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労災かくしとは?罰則や事例、正しい対処法について解説

労働者が労働災害により、休業せざるを得なくなったり、死亡したりした場合には、健康保険ではなく労災保険を使って治療しなくてはなりません。また、事業主には労働者死傷病報告書の提出が義務付けられています。

しかし、労働者死傷病報告書を故意に提出しない、虚偽の記載をするなどの労災かくしが行われる場合があります。労災かくしは労働安全衛生法に違反する犯罪行為です。

この記事では、労災かくしの事例や罰則について解説するとともに、労災が起こってしまった場合の適切な対処法について解説します。

労災かくしとは

労災かくしとは、労災が発生した際に労働基準監督署への報告をしなかったり、虚偽の報告をしたりして、労災を隠蔽しようとすることです。

労災が発生した場合、企業は労災事故の報告書である「労働者死傷病報告書」を労働基準監督署長に提出しなくてはなりません。労働者死傷病報告書をわざと提出しなかったり、労働者死傷病報告書に虚偽の内容を記載したりすると労災かくしに該当します。

【参考】厚生労働省「労災かくしとは何ですか。

労災かくしの罰則

労災かくしは、労働安全衛生法に違反する犯罪行為です。

労働安全衛生法120条第5号において、労働者死傷病報告の提出を怠ったり、労働者死傷病報告書に虚偽の記載をしたりした際には50万円以下の罰金が科されることが規定されています。

罰金の額としては大きな金額ではないかもしれませんが、労災かくしを行うと厚生労働省のホームページに社名が公表されるため、企業のイメージダウンにもつながります。

【参考】厚生労働省「「労災かくし」は犯罪です。」

労災かくしの事例

労災かくしの事例には、主に以下の2パターンがあります。

  • 労働者死傷病報告書を提出しなかったケース
  • 労働者死傷病報告書に虚偽の記載をしたケース

それぞれのケースについて、具体的な事例を紹介します。

労働者死傷病報告書を提出しなかったケース

工事現場で作業員が作業中に高さ7.5メートルの足場から墜落し、両手首骨折の重傷を負って1ヶ月の休業を余儀なくされた。休業が4日以上の事故については、遅滞なく労働者死傷病報告書を提出することが義務付けられているが、会社側は労働者死傷病報告を提出しなかった。

このことにより、建設会社と経営者は労働安全衛生法違反の疑いで書類送検された。

【参考】厚生労働省「「労災かくし」の送検事例」

労働者死傷病報告書に虚偽の記載をしたケース

元請建設会社から受注したビル建設工事をしていたところ、作業員が建設現場で全治3週間のやけどを負った。

工事現場での労働災害は、通常元請建設会社の労災保険で補償される。しかし、元請建設会社の労災保険を使うと元請建設会社に迷惑がかかり、仕事を受注できなくなると思ったため、自社の資材置き場で起きたと虚偽の報告をした。

このことにより、建設会社と同社専務は労働安全衛生法違反の疑いで書類送検された。

【参考】厚生労働省「「労災かくし」の送検事例」

労災かくしはなぜばれる?

労災かくしは、労働者の内部告発によって発覚する場合が多いです。

労災かくしをすると、労働者は労災保険からの補償を受けられません。会社の対応に不満を抱えた労働者が労働基準監督署に相談した際に、事業者が労災かくしをしていたことが明らかになります。

また、治療を進める過程で患者が業務中の事故で負傷したことが判明し、病院が労働基準監督署に通報して労災かくしが発覚するケースもあります。

企業が労災かくしをしてしまう理由

労災かくしは犯罪行為であるにもかかわらず、企業が労災かくしをしてしまう理由は以下のとおりです。

  • 労災保険料が上がるから
  • 企業のイメージが低下するから
  • 労働基準監督署の監査が入る可能性があるから
  • 手続きが煩雑であるから
  • 労災保険に加入していないから

それぞれについて詳しく解説します。

労災保険料が上がるから

労災保険を使うと、翌年の労災保険料が上がってしまうため、労災保険を使うのをためらう事業主がいます。

労災保険には「メリット制」が導入されています。メリット制とは、労災保険の使用回数や支払われた保険料の額により、翌年納める労災保険料の額が決まる制度です。

メリット制により、労災保険を使用することで翌年の労災保険料が上がってしまう場合があります。

【参考】厚生労働省「労災保険のメリット制について」

企業のイメージが低下するから

労災が起きたことで、労災防止の意識がない企業というイメージが広がることを恐れ、労災かくしをするケースもあります。労災の発覚により、企業のイメージが低下し、これまで通り仕事を受注できなくなったり、契約を打ち切られたりする場合があるためです。

