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ワークエンゲージメントとは、仕事に対して活力、熱意、没頭が充分にある心理状態のことです。従業員のメンタル面での健康度を客観的に評価できる指標として用いられています。
従業員のワークエンゲージメントが高まり、仕事に対して前向きな心理状態で取り組めるようになれば、生産性の向上や離職率の低下などが期待できます。
しかし、具体的にどのような取り組みをすれば、従業員のワークエンゲージメントを高められるのか分からないという人事労務担当者の方もいるでしょう。
この記事では、ワークエンゲージメントの尺度や測定方法、ワークエンゲージメントを向上させるための取り組みについて解説します。
ワークエンゲージメントとは、仕事に対して意欲的で満たされた心理状態のことです。ワークエンゲージメントを構成する3つの要素は、下表のとおりです。
構成要素 | 内容 |
活力 | ・仕事に取り組むエネルギーが高く、心理的な回復力があり、難しい課題にも積極的に取り組める状態
・活力が充実しているとストレスを感じにくく、楽しみながら仕事に取り組める |
熱意 | ・仕事に強い関心やプライドをもっており、新しいことに挑戦しようとする意欲がある状態
・仕事に対する興味関心が強くなるため、新しいサービスを発案したり、キャリアアップのために努力したりできる |
没頭 | ・仕事にのめり込み、幸福感や時間が早く経つ感覚をもっている状態
・業務の品質や作業スピードの向上につながる |
ワークエンゲージメントは、個人と仕事の関係性を表す概念です。現状を数値で評価できる複数の尺度があるため、「働きがい」を客観的に評価するための指標として注目されています。
【参考】厚生労働省「ワーク・エンゲイジメントに着目した「働きがい」をめぐる現状について」
ワークエンゲージメントの尺度として、「ユトレヒト・ワーク・エンゲイジメント尺度(UWES)」がよく使われています。
ユトレヒト・ワーク・エンゲイジメント尺度の特徴は、ワークエンゲージメントを直接的に測定できることです。「活力」「熱意」「没頭」の3つの要素を盛り込んだ17の質問に回答し、ワークエンゲージメントの高さを測定します。
ユトレヒト・ワーク・エンゲイジメント尺度には、日本人向けに開発された日本版や質問数を絞った短縮版もあります。
【参考】厚生労働省「「働きがい」をもって働くことのできる環境の実現に向けて」
ワークエンゲージメントを直接測定するのではなく、対概念であるバーンアウトを測定することで間接的に測定する方法もあります。
バーンアウトとは、仕事に対してエネルギーを費やしたにもかかわらず、期待する結果が得られずに仕事に対する意欲や熱意を失った状態のことです。
バーンアウトの測定方法には、MBI-GS(Maslach Burnout Inventory-General Survey)とOLBI(Oldenburg Burnout Inventory)の2種類があります。
測定方法 | 特徴 |
MBI-GS | 以下の3つの尺度について、16項目の質問に回答して測定する
・消耗感(疲労感) ・冷笑的態度(シニシズム) ・職務効力感 |
OLBI | ・「疲弊」「離脱」のネガティブな2つの因子についての質問に回答して測定する
・「疲弊」が高いほどエネルギーを消耗していると評価できる ・「離脱」が高いほど仕事に対する関心が低くなっていると評価できる |
【参考】
厚生労働省「長時間労働の医師への 健康確保措置に関するマニュアル」
大阪市立大学「the Oldenburg Burnout Inventory−German version邦訳の信頼性と妥当性の検討」
ワークエンゲージメントを高める要素は以下の2つです。
これらの資源が多いほど、ワークエンゲージメントは向上します。また、この2つの要素は互いに影響をおよぼし合い、どちらか一方が増えればもう片方も増えるのが特徴です。
【参考】厚生労働省「第2-(3)-8 図仕事の要求度-資源モデル(JD-Rモデル)とワーク・エンゲイジメントについて」
仕事の資源とは、外部から与えられる刺激のことで、仕事に対するモチベーションを高める要因になるものです。具体的には以下などがあります。
仕事の負担が大きすぎるとエネルギーを維持するのが難しく、仕事の裁量権がなければ自己効力感の低下につながります。
ワークエンゲージメントを向上させるためには、上司や同僚のサポートを得ながら、無理なくやりがいをもって働けることが大切です。
個人の資源とは、仕事に対して前向きな心理状態を生み出す内的要因のことです。具体的には、以下などが挙げられます。
心理的ストレスやモチベーションの高さ、仕事に対する自信などによって、仕事に対する気持ちや取り組み方が変わってきます。
【関連記事】ストレスから立ち直る強さ!レジリエンスとは?
