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産業医の紹介はどこで?探し方4選を費用・特徴で徹底比較【2025年版】

従業員数が50名を超え、初めて産業医を選任する人事労務担当者様の中には、「そもそも産業医はどこで探せばいいのか」「費用はどれくらいかかるのか」といった疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

労働安全衛生法に基づき、常時50人以上の労働者を使用する事業場では産業医の選任が義務付けられており、その責任は企業にとって重要な法的要件です。しかし、自社の課題解決に貢献してくれる最適な産業医を、数多くの医師の中から見つけ出すのは容易ではありません。

この記事では、産業医を探すための主要な4つの方法を、それぞれのメリット・デメリット、費用の観点から徹底的に比較・解説します。さらに、特に利用されることの多い「産業医紹介サービス」を失敗せずに選ぶための5つのポイントや、選任までの具体的な流れもご紹介します。

この記事を最後まで読めば、自社に最適な産業医探しの方法が明確になり、自信を持って選任プロセスを進めることができるようになります。

産業医とは?選任が義務となる背景と役割

産業医の探し方を検討する前に、まず産業医の基本的な役割と、なぜその選任が法的に義務付けられているのかを正確に理解しておくことが重要です。これは、単なる人材採用ではなく、企業の健康経営とリスク管理の根幹に関わる戦略的な判断だからです。

産業医の定義と役割

産業医とは、事業場において労働者の健康管理を行うために、専門的な立場から指導・助言を行う医師のことです。臨床医が患者個人の病気の治療を目的とするのに対し、産業医は企業に所属する従業員全体の健康を維持・増進し、安全で快適な職場環境を形成することを目的として活動します。

法的義務

労働安全衛生法により、常時使用する労働者が50人以上の事業場では、産業医を選任することが義務付けられています。この義務が発生した日から14日以内に産業医を選任し、所轄の労働基準監督署に届け出なければなりません。この義務を怠った場合、50万円以下の罰金が科される可能性があります。

産業医の主な職務

産業医の職務は、労働安全衛生規則第14条第1項で9つに定められています。これらは企業の生産性向上と従業員の健康維持に直結する重要な業務です。

  • 健康診断の実施とその結果に基づく措置
  • 長時間労働者に対する面接指導・その結果に基づく措置
  • ストレスチェックと高ストレス者への面接指導・その結果に基づく措置
  • 作業環境の維持管理
  • 作業管理
  • 上記以外の労働者の健康管理
  • 健康教育、健康相談、その他労働者の健康保持増進を図るための措置
  • 衛生教育
  • 労働者の健康障害の原因調査、再発防止のための措置

これらの職務に加え、原則月1回以上の職場巡視や衛生委員会への出席も産業医の重要な役割です。これらの活動は、メンタルヘルス不調による離職や過重労働といった、現代企業が抱える重大な経営リスクを予防・管理するために不可欠です。したがって、産業医の選任は、法規制への対応というだけでなく、企業の持続的な成長を支えるための投資と捉えるべきです。

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産業医の探し方4選:メリット・デメリットを徹底比較

産業医を探す方法は、主に4つあります。それぞれに特徴があり、メリットとデメリットが異なります。自社の状況に合わせて最適な方法を選択することが重要です。

地域の医師会に相談する

事業場所在地を管轄する都道府県や市区町村の医師会に問い合わせて、産業医を紹介してもらう方法です。

  • メリット: 紹介手数料が無料または低額な場合が多く、コストを抑えられます。また、地域の医療事情に詳しい、近隣の医師を紹介してもらえる可能性があります。
  • デメリット: 産業医との契約交渉や書類作成といった実務手続きは、すべて自社で行う必要があります。また、紹介される医師は地域の開業医が中心となるため、産業医としての経験が豊富でなかったり、多忙で十分な訪問時間を確保できなかったりするケースも考えられます。すべての医師会が紹介に対応しているわけではないため、事前の確認も必要です。

