は、目標や計画を見なおし改善策を検討しましょう

健康経営オフィスを実現した企業の取り組み事例

ここからは、健康経営オフィスを実現した企業の取り組み事例を紹介します。

【参考】経済産業省健康経営オフィスレポート」

快適性の実感・適切な食行動誘発を促進|株式会社パソナグループ

人材派遣事業を展開する株式会社パソナグループは、「自然との共生」を重視している企業です。同社では野菜やハーブ、花の自社栽培に取り組んでいます。

オフィス内に花やハーブを植えて従業員が直接植物に触れ、育てられるようにすることで、ストレスを緩和しリラックスできるオフィス環境を実現し、従業員が快適性を感じられる場を提供しています。社内で育てた野菜は従業員食堂で提供し、従業員の食生活改善に役立てることで、適切な食行動を促進しています。

コミュニケーションの充実・清潔保持の行動誘発を促進|株式会社ダスキン

清掃事業や外食産業を展開する株式会社ダスキンは、オフィス最上階に取引先との打ち合わせや従業員の交流ができるカフェスペースを設置しています。カフェスペースの設置により、従業員同士がコミュニケーションを活発にとれるようになりました

また、トイレにうがいや手洗い、歯磨きの啓発ポスターを掲示したり、トイレタリーを充実させたりするなど、清潔保持の行動を誘発する取り組みも実施しています。

快適性の実感・健康意識向上の行動誘発を促進|SCSK株式会社

ITサービスを提供するSCSK株式会社では、従業員の快適性や健康意識を高めるためにオフィス環境を整備しています。従業員のデスクスペースを通常よりも1.5倍広くし、快適な業務環境を提供した結果、作業効率や従業員満足度が向上しました。

また、オフィス内に社内クリニックを設置し、気軽に受診・健康チェックができる環境を整備しています。その結果、従業員の健康状態の悪化防止や健康意識の向上につながりました。

健康経営オフィスを実現して従業員の健康の保持・増進を図ろう

健康経営オフィスは、健康経営を実現するうえで欠かせない施策の一つです。オフィス環境を整備し、従業員の健康的な働き方や行動を促進すれば、プレゼンティーズム・アブセンティーズムの解消や労災保険料の削減などが期待できます。

従業員が十分なパフォーマンスを発揮した状態で働けるよう、健康経営オフィスを実現して従業員の健康の保持・増進を図りましょう。

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