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新型コロナウイルスのワクチン接種が本格化し、従業員のワクチン接種がスムーズに進むように「ワクチン休暇」を導入する会社が増えています。ワクチン休暇とは、具体的にどういうものなのでしょうか。
今回の記事では、ワクチン休暇が必要な理由と休暇導入のメリット・デメリットを中心に解説します。
ワクチン休暇は、法律で義務付けられた法定休暇(年次有給休暇など)とは異なり、企業が独自に設定・付与できる特別休暇に該当します。特別休暇の主な特徴は次の通りです。
つまり、ワクチン休暇についても、そもそも休暇制度を設けるか、休暇に対し給与を支払うかは、企業が独自に判断するものになります。
ワクチン休暇を設定するかは企業の判断に委ねられています。一方、政府は「働く人がワクチン接種をしやすい環境」を整えるために、経済界に対し次の対策を検討するように要請しています。
なお、国家公務員、地方公務員については、河野規制改革担当大臣が2021年5月28日 の会見でワクチン休暇の導入を発表し、ワクチン休暇取得を促しました。
次に、ワクチン休暇の導入が必要とされる主な理由について説明します。
1つ目の理由は、平日のワクチン接種を容易にしてワクチンの接種時期を分散させるためです。
ワクチン休暇がなければ、平日勤務の企業の従業員のワクチン接種は土日に集中します。予約が取れずにワクチン接種が先延ばしになる、人が混雑する会場で接種しなければならない、混雑していれば接種終了まで時間がかかる事態も想定されます。企業がワクチン休暇を導入することで、従業員は比較的予約が取りやすく、人が少ない平日のワクチン接種が可能になると考えられます。
2つ目の理由は、ワクチン接種による副反応が起きた時、ワクチン休暇があれば安心して休めるためです。
厚生労働省の発表によると、ワクチンを接種した人の一定割合が発熱などの体調不良を起こすことがわかっています。このような副反応の有無に関わらず、接種日翌日をワクチン休暇とすることで、接種に対する従業員の不安と、副反応で急な休みになった場合の業務の混乱を軽減することもできます。
3つ目の理由は、従業員が家族のワクチン接種に付き添わなければならないケースが想定されるためです。
従業員に高齢の親や病気の家族がいる場合、本人1人ではワクチン接種に行けないため、従業員の付き添いが必要になるケースが想定されます。また、家族が副反応で体調を崩し、介護が必要な場合も考えられます。従業員が家族のワクチン接種で付き添いや介護が必要なときに、それを事由に取得できるワクチン休暇があると、従業員だけでなく家族も安心することができます。
ここまでワクチン接種の必要性について説明してきました。続いては、企業がワクチン休暇を導入するメリットとデメリットについて解説していきます。
ワクチン休暇を導入する企業の主なメリットは次の3つです。
1つ目のメリットは、従業員やその家族が安全・安心にワクチン接種を受けられることです。
前述の通り、従業員が平日にワクチン休暇を取得できれば、土日よりもスムーズにワクチン接種を受けられることが考えられます。また、接種日翌日以降も休暇が取れれば、副反応が出ても安心して休むことができます。さらに、従業員の家族の接種の付き添いや介護も対象になれば、従業員と家族にとって大きなメリットとなります。
2つ目のメリットは、従業員が早期にワクチン接種を終えることで、これまで控えていた企業活動ができるようになることです。
例えば、テレワークや移動を伴う活動の制限なども、ワクチン接種によって感染リスクが低下すれば、ある程度は緩和できるでしょう。新型コロナウイルス以前と同じような企業活動とまではいきませんが、様々な制約を緩和することで、企業活動を活性化させることが期待できます。
3つ目のメリットは、従業員のワクチン接種が進めば(または完了すれば)顧客などに対して安全な会社であることを訴求できます。また、企業の取り組み姿勢が評価されることも考えられます。
個人顧客と直接対面する販売会社はもちろん、製造や物流など様々な企業にとっても、顧客や提携先などに対し安全な会社であることを訴求するメリットは大きいでしょう。個人顧客の増加に加え、企業間の取引が活性化することも期待できます。
ワクチン休暇の導入は企業にとってメリットばかりではありません。主なデメリットについて説明します。
1つ目のデメリットは、従業員がワクチン休暇を取るために業務の調整や引き継ぎが必要で、場合によっては企業活動に悪影響を及ぼすことです。
新型コロナウイルス感染症拡大の影響で売上が落ち込んだ企業がある反面、業績好調で忙しい会社も少なくありません。人手不足で困っている会社にとっては、数ヶ月の間に従業員の多くが数日間休むことが大きな痛手になることもあります。
2つ目のデメリットは、新しい休暇制度を設けるために早急な人事制度の整備をしなければならないことです。
一般的に、就業規則を策定・変更するには、社内の合意形成や社外のリーガルチェックなど、一定の時間が必要です。しかし、ワクチン接種は既に始まっているため、通常より急いで就業規則を策定しなければなりません。