健康診断の実施機関に紹介を依頼する

毎年依頼している健康診断の実施機関(病院や健診センター)に相談する方法です。これらの機関には産業医資格を持つ医師が在籍していることがあります。

  • メリット: 健康診断と産業医業務を同じ機関に集約できるため、健診結果の共有や事後措置がスムーズに進みます。健康診断とセットで契約することで、費用を抑えられる可能性もあります。
  • デメリット: 所属する産業医の数が限られているため、選択肢が少ない場合があります。また、紹介された医師が臨床業務で多忙な場合、健康診断以外の面談指導や休職者対応といった、より専門的な業務への対応が難しいケースもあります。

産業医紹介サービスを利用する

産業医の紹介を専門に行う民間企業を利用する方法です。企業のニーズに合わせて、登録している多数の医師の中から最適な人材をマッチングしてくれます。

  • メリット: 企業の課題(例:メンタルヘルス対策を強化したい、女性従業員が多いので女医を希望する)に応じた専門性を持つ産業医を探せます。契約交渉や日程調整などを代行してくれるため、人事担当者の負担が大幅に軽減されます。選任後のフォロー体制も充実しており、万が一ミスマッチがあった場合の交代も相談可能です。
  • デメリット: 紹介手数料や月額のサービス利用料といった費用が発生します。

地域産業保健センター(地さんぽ)に相談する

地域産業保健センターは、労働者数50人未満の小規模事業場を対象に、国が無料で産業保健サービスを提供する機関です。

  • メリット: 産業医による面談指導や健康相談などを無料で利用できます。
  • デメリット: 主な対象は産業医の選任義務がない小規模事業場です。そのため、選任義務のある企業が「産業医を紹介・あっせんしてもらう」ための機関としては、主たる選択肢にはなりにくいのが実情です。あくまで相談先の一つとして位置づけられます。

産業医の探し方 比較一覧表

各方法の特徴を一覧表にまとめました。一見して費用がかからない選択肢が魅力的に見えるかもしれませんが、人事担当者の時間や労力といった「見えないコスト」も考慮することが重要です。例えば、医師会を通じて産業医を探す場合、紹介料はかからなくても、契約交渉や条件調整に多くの時間を費やす可能性があります。一方で、紹介サービスは費用が発生しますが、その分、迅速かつ確実に自社に合った人材を見つけることができ、結果的に「トータルコスト」を抑えられる場合があります。

探し方 特徴 費用感 メリット デメリット こんな企業におすすめ
地域の医師会 地域の医師会に所属する医師を紹介してもらう 無料または低額 ・紹介手数料が安い
・地域の医療事情に詳しい
・契約手続きは自社対応
・医師の選択肢が限られる
・産業医経験が未知数
・コストを最優先したい
・契約実務に慣れている
健診機関 健康診断を依頼している機関に紹介してもらう ケースバイケース ・健診データ連携がスムーズ
・セット契約で割安の可能性
・産業医が在籍していない場合がある
・臨床業務で多忙な可能性
・健診機関との関係が良好
・健診後のフォローを重視
産業医紹介サービス 専門のマッチングサービスを利用する 紹介料または月額利用料 ・ニーズに合う医師を探せる
・契約や調整を代行
・選任後のサポートが充実
・費用がかかる ・初めて産業医を選任する
・担当者の負担を減らしたい
・専門性(例:メンタル)を重視
地域産業保健センター 国が運営する小規模事業場向けの支援機関 無料 ・無料で健康相談などができる ・主に50名未満の事業場が対象
・直接的な紹介・あっせんではない
・選任義務のない小規模事業場

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【料金相場】産業医の費用はいくら?契約形態・依頼先別に解説