また、元請業者からの評価が下がることを恐れ、下請け業者が労災かくしをすることもあります。

労働基準監督署の監査が入る可能性があるから

労働基準監督署の監査を避けようとすることも、労災かくしをする理由の一つです。

労働基準監督署は、労災が発生すると監査を実施することがあり、重大な法律違反が発覚した場合には書類送検処分を行う権限を有しています。労働基準監督署の監査によって法律違反が明らかになり、刑事責任を問われる場合もあるでしょう。

労働基準監督署からの監査や行政上の措置・処分を避けるために、労災かくしをするケースがあります。

手続きが煩雑であるから

労災が起こった場合の手続きが煩雑で担当者がきちんと理解していなかったために労災かくしをしてしまうケースもあります。。

デスクワークが中心などの理由でそもそも労災が起きにくい企業では、担当者が手続きのやり方をきちんと理解できていないこともあるでしょう。労災に該当する事故であるにもかかわらず、健康保険を使って治療を受けるよう指示してしまい、意図せず労災かくしになるケースもあります。

労災保険に加入していないから

労災保険未加入であることの発覚を恐れて、労災かくしをする場合もあります。

労災保険への加入は雇用形態にかかわらず義務付けられており、未加入であること自体が悪質です。労災保険未加入の状態で労働者が労働災害に遭った場合、故意または過失による未加入と判断され、保険料や給付金を追加徴収されることがあります。

【参照】厚生労働省「労働保険適用促進パンフレット」

労災が起こった場合の対処法

労災が起こってしまった場合にとるべき対処法を3ステップで解説します。

  1. 労働災害の事実関係を把握する
  2. 労災保険の手続きを行う
  3. 労働者死傷病報告書を提出する

いざというときに冷静に対処できるよう、事前に流れを理解しておきましょう。

労働災害の事実関係を把握する

まずは、被災した従業員を医療機関に搬送するとともに、労働災害の事実関係を把握することが重要です。労働災害の規模に応じて、警察や労働基準監督署に速やかに連絡し、指示を受けます。

通報や関係部署への連絡をしながら、労働災害の事実関係を把握することも大切です。事故現場の状態や目撃者の証言などから、以下のことを把握しましょう。

  • いつ、誰が、どのような労災にあったのか
  • その場には誰がいたのか
  • なぜ労災が発生してしまったのか

時間の経過とともに事実関係の把握が困難になるため、できるだけ迅速に対応する必要があります。

労災保険の手続きを行う

事故が労災と判断された場合、労災保険の手続きを進めます。

労災による怪我の治療には健康保険は使えないため注意が必要です。従業員が誤って健康保険を使ってしまった場合は、健康保険から労災保険に切り替えができるかを受診した病院に確認しましょう。切り替えができないときは、一時的に医療費の全額を自己負担し、後日労災保険を請求します。

労災保険の手続きは、労災指定病院とそれ以外の病院で異なります。

労災指定病院の場合は、「療養補償給付たる療養の給付請求書」を作成して病院に提出することで、被災した従業員は病院の窓口で費用を払うことなく治療を受けることが可能です。

労災指定病院以外の場合は、病院の窓口において、被災者が治療費を全額負担しなければなりません。後日、「療養補償給付たる費用請求書」を作成して労働基準監督署に提出すると、指定した口座に治療費が振り込まれます

【参考】厚生労働省「労働災害が発生したとき」

労働者死傷病報告を提出する

事故に遭った労働者が死亡・休業した場合、労働基準監督署に労働者死傷病報告を提出します労災の治療に必要な休業日数によって、労働者死傷病報告の提出様式や提出期限が異なるため注意が必要です。

労働者が労働災害によって亡くなったり、4日以上の休業を余儀なくされたりした際は、速やかに報告書を労働基準監督署長に提出しなくてはなりません。合理的な理由がある場合を除き、報告の遅れは許されません。

労働災害による休業が4日未満の場合は、各四半期(1〜3月、4〜6月、7〜9月、10〜12月)発生分について、各期間の最終月の翌月末までに所轄の労働基準監督署長に報告書を提出します。

【参考】厚生労働省「労働者死傷病報告の提出の仕方を教えて下さい。」

【関連記事】
【社労士監修】労災とは?人事労務担当者が知っておくべき基礎知識と対応方法

労災かくしの罰則や正しい対処法を理解しよう

労災かくしは、労働安全衛生法に違反する犯罪行為です。労災かくしが発覚すれば50万円以下の罰金を科されるだけでなく、企業イメージの低下にもつながります。

労災が起こってしまった場合に適切に対処できるよう、正しい対処法を理解しておかなくてはなりません。

また、労働安全衛生に注意して労災が起こらない労働環境を整えることも大切です。日頃から産業医と連携して労働環境を整えていきましょう。

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