また、休暇の届出や承認の手続きをどうするか、休暇日をいつにするか、など制度導入にあたっての具体的なルールや対応策も必要です。さらに、ワクチン接種を拒否する従業員を周囲の批判から守る対策も検討しておいた方がよいでしょう。
メリットとデメリットを勘案した上でワクチン休暇を導入する場合、対象や休暇日数などを決めていく必要があります。続いて、ワクチン休暇の具体的な導入方法について確認していきましょう。
最初に行うのは、ワクチン休暇の内容を決めることです。具体的には、ワクチン休暇の対象と取得ルールを含めた次の内容です。
(ワクチン休暇の内容一例)
2日以上の休暇取得や家族のワクチン接種の付き添いを認めるなど、休暇取得の条件を幅広く設定した方が、従業員にとってワクチンを接種しやすい環境と言えます。しかし、実際には、企業活動への影響も考慮せざるを得ません。また、ワクチン休暇の設定については、会社にとって都合のいい日に接種予約が取れるとは限らないことに留意しましょう。
ワクチン接種の実施が急がれるため、ワクチン休暇の導入についてはトップダウンで決まる企業も少なからずあるでしょう。政府がワクチン休暇の導入を促している背景もありますが、あくまでもワクチン休暇は企業が従業員のために設ける制度です。企業には従業員の意見を聞き、使い勝手のいい制度にすることが求められます。
ワクチン休暇の内容が決まったら、決定内容を記載するために就業規則を変更しなければなりません。就業規則の変更については、労働基準法で次のような定めがあります。
つまり、策定した就業規則を労働組合などに提示し意見を聞いた上で、労働基準監督署長に届け出し、従業員にワクチン休暇について周知しなければなりません。
その他、就業規則に記載のない次の事項についても従業員への周知が必要です。
地方自治体によっては、ワクチン休暇を導入する企業を支援するところもあります。可能ならば、地方自治体の支援制度の活用も検討してみましょう。
例えば、東京都ではワクチン休暇制度等の整備に取り組む中小企業等に対し、無料で専門家を派遣・助言する事業を始めました。主な内容は次の通りです。
参考:東京都「新型コロナウイルスワクチン接種等に係る特別休暇制度等の整備に取り組む中小企業に専門家を派遣します」
山梨県では、ワクチン接種の副反応により休業し有給休暇が取得できない労働者などに対し、一定額を助成する制度「新型コロナウイルスワクチン副反応休業助成金」を設けました。会社がワクチン休暇を無給とした場合、休暇を取得した従業員の収入の減少を補うことができます。主な助成内容は次の通りです。
最後に、既にワクチン休暇を導入している企業の事例を紹介します。
アサヒグループホールディングス株式会社は、2021年5月から国内全グループ会社の従業員約18,000名を対象に、次のワクチン休暇などを実施しています。
なお、ワクチン接種時の就労免除は、従業員本人の接種だけでなく家族の付き添いも対象です。
アフラック生命保険株式会社ではワクチン休暇を「ワクチン・リーブ」と呼び、接種日と副反応で休んだ日を合わせて、最大12営業日のワクチン休暇を取ることができます。
出勤日にワクチン接種に行った場合、「通常勤務時間の外出扱い」とすることも可能です。「ワクチン・リーブ」「通常勤務時間の外出扱い」ともに時間単位、終日で取得でき、どの制度を利用するかも選択できます。
SMBC日興証券株式会社のワクチン休暇は、接種日と副反応による休業日の両方が対象で、取得可能な休暇日数は最大4日です。
また、勤務時間中のワクチン接種については、家族の付き添いを含めて欠勤扱いにはなりません。
株式会社ココカラファインが、2021年4月から実施しているのが「新型コロナワクチン時間休暇制度」です。
全従業員を対象に、出勤予定日にワクチン接種を行う場合、接種にかかった時間分(1回最大4時間まで)は勤務扱いとなります。最大2回までの時間単位の休暇制度です。
株式会社リブセンスが2021年5月21日より実施しているのは次の通りです。
上記に加え、ワクチン接種会場までの往復交通費を会社が負担し、家族や同居人の付き添いや看病に対しても特別有給休暇を付与します。
ヤフー株式会社が2021年5月12日より実施しているのは次の通りです。
また、家族の付き添いに対しては、正社員を対象に積立有給休暇(※)の取得ができます。
※有効期間の過ぎた年次有給休暇を繰越できる同社独自の休暇制度
ワクチン休暇は企業が任意で設定する特別休暇です。ワクチン休暇制度を設けるか、休暇に対し給与を支払うかについては、企業が独自に判断するものです。
しかし、新型コロナウイルス感染症対策として、政府は企業に対しワクチン休暇の導入を検討するよう要請しています。また、従業員が安心して仕事ができるように「ワクチン接種しやすい環境」を整えるのは、企業側にもメリットのあることです。
政府は「希望する全ての対象者への接種を2021年10月から11月にかけて終える」ことを目指しています。企業は、従業員の休暇による企業活動への影響なども考慮し、ワクチン休暇の導入の可否を早急に判断する必要があると言えるでしょう。
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