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CHO(健康管理最高責任者)とは?必要性や設置時のポイントを解説

CHO(健康管理最高責任者)は従業員の健康管理を統括する役職であり、健康経営の推進に重要な役割を果たします。

しかし「自社に必要かどうか分からない」「どう設置したらよいのか知りたい」など疑問をもつ企業担当者の方も多いのではないでしょうか。

本記事では、CHOの概要や設置の必要性、設置時のポイントについて解説します。CHOを設置して自社の健康経営を大きく推進していきましょう。

CHOとは

CHOとは「Chief Health Officer」の略であり、健康管理最高責任者や最高健康責任者と呼ばれます。

経営に携わる役員の中で、従業員の健康増進や社内の健康管理の取り組みを統括する立場です。

CHOは従業員の健康維持・増進のために、経営的な視点から健康経営に関する取り組みを考え、健康マネジメントを行います。健康経営を戦略的に実行し、推進することで企業価値の向上に貢献する役職です。

CHOが担う役割

CHOの主な役割は、以下などが挙げられます。

  • 健康の観点から経営戦略をサポート
  • 従業員の健康課題の把握・対策の立案・実行
  • コンプライアンスの確保
  • 健康被害への対応
  • 自社の健康に関する取り組みを発信

どのような役割なのか、それぞれ解説します。

健康の観点から経営戦略をサポート

CHOは、従業員の健康管理を統括する立場として企業の経営に参画し、経営戦略をサポートします。

 健康経営の専門的な知識を活かして、健康投資の重要性や健康経営戦略の具体的な施策などを経営層に提言し経営戦略の実現をサポートします。

従業員の健康課題の把握・対策の立案・実行

従業員の健康課題を把握し、課題解決のための対策を経営層に対して提言し、実行するのもCHOの役割です。

たとえば、メンタルヘルスケアや禁煙支援などの健康増進の施策を立案し、取り組みの実施を監督します。

健康課題解決に向けた施策に対するPDCAサイクルを回し、従業員の健康管理や健康増進をマネジメントすることで、企業の労働生産性や従業員のモチベーションの向上などにつなげます。

コンプライアンスの確保

CHOには、労働安全衛生法や労働基準法などの従業員の健康や労働に関連する法令を遵守するよう監督し、コンプライアンスを確保する役割もあります。

法令に抵触する事態が起こった場合には是正措置を行い、再発防止のための対策を講じます。

健康被害への対応

CHOは、勤務中の事故や災害の発生、社内での感染症の拡大などにより従業員に健康被害が起きた際に、従業員の健康を守るための対策を行う役割も担います。

健康被害が起きた原因の調査や、適切な医療措置の確保などの対応を的確かつ迅速にできるよう統括します

また、健康被害のリスクを分析し、潜在的なリスクも含めて予防策を講じ、健康リスクの低減にも努めることもCHOの役割です。

自社の健康に関する取り組みを発信

従業員の健康維持・増進への取り組みを社内外に発信するのもCHOの役割の一つです。健康経営の目的や取り組みを社内に発信し、健康経営に対する理解が深まるよう努めます。

また、社外に健康経営に積極的に取り組んでいることを示し、従業員が健康的に働ける企業であるとアピールすることで企業イメージの向上につなげます

CHOとCHROの違い

同じ経営層の役職であるCHOとCHROの違いは、CHOの方が健康増進に重きを置いた立場であることです。ただし、あくまで各社の裁量であり、厳密な定義はありません。

CHROは「Chief Human Resource Officer」の略であり、最高人事責任者と呼ばれます。企業の経営戦略に対して、健康も含めた人事全般の観点から意見を述べる役割です。

