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睡眠時無呼吸症候群は労災の要因になる!企業が講じておくべき対策を解説

睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome; SAS)は睡眠障害の一つで、業務中の眠気によって労災を引き起こす可能性がある疾病です。

しかし、睡眠時無呼吸症候群の従業員を発見する方法や、睡眠時無呼吸症候群による労災を防ぐ方法などが分からないと悩む人事労務担当者もいるのではないでしょうか。

本記事では、睡眠時無呼吸症候群によって労災を引き起こした事例や、企業が講じておくべき対策を紹介します。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは

睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは、睡眠中に起こる無呼吸によって睡眠が浅くなり、昼間に眠気・集中力の低下などを起こす症候群のことです。2020年の調査では男性の5%前後、女性の2〜3%前後に睡眠時無呼吸症候群が見られています。

睡眠中に無呼吸や低呼吸に陥ってしまうのは、下記のような要素が気道を狭くしていることが原因です。

  • 肥満
  • 扁桃肥大
  • 鼻の病気
  • 舌が大きい

睡眠時無呼吸症候群を放置すると、生活習慣病、脳・循環器系の疾病を誘発します。よって、睡眠時無呼吸症候群は早期に治療しなければなりません。

【参考】
国土交通省「自動車運送事業者における睡眠時無呼吸症候群対策マニュアル~SAS対策の必要性と活用~」
日本呼吸器学会「睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020」

【関連記事】睡眠障害に悩む社員がいるときはどうすればいい?企業ができる対策とは?

睡眠時無呼吸症候群の従業員は労災を引き起こす恐れがある

睡眠時無呼吸症候群の従業員は、業務中の眠気によって運転や作業に支障をきたし、労災を引き起こす恐れがあります。

交通事故全体の10〜30%は眠気によって起こる事故が占めており、事故を回避するには当該従業員の業務量を調整するなどの工夫が必要です。

眠気によって引き起こり得る労災は交通事故だけではなく、高所からの転落や体が機械へ巻き込まれる事故なども含まれます。

とくに身体的にリスクが高い業務に就いている場合は、従業員が睡眠障害に陥っていないかどうか把握しましょう。

【参考】国土交通省「職域における睡眠呼吸障害の予防・治療・ フォローアップの重要性」

運転者の睡眠時無呼吸症候群の把握は事業者の義務

事業用自動車の事業者は、運転者の適性診断の一つとして、睡眠時無呼吸症候群についての問診を把握しなければなりません。

運転者としての適性診断は、以下の従業員に対して優先的に受けさせましょう。

  • 事故を起こしたことがある従業員
  • 新たに雇入れた従業員
  • 65歳に達した従業員

また、睡眠障害であることが管理者からの目視で分かる場合や、本人に自覚症状がある場合は、適性診断や検査、医師による判断の結果を把握するよう努める必要があります

睡眠時無呼吸症候群の前兆や自覚症状は、以下のとおりです。

病名 主な前兆や自覚症状
睡眠障害 SAS 〇夜間、睡眠時に

・いびきをかく

・息が止まる

・呼吸が乱れる

・息が苦しくて目が覚める

・なんども目を覚まし、トイレに行く

〇日中起きているとき

・しばしば居眠りをする

・記憶力や集中力が低下する

・性欲がなくなる

・性格が変化する

・身体を動かすときに息切れする

(出典:国土交通省「事業用自動車の運転者の健康管理マニュアル」

現時点で上記の症状がない運転者でも、定期的に機器による簡易検査を実施し、睡眠時無呼吸症候群を早期発見することが望ましいでしょう。

【参考】国土交通省「運転者適性診断」

【関連記事】睡眠障害に悩む社員がいるときはどうすればいい?企業ができる対策とは?

睡眠時無呼吸症候群が労災を引き起こした事例

睡眠時無呼吸症候群によって労災を引き起こした事例を紹介します。

JR山陽新幹線での居眠り運転

2003年2月、山陽新幹線の運転手が運転中に約8分間居眠りした事例が発生しました。

岡山駅の到着時、所定の停車位置から100mずれた場所で新幹線が自動停止したことを不審に思った車掌が運転台に駆けつけ声をかけると、運転手が目を覚ましたとのことです。