従業員のワークエンゲージメント向上により得られるメリットは、以下のとおりです。
それぞれについて詳しく解説します。
ワークエンゲージメントが高い従業員は、「最新技術を学びたい」「スキルを身につけたい」といった気持ちから、自己啓発学習への意欲が高くなる傾向にあります。
また、組織全体に対してポジティブな感情を抱きやすくなり、企業に貢献したいという気持ちも高まります。
従業員が積極的にスキルアップに取り組んだり、企業に貢献しようとしたりすることで企業の業績や生産性は向上するでしょう。
ワークエンゲージメントが高いと、業務に対してストレスを感じにくくなり、メンタルヘルスの向上につながります。
従業員50人以上の企業にストレスチェックの実施が義務付けられていることもあり、近年、メンタルヘルス対策としてストレスチェックを実施する企業が増えています。
ストレスチェックはメンタルヘルスの不調を早期に発見し、ケアしていくことを目的としており、ストレスの発生そのものを防ぐ効果は期待できません。
しかし、ワークエンゲージメントを向上させることで、ストレスの発生そのものを予防できます。
【関連記事】
義務化されたストレスチェックは正しく実施しよう!制度や方法を紹介
コーピングとは?意味や種類、ストレス緩和につながるやり方を紹介
ワークエンゲージメントが高い従業員がやりがいをもって生き生きと働く姿や、熱意をもって自社の商品を説明する姿は、顧客にポジティブな印象を与えます。
従業員が積極的に仕事に取り組むことで、より質の高い商品やサービスを提供できるようになり、顧客満足度の向上が期待できます。
ワークエンゲージメントが高い従業員は、仕事にやりがいを感じており、職務や企業への満足度も高い傾向にあります。仕事へのやりがいや企業への愛着心があれば、「この企業で働き続けたい」と考える従業員も増えるでしょう。
労働政策研究・研修機構の調査により、従業員のワークエンゲージメントスコアが高いほど新入社員の定着率(入社3年後)や、従業員の離職率が低下することが示されています。
離職率が低下すれば、優秀な人材の流出を防いだり、新規採用や教育にかかるコストを抑えたりできます。
【参考】厚生労働省「第2-(3)-10図 ワーク・エンゲイジメントと定着率・離職率について」
従業員がやりがいをもって意欲的に業務に取り組むためには、ワークエンゲージメントの向上が重要です。ワークエンゲージメントを向上させるために、正当に評価する仕組みやコミュニケーションをとりやすい環境を整えましょう。
ワークエンゲージメントを向上させるためには、従業員の頑張りを正当に評価する必要があります。企業には、従業員の成果として報酬や待遇を上げる仕組みを整えることが求められます。
努力が報酬や待遇に結びつかなければ、仕事に対するモチベーション維持が難しくなり、従業員は無気力状態になってしまい、離職する可能性も高まります。
また、従業員それぞれが自分の強みを発揮しやすいように人員を配置することも大切です。従業員がこれまで培ってきたスキルや技術を活かすためには、一人ひとりの強みを正確に把握し、適材適所の人員配置を心がけましょう。
ワークエンゲージメントの向上には、コミュニケーションがとりやすい環境づくりも欠かせません。従業員同士の関係性が良好であれば、仕事で困ったことがあったときに相談しやすくなり、お互いに助け合いながら仕事を進められます。
従業員が気軽に利用できる休憩スペースを作ったり、1 on 1のような上司との定期的な面談時間を設けたりして、従業員同士がコミュニケーションを取りやすい環境に整えましょう。
また、社内コミュニケーションツールを取り入れるのもおすすめです。業務の進捗状況を確認し合ったり、従業員同士で相談したりしやすくなるため、生産性やワークエンゲージメントの向上につながります。
ここでは、ワークエンゲージメントの向上に成功した2社の事例を紹介します。
創業100年を越える金物製造卸売業の老舗企業である株式会社福井では、2018年よりワークエンゲージメントの測定システムを導入しています。月1回、全従業員を対象としてワークエンゲージメントの測定を行い、その結果を管理職や経営陣の間で共有しています。
具体的な取り組みは、定期的なワークエンゲージメントの測定により、スコアの変動から組織が抱えている問題を把握し、その改善策についての話し合いにつなげている点です。
また、ワークエンゲージメントを高めるために、コミュニケーションを増やす目的で1on1を多く実施したり、管理職に権限を移譲して裁量性を向上させたりしています。
このような取り組みにより、2018年には数年ぶりに離職者が0人になりました。
コミュニケーションがとりやすくなったことや、裁量性の向上により仕事にやりがいを感じる従業員が増えたことが離職率の低下につながったと考えられます。
法人向けクラウド名刺管理サービスや個人向け名刺アプリの事業を展開するSanSan株式会社では、定期的に全社員を対象としてワークエンゲージメントの測定を実施し、平均7名程度のチームごとに測定結果を把握しています。
現場のチームの責任者は、ワークエンゲージメントスコアをもとに自分のチームの状態を把握して、そのモチベーションをあげる方法を検討します。
同社では、ワークエンゲージメントの測定を開始したのをきっかけに、チャージ休暇制度を導入しました。チャージ休暇制度とは、日々の業務で蓄積した疲れを回復させ、エネルギーをチャージするために、7~9月の間に連続した3日間の休暇を取得できる制度です。
チャージ休暇の取得率は9割を超えており、チャージ休暇取得期間後の8月〜10月におけるワークエンゲージメントスコアは1~2%上昇しました。
休暇により疲労が回復されたことや、休暇を取得するためにチーム内でお互いに協力する体制が整えられたことが影響していると考えられます。
【参考】厚生労働省「働きがいを持って働くことのできる環境の実現に向けて」
ワークエンゲージメントを測定することで、従業員の「働きがい」を客観的にとらえられます。
ワークエンゲージメントは、仕事量や裁量権などの仕事に対する意欲を高める外的要因と、自己効力感やレジリエンスなどの内的要因によって高めることが可能です。従業員一人ひとりのワークエンゲージメントが高まれば、生産性の向上や離職率の低下につながります。
ワークエンゲージメントを向上させるためには、良好なコミュニケーションをとりやすい環境を整えたり、頑張りが適切に評価される仕組みを整えたりすることが大切です。従業員が働きがいをもって意欲的に働ける環境づくりに取り組みましょう。
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