CHOとCHROは、いずれも経営資源の中でヒトに着目した立場である点は共通しています。

自社の従業員の健康に課題がある、健康経営を推進したい場合には、より健康に特化したCHOの設置が選択肢の一つです。

CHOと類似する役職

CHOと類似する役職には、主に以下があります。

  • HRBP
  • CEO
  • COO
  • 人事部長

それぞれの特徴を知り、CHOとの違いを理解しておきましょう。

HRBP

HRBP(Human Resourses Business Partner)とは、人事や人材開発などにおける経営者や事業責任者のビジネスパートナーです。

HRBPの役割は、事業の成長のために経営層と連携し、人材課題の解決に向けた人事戦略をサポートすることです。

具体的には、経営者のビジョンを理解したうえで採用活動や従業員の研修などを行います。

CEO

CEO(Chief Exective Officer)は、最高経営責任者を意味します。企業の経営方針や事業計画などを策定し、企業全体の業務執行を統括する役割を担います

経営に関する全責任を負う立場であり、健全な経営の実現がCEOに課せられた最大の責務です。

また、経営に関わる人材育成戦略の策定を行うこともあります。

COO

COO(Chief Operating Officer)は、最高執行責任者を意味します。業務執行の責任を請け負う立場で、CEOの定めた経営方針にもとづき業務の実働部隊を統括する役割を担います

また、企業の成長戦略を具体的な行動計画に落とし込み、経営資源である「人材・資金・物」を適切に配置することもCOOの役割です。

人事部長

人事部長は、人事全般における実務的な責任者です。経営に直接携わることはなく、人事部門の責任者として部を統括し、経営層の決定に沿って人事戦略を立案・実行する役割を担います

また、採用活動や人材教育、人事評価なども行います。

CHOを経営層の役職として設置する必要性

CHOを経営層の役職として設置する必要性は、以下の3つです。

  • 従業員の健康増進につながる
  • 健康経営の取り組みを発信でき企業イメージが向上する
  • 健康に関する公的な認定制度の審査で評価される

それぞれ詳しく説明していきます。

従業員の健康増進につながる

CHOの設置により健康に関する取り組みの推進体制が強化され、従業員の健康増進につながります。従業員の健康増進は生産性の向上、ひいては企業の成長に資するため重要です。