産業医の費用は、契約形態や依頼先によって大きく異なります。予算を検討する上で、これらの相場を把握しておくことが不可欠です。

契約形態による違い:嘱託産業医と専属産業医

産業医の勤務形態は、大きく「嘱託」と「専属」の2種類に分けられます。

  • 嘱託産業医(非常勤)
    月に1〜数回、決められた日時に事業場を訪問する形態です。常時使用する労働者数が50人〜999人の事業場で選任されるのが一般的です。報酬は月額で支払われ、従業員数や訪問回数、業務内容によって変動します。
  • 専属産業医(常勤)
    企業の従業員として常勤で勤務する形態です。常時1,000人以上(有害業務の場合は500人以上)の労働者を使用する事業場で選任義務があります。報酬は年俸制で、週の勤務日数によって大きく変動します。例えば、週4日勤務の場合、年収は1,200万円〜1,500万円程度が相場とされています。

本記事では、多くの企業が対象となる「嘱託産業医」の費用を中心に解説します。

依頼先による料金の違い

嘱託産業医の月額報酬は、主に「医師会経由」か「紹介サービス経由」かで相場が異なります。

  • 医師会経由の相場
    地域の医師会が公表している報酬基準額を見ると、従業員数に応じて料金が設定されています。例えば、日本橋医師会の例では、従業員数50〜199人の事業場で月額100,000円が基準とされています。
  • 紹介サービス経由の相場
    産業医紹介サービスを利用した場合、月額報酬は30,000円〜50,000円程度がボリュームゾーンとなっており、医師会経由よりも安価な傾向にあります。

ここで興味深いのは、専門の仲介業者である紹介サービスを通した方が、直接的な窓口である医師会よりも月額費用が安くなるケースが多いという点です。これは、紹介サービスが全国規模の競争市場でサービスを提供しており、価格競争が働くこと、また多数の登録医師の中から企業の予算やニーズに合わせて柔軟な提案が可能であることなどが理由と考えられます。一方で、医師会は地域ごとの基準料金が定められている場合が多く、価格の柔軟性が低い可能性があります。「直接依頼する方が安い」という一般的な思い込みが、産業医探しの市場では必ずしも当てはまらないことは、知っておくべき重要なポイントです。

嘱託産業医の月額報酬 目安表

従業員数 医師会経由の月額目安 紹介サービス経由の月額目安
50〜199人 100,000円〜 30,000円〜50,000円
200〜399人 150,000円〜 50,000円〜80,000円
400〜599人 200,000円〜 70,000円〜100,000円
600〜999人 250,000円〜 90,000円〜150,000円

※上記はあくまで目安です。訪問回数や業務内容、産業医の経験によって変動します。

また、紹介サービスを利用する場合、契約形態によって費用体系が異なります。毎月の報酬とは別に、選任時に年俸の20%〜30%程度の紹介手数料が一度だけ発生する「人材紹介契約」と、初期費用は無料で月額のサービス利用料にすべて含まれる「業務委託契約」があります。予算計画を立てる際には、この違いも確認しましょう。

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失敗しない産業医紹介サービスの選び方5つのポイント

多くの企業にとって、産業医紹介サービスは効率的で確実な選択肢となります。しかし、サービス会社によって質は様々です。ここでは、自社に最適なサービスを選ぶための5つのポイントを解説します。

自社の課題に合う提案力と医師の専門性

優れた紹介サービスは、ただ医師を紹介するだけではありません。企業の業種、従業員構成、そして「メンタルヘルス不調者が多い」「長時間労働が常態化している」といった固有の課題をヒアリングし、その解決に最適な専門性を持つ産業医を提案してくれます。精神科を専門とする医師や、特定の業界に詳しい医師など、専門分野を指定して探せるかどうかも重要なポイントです。

豊富な実績と医師のネットワーク

これまでの取引実績や導入事例が豊富であることは、サービスの信頼性を測る重要な指標です。多くの企業に選ばれているサービスは、それだけ質の高いマッチングを提供してきた証拠と言えます。また、登録している医師のネットワークが広いほど、自社の細かい要望に応えられる可能性が高まります。

全国・複数拠点への対応力

本社以外に支社や工場が全国に点在している場合、それぞれの事業場で産業医を選任する必要があります。複数の拠点の産業医選任をまとめて依頼でき、一元管理できる全国対応のサービスを選ぶと、人事担当者の負担を大幅に削減できます。