運転手は事故後、「睡眠時無呼吸症候群」と診断されました。本事例では、死傷者はいなかったものの、居眠り運転での緊急停止事故であったため、労災として扱われています

JR西日本は、大事故につながりかねなかったこの事件を受け、運転室に他の添乗員を同乗させたり、代替運転手を手配したりなどの対策を講じました。

また、この事件以降、睡眠時無呼吸症候群の運転者を早期発見するための検査(スクリーニング検査)の必要性が認識され、多くの企業がスクリーニング検査を実施しています。

【参考】
内閣府「睡眠時無呼吸症候群(SAS)問題対策」
国土交通省「交通事業に係る運転従事者の睡眠障害に起因する事故等の防止対策に関する連絡会議」

首都高速有明ジャンクションの玉突き事故

2012年7月、車両運搬トラックがワンボックスカーに衝突し、ワンボックスカーに乗車していた4名が死亡、2名が重症となる事故が起きました。

事故後、運転手は睡眠時無呼吸症候群と診断され、睡眠時無呼吸症候群による事故で過失は無いと無罪を主張しました。

しかし、眠気を自覚してから睡眠状態になるまでには時間があり、運転中止義務があったとして禁固刑の有罪判決が下されています

運転手は、本事例より前にも運転中に眠気を感じたことがありました。事故を未然に防ぐには、運転中の眠気を自覚したら速やかにスクリーニング検査し、早期発見に努めることが重要です。

【参考】
日本交通科学学会誌「睡眠時無呼吸症候群(SAS)による眠気に起因した自動車事故例の検討─本邦刑事判例における司法判断と予防対策について─」
公益財団法人高速道路調査会「高速道路での居眠り運転防止に向けた効果的な対策に関する調査研究」

北陸道小矢部川サービスエリア駐車場内の衝突事故

2014年3月、小矢部川サービスエリアの駐車場で高速バスが、駐車中の大型トラック2台に衝突し運転手と乗客1名が死亡、24名が病院へ搬送されました。

運転手は、睡眠時無呼吸症候群の検査を事前に実施しており、「要経過観察」とされていましたが、バス会社の判断で精密検査を受けていなかったとのことです。

本事例は、バス運転者に対する労働時間の管理不足として交通労働災害と扱われ、厚生労働省からバス会社へ要請が言い渡されました

事業者は、従業員が睡眠時無呼吸症候群かどうかを把握するだけではなく、無理な就業時間で業務させないよう配慮する必要があります。

【参考】
厚生労働省「バス運転者の労働時間管理等の徹底に関する要請について」
公益財団法人高速道路調査会「高速道路での居眠り運転防止に向けた効果的な対策に関する調査研究」

睡眠時無呼吸症候群による労災を防ぐための対策

睡眠時無呼吸症候群による労災を防ぐための対策を解説します。

スクリーニング検査を実施する

睡眠時無呼吸症候群による労災を防ぐために、積極的にスクリーニング検査を実施しましょう。スクリーニング検査は、睡眠時無呼吸症候群の精密検査をすべきかを見極めるための簡易検査です。

積極的に睡眠時無呼吸症候群のスクリーニング検査を実施すべき対象者は、以下に該当する従業員です。

  • 運転中に頻繁に事故を起こしている
  • 運転中に衝突しそうになったなど、事故につながりかねない危険な運転が多い
  • 長距離走行がある
  • 年齢が高い
  • 肥満
  • 夜間勤務がある

問診表で問題ないと判断され、スクリーニング検査の対象外とされていても、事故後に睡眠時無呼吸症候群が発覚した例があります。

そのため、雇入れ時と3〜5年に一度を目安に、全従業員を対象としてスクリーニング検査をすることが望ましいでしょう。

スクリーニング検査は、以下の流れで実施します。

  1. センサを貸し出し、従業員が自宅で検査を実施する
  2. センサに記録された内容をもとに、精密検査が必要かを医師が判断する
  3. 精密検査が必要な場合は、できるだけ早く医療機関にかかり最終判断する

国土交通省「自動車運送事業者における睡眠時無呼吸症候群対策マニュアル~SAS対策の必要性と活用~」

生活習慣に関して産業医が指導する

睡眠時無呼吸症候群は生活習慣と関係が深いため、食事や睡眠などの生活習慣を産業医が指導し、睡眠時無呼吸症候群の改善・予防に努めることが重要です。

業務上の措置が必要な場合は、産業医の意見を聴き内容を検討しましょう。

【関連記事】
医師による面接指導とは?対象者や流れを解説
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事前に検査して睡眠時無呼吸症候群による労災を防止しよう

睡眠時無呼吸症候群の従業員を配慮なく作業に充てることは、最悪の場合、死傷者を伴う労災に発展します。

睡眠時無呼吸症候群による労災を防ぐには、定期的にスクリーニング検査を実施し、早期発見に努めることが効果的です。睡眠時無呼吸症候群のレベルによっては、業務上の措置を実施する必要もあります。

睡眠時無呼吸症候群の疑いがある従業員の検査を事前に実施し、睡眠時無呼吸症候群によって起こり得る労災を防止しましょう。

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