しかし、健康に関する目標を掲げても、社内の推進体制が不十分で目標とする成果が出ないケースがあります。

CHOを設置すれば経営層レベルで責任の所在が明確化し、取り組みの実効性を確保できるのがメリットです。

健康経営の取り組みを発信でき企業イメージが向上する

CHOの設置により自社が健康経営に取り組む姿勢を外部に発信でき、企業イメージが向上します。

健康に関する役職を経営層に置くことで、健康経営への本気度が明らかになり、外部の関係者に良い印象を与えられるためです。

たとえば、従業員の健康管理への取り組みはESG投資のS(Social)にあたり、投資家が投資先を選ぶ際の判断材料として扱われます。

また、従業員の働き方に配慮する姿勢は採用活動でもPRでき、優秀な人材の確保・定着につながるのもポイントです。

【関連記事】健康経営とは?企業が取り入れるメリットや取り組み方法・必要性を徹底解説

健康に関する公的な認定制度の審査で評価される

CHOの設置や関連の取り組みは、健康に関する公的な認定制度の審査で評価されます。

経済産業省の健康経営優良法人認定制度や健康経営銘柄では、健康に関する経営理念や組織体制が評価項目の一部です。

従業員数が多い企業の場合には「健康づくり責任者が役員以上」が認定の必須要件とされることもあります。

認定制度により、健康を重視する優良法人であることが客観的な指標として「見える化」され、企業の信頼性が高まります。

【参考】
経済産業省「健康経営優良法人認定制度」
経済産業省「ACTION!健康経営|ポータルサイト(健康経営優良法人認定制度)」

【関連記事】健康経営優良法人2025の認定基準は?認定までのスケジュールや申請方法を解説

CHO設置時に押さえておくべきポイント

CHO設置時に押さえておくべきポイントは、以下のとおりです。

  • 経営理念・方針のアップデートを検討する
  • CHOをトップとした強力な推進体制を構築する
  • 健康経営の取り組みをさらに強化する

CHOは設置そのものが目的ではなく、設置をきっかけに健康経営に関する企業の体制を強化するために行います。

各ポイントを詳しく説明するので、ぜひ参考にしてください。

経営理念・方針のアップデートを検討する

CHOの設置とあわせて、経営理念・方針のアップデートを検討する必要があります。

CHOの設置は経営に関わるシンボリックな変化であり、企業の新たな方針を社内外へ発信する絶好の機会です。

たとえば、経営理念に必要な追記をする、健康宣言やCHOメッセージを作成するなどが挙げられます。

企業のミッションや歴史も踏まえ、自社ならではの健康経営に関する考えを盛り込むことがポイントです。

CHOをトップとした強力な推進体制を構築する

CHOをトップとして、健康の取り組みを強力に推進する体制を構築する必要があります。

CHOの設置とあわせて、CHO室や健康経営を推進する事務局など、司令塔を担う組織を設置するのが効果的です。

健康経営について社内外で関係する部署や人材には、以下が挙げられます。

  • 衛生委員会など健康に関わる社内組織
  • 産業医や保健師など健康に関する専門人材
  • 各部署のマネジメント層や現場の従業員
  • 健康保険組合や経済団体、自治体などのネットワーク

CHOを中心に据えた関係者の連携によって現場レベルまで理念が浸透し、取り組みをスムーズに進められます。

健康経営の取り組みをさらに強化する

推進体制の構築とあわせて、健康経営に関する取り組みのさらなる強化が重要です。

実効性を確保するためには、全社的な目標設定のみならず、従業員それぞれが当事者意識を持てるよう工夫する必要があります。

たとえば、従業員が参加できるイベント・研修の実施や、部署や個人による活動の紹介・表彰などが挙げられます。

健康経営に関する目標を立てたうえで、現状把握や取り組みの強化、実施の監視、事後評価などPDCAサイクルを回していきましょう。

【関連記事】トータルヘルスプロモーションプラン(Total Health Promotion Plan)とは?推進方法や導入するメリットを解説

CHOに求められる能力

企業の状況や環境によっても異なりますが、CHOには主に以下のような能力が求められます。

  • マネジメント能力
  • 健康経営に関する専門知識
  • 戦略立案力
  • コミュニケーション能力

具体的にどのような能力が求められるのか詳しく解説します。

マネジメント能力

CHOには、健康経営の取り組みを着実に進めるためのマネジメント能力が求められます。健康経営を推進するには、従業員や経営層を巻き込んで施策の立案や実行ができるリーダーシップが必要です。

自身が中心となって施策の進捗や従業員のモチベーションの管理などを行い、施策を円滑に実行できる能力が求められます。

健康経営に関する専門知識

適切な施策の立案・実行をするために、CHOには健康経営に関する専門知識も求められます。実効性のある施策を行うには、専門的な知識をもとに健康に関するデータを正確に分析・活用し、課題の特定や改善策の立案を的確にできる力が必要です。

また、労働安全衛生法や健康経営優良法人認定制度などの健康経営に関わる法令や制度に関する知識も求められます。これらの専門知識を活かして、CHOは従業員が健康で安全に働ける環境構築に取り組みます。

戦略立案力

企業の経営方針に則り健康に関する経営戦略を立案する能力も、CHOに求められる能力の一つです。経営方針とのズレが生じないようにしたうえで、従業員の健康維持・増進を実現する戦略を立てます。

また、自社が抱えている健康課題に対する、新たなアプローチ方法の解決策を生み出せる能力も必要です。

コミュニケーション能力

CHOには、コミュニケーション能力も求められます。なぜなら、健康経営に関する啓蒙活動を行ったり、健康経営の推進のために従業員に健康に関する要望の聞き取りなどを行う場面があるからです。