料金体系の透明性

月額料金にどのようなサービスが含まれているのか、追加料金が発生するのはどのような場合かなど、料金体系が明確で分かりやすいことが重要です。見積もりを依頼した際に、内訳を丁寧に説明してくれるサービスを選びましょう。複数の会社から見積もりを取り、サービス内容と料金が見合っているかを比較検討することをお勧めします。

選任後のサポート体制

質の高い紹介サービスは、産業医を紹介して終わりではありません。選任後の産業医との定期的な連携サポート、訪問スケジュールの調整、衛生委員会の運営支援、さらには産業保健活動を管理するためのクラウドシステムの提供など、継続的なサポートを提供します。このようなサービスは、単なる人材紹介会社ではなく、企業の産業保健活動を共に推進する「戦略的パートナー」と言えます。万が一、産業医との相性が合わなかった場合に、無料で交代に応じてくれるかどうかも確認しておきましょう。

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産業医選任までの3ステップと注意点

最適な探し方と依頼先が決まったら、いよいよ選任の最終段階です。ここでは、具体的な3つのステップと法的な注意点を解説します。

ステップ1:候補者との面談

契約前に、候補者となる医師と面談の機会を設けましょう。紹介サービスによっては、契約前に事前面談(顔合わせ)が可能です。面談では、産業医としての経験や資格を確認するだけでなく、コミュニケーションの取りやすさや人柄など、自社の社風に合うかどうかも見極めることが重要です。企業の課題を伝え、どのような協力が得られそうか具体的に質問してみましょう。

ステップ2:契約の締結

面談を経て双方が合意したら、契約を締結します。紹介サービスを介する場合は、企業と紹介会社が「業務委託契約」を結ぶのが一般的です。契約書では、報酬額、訪問頻度、業務の範囲、守秘義務など、細部までしっかり確認しましょう。

ステップ3:労働基準監督署への届出

産業医を選任したら、事業場を管轄する労働基準監督署へ「産業医選任報告」を提出する必要があります。この届出は、選任すべき事由が発生した日から14日以内に行わなければならない、という期限が定められているため、速やかに手続きを進めましょう。この届出を怠ると法律違反となるため、注意が必要です。

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まとめ

本記事では、産業医の探し方について、4つの主要な方法を費用や特徴の面から比較し、自社に合った選び方のポイントを解説しました。

従業員が50名を超えた企業にとって、産業医の選任は避けて通れない法的義務です。その探し方には、地域の医師会や健診機関への相談といった選択肢もありますが、それぞれに手続きの手間や医師の選択肢の限界といった課題があります。

一方で、産業医紹介サービスは、費用はかかるものの、人事労務担当者の負担を大幅に軽減し、企業の多様なニーズに応える専門性の高い医師を迅速に見つけることができる、非常に効率的で信頼性の高い方法です。特に、初めて産業医を選任する企業や、メンタルヘルス対策など特定の課題を抱える企業にとっては、最適な選択肢と言えるでしょう。

産業医は、単に法的要件を満たすためだけでなく、従業員の健康を守り、企業の生産性を向上させるための重要なパートナーです。自社に最適な産業医をスムーズに選任するため、まずは専門の紹介サービスに相談してみることをお勧めします。

エムスリーキャリア健康経営コラム編集部

エムスリーキャリア健康経営コラム編集部

産業医サービスを中心に健康経営ソリューションを提供

健康経営に関するお役立ち情報を発信する「健康経営コラム」編集部です。 産業医サービスを提供するエムスリーキャリア株式会社が運営しています。 全国34万人以上(日本の医師の約9割)が登録する医療情報サイト「m3.com」のデータベースを活用し、あらゆる産業保健課題を解決に導きます。 お困りの企業様はお問い合わせボタンよりご相談くださいませ。

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  • 50人以上の事業場向け

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    ※有害業務従事の場合は500人以上

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