近年、長時間労働やメンタルヘルスへの取り組みが注目を集めており、労働衛生管理も重視されるようになってきました。
しかし「労働衛生管理に取り組みたいけど、何をすればいいか分からない」と悩んでいる人事労務の担当者もいるのではないでしょうか。
労働衛生管理を適切に行うには、職場での安全と健康を確保するための基本である「労働衛生の3管理」を理解しておくことが重要です。この記事では、労働衛生の3管理の具体的な取り組みや、労働衛生の3管理に取り組むメリットについて解説します。
労働衛生の3管理とは、以下の3つのことです。
労働衛生の3管理に労働衛生教育と総括管理の2つを追加して、労働衛生の5管理とする場合もあります。
労働衛生の3管理は、業務中の事故を未然に防ぎ、従業員が健康を維持して安全に働けるようにするために行います。
【参考】厚生労働省ト「職場のあんぜんサイト 労働衛生の3管理」
作業環境管理とは、作業するスペースの有害因子のレベルを確認して、従業員ができる限り快適に働けるように作業環境を整えることです。
有害因子の例は以下のとおりです。
作業環境中の有害因子の状態を把握するために、有害な業務をする屋内作業場では、定期的に作業環境測定をしなくてはなりません。
【参考】日本作業環境測定協会「作業環境測定の基礎知識」
作業管理とは、事業場を汚染しない作業方法や、有害因子にさらされるのを軽減するための作業方法などを定めて、従業員の作業負荷を減らすことです。
作業環境管理と異なる点は、「何に焦点を当てて施策をするか」です。作業環境管理は「作業をする空間」に焦点を当てていますが、作業管理は「作業そのもの」に焦点を当てて施策を行います。
従業員が有害因子にさらされるのを防ぐために、防護服の着用や作業マニュアルを定め、定期的に作業現場を巡視してマニュアルが適切に運用されているか確認します。
健康管理とは、健康診断を実施して従業員の健康状態を把握することです。異常の早期発見や病気の進行・増悪の防止、健康状態を回復させるために必要な医学的および労務管理的な措置が求められます。
近年はうつ病などの精神障害の労災請求および認定件数が増加傾向にあるため、身体的な健康だけでなく、メンタルヘルスのケアも重視されています。
【参考】厚生労働省「令和4年度「過労死等の労災補償状況」を公表します」
【関連記事】
健康診断は企業の義務！ 会社で実施される健康診断の種類、対象者などを解説
特殊健康診断とは？有害業務に従事する社員を守る大事なポイントは？
職場のメンタルヘルスケアとは？ 企業が知っておくべき対策を徹底解説
労働衛生教育とは、労働災害や職業性疾病の防止を目的として、従業員に安全衛生に関する教育をすることです。
労働災害や職業性疾病への対策には、設備や作業環境の整備などの物的な対策と、労働者への教育や作業マニュアルの整備などの人的な対策があります。労働衛生教育は人的な対策の一つです。
労働災害や職業性疾病を防止するためには、従業員が技能や知識を身につけ、業務における危険な点を理解して安全に配慮しながら業務に当たらなければなりません。
労働衛生教育では、有害な原材料の取り扱い方法や作業マニュアル、保護具や安全装置の使用方法などについて教育します。
総括管理は、ここまで解説してきた作業環境管理、作業管理、健康管理、労働衛生教育が適切に実施されるように体制を整えることです。
衛生委員会の運営や職場巡視、労働衛生に関する計画の策定などが含まれます。
労働衛生の3管理の具体的な取り組みの例を紹介します。自社の労働衛生管理の参考にして、従業員が健康を維持しながら安全に働ける環境を整えましょう。
労働安全衛生法第71条の3第1項の規定には、以下の5つについて事業者が快適な職場環境形成のため措置を講じなければならないと定められています。
（出典：厚生労働省「事業者が講ずべき快適な職場環境の形成のための措置に関する指針」）
作業環境管理では、以下の5要素について定時・定点観測して、問題点があった場合は改善策を検討して実施します。
| 要素 | 具体的な取り組み例 |
| 空気 | オフィス内の分煙、におい対策 |
| 温度・湿度 | 屋外作業での暑さ対策 |
| 明るさ | 季節や時間帯に合わせた照度の調整 |
| 広さ | 適切な人口密度の確保、通路の確保 |
| 音 | 騒音対策 |
なお、テレワークを導入している企業では、社外でも社内と同様に作業環境の改善に取り組まなければなりません。
作業管理の取り組みには、以下の施策が挙げられます。
作業の効率化の取り組みには、マニュアルの整備やデジタル化ツールの導入などが考えられます。マニュアルやデジタル化ツールの導入後は、定期的に適切な運用ができているかを確認しましょう。
長時間労働は集中力の欠如や作業効率の低下、事故や怪我のリスクを引き起こします。適切な労働時間を守れるように仕事量を調整したり、休憩時間を設けたりしなければなりません。
作業管理では、労働による身体的負荷を軽減するための取り組みも実施します。たとえば同じ姿勢が長時間続く事務作業の場合であれば、正しい姿勢で作業できるオフィス家具を導入するなどが考えられます。
健康管理では、従業員の疲労とストレスのケアを目的とした取り組みを実施します。具体的には、ゆったりと過ごせる休憩スペースを確保する、従業員が体調やメンタル面での不安ついて気軽に相談できる窓口を設置するなどです。
また、運動は健康維持・促進に役立ちます。従業員が運動するための場所を確保したり、体操の時間を設けて従業員に運動習慣をつけさせたりすることも、健康管理の取り組みに該当します。
労働衛生の3管理の取り組みには、労働災害の防止以外に以下のようなメリットもあります。
それぞれのメリットについて解説します。
労働衛生管理をしっかりと行い、従業員にとって働きやすい環境を整えれば人材の流出を防げます。また、従業員の作業効率やモチベーションがアップし、業績の向上にもつながります。
労働衛生管理をきちんと行うことで、企業イメージの低下も防げます。
過労死や長時間労働、労働中の事故などがあると、いわゆるブラック企業というイメージがついてしまいます。企業イメージを低下させないためには、作業環境の整備や個人の業務量の適正化をして、労災や長時間労働の防止に努めることが大切です。
従業員が健康を維持して安全に働けるようにするためには、労働衛生の3管理が欠かせません。
また、労働衛生の3管理を継続していくためには、従業員への安全衛生教育の実施や管理体制の整備も大切です。
労働衛生の3管理は労働中の事故を未然に防ぐだけでなく、離職率や企業イメージ低下の防止にもつながります。労働衛生の3管理を実施して、従業員が快適に働ける環境を整えましょう。
エムスリーキャリアが提供する専属・嘱託・スポット、すべての「産業医サービス」について分かりやすく１冊にまとめたサービス紹介パンフレットです。 お悩み別にオススメの産業医サービスがひと目でわかります。
50人以上の事業場向け
1,000人以上の事業場向け
※有害業務従事の場合は500人以上
単発の面談が必要な事業場向け
エムスリーキャリアが提供する産業医紹介サービスについて分かりやすく1冊にまとめたパンフレットです。
従業員規模やお悩み別におすすめの産業医サービスがひと目でわかります。
サービスに関するご質問や相談等がございましたら、ご遠慮なくお気軽にお問い合わせください。
お問い合わせ
人事労務担当者が抑えておくべき産業保健に関するノウハウや、産業医紹介サービスの概要資料を無料でご覧いただけます。
ダウンロードはこちら
20分でわかる！M3Careerの産業医サービスオンライン説明会
日時 平日2回（10:00〜/14:00〜）