加えて、経営層に対して健康経営の重要性を説明するプレゼンテーション力も必要です。

また、ときには経営層と現場の間や、関係部署間の橋渡し的な存在も務めます。そのため、社内の関係各所と円滑にコミュニケーションが取れる能力もCHOには必須です。

CHO設置により健康経営を推進した企業の成功事例

CHO設置により健康経営を推進した企業の成功事例を紹介します。他社の成功事例を参考に、自社に合った取り組みを検討しましょう。

CHO室を中心に取り組みを強化|株式会社DeNA

株式会社DeNAは、インターネット事業を幅広く展開している企業です。

パソコン作業が多く、身体の不調を訴える従業員がいたことがCHO設置のきっかけです。2016年にCHOを設置し、代表取締役会長の南場智子氏が自ら就任しました。

特徴は、従業員の健康増進を担うCHO室を設置し、関連部署や産業医・保健師と連携して取り組みを強力に進めたことです。CHO室が取りまとめ役となり、健康の専門家が登壇するセミナーやワークショップを多数開催しました。

社内のアンケート調査によると従業員の健康状態が改善し、2017年には健康経営優良法人(ホワイト500)、2019年には健康経営銘柄に認定されました。

2021年に三宅邦明氏がCHOを引き継ぎ、従業員が楽しみながら健康維持・増進ができる施策に取り組んでいます。また、2024年には健康経営優良法人(ホワイト500)、および健康経営銘柄に認定されています。

従業員参加型の幅広い企画を実施|ロート製薬株式会社

ロート製薬株式会社は2014年に日本初のCHOを設置した、健康経営を推進するリーディングカンパニーの一つです。

当初から企業理念に掲げていた健康の取り組みをさらに加速させるため、CHOが統括するプロジェクトチームを立ち上げました。特徴は、従業員の自発的な健康意識の向上を目指し、参加型の企画を実施したことです。

たとえば、全従業員に歩数計を配布して部署ごとに数値を競い合う「ウェルチャレ」によって、健康を大切にする組織文化を根付かせました。

従業員のさまざまな健康指標が改善し、2015年には健康経営銘柄、2017年には健康経営優良法人(ホワイト500)に認定されました。2024年には7回目となる健康経営優良法人(ホワイト500)の認定を受けています。

独自の健康プログラムを実施|株式会社タニタ

株式会社タニタは体重計や歩数計などの計測器の製造・販売をしているメーカーです。同社では代表取締役社長がCHOを兼任し、CHOをトップとする事務局が産業医や健康保険組合などと連携して健康経営を推進する体制を構築しています。

特徴は、健康計測機器を活用して従業員の体や活動の状態を見える化する「タニタ健康プログラム」を実施していることです。たとえば、従業員へ社員証となる活動量計を配布し、勤務中の歩数を計測する取り組みを行っています。

加えて、従業員同士の歩数を競う「歩数イベント」を実施し、従業員が楽しみながら取り組めるような企画を取り入れ、無理なく続けられる工夫もしています。

また、社内に設置した体組成計で体重や体脂肪率、筋肉量などの体の変化を定期的にチェックできる環境を整備しているのも特徴です。

これらの取り組みが評価され、2024年には健康経営優良法人(中小規模法人部門) ブライト500に認定されました。

CHOを設置して健康経営をさらに推進しよう

CHOは、従業員の健康管理に関する取り組みを統括する責任者です。経営層の役職として設置することで、従業員の健康増進や企業イメージ向上につながるため、必要性は高いといえます。

CHOの設置は、経営理念・方針のアップデートやCHOトップの推進体制の構築、健康経営の取り組み強化とセットで行うことがポイントです。

本記事を参考に、自社の状況を鑑みながら必要に応じてCHOの設置を検討し、健康経営をさらに推進していきましょう。

エムスリーキャリア健康経営コラム編集部

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