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日頃、社内の産業保健対応をするにあたり、「こんな時どうしたらいいんだろう」「他社はどう対応しているんだろう」と思い悩むことはありませんか。
『産業医と事例で学ぶ!人事労務の『困った』を解決するヒント』では、VISION PARTNERメンタルクリニック四谷 副院長・岸本雄先生に寄稿いただき、産業保健で起こった事例(※)に基づいた対応、そういったケースを未然に防ぐTipsを取り上げていきます。
※事例の細部は変更してご紹介しています。
目次
「で、先生、本当に働けるんですか?」
これは、復職面談の場で人事労務担当者から産業医である私によく投げかけられる質問です。
診断書には「復職可能」と書かれていて、面談時の本人の様子も明るく見える。生活リズムも整っているようだし、主治医も問題ないと言っている――それでも、人事労務担当者としてはいまひとつ納得できない。こうした場面は、現場で非常によく見られる光景です。
この違和感の正体は、「復職可能」という言葉が、誰にとって・どのような状態を指しているのか、関係者の間で共通認識がないことにあります。本人にとっては「日中に活動できるようになった」ことを意味しているかもしれませんし、主治医としては「日常生活が規則正しく送れている」レベルで復職可能と判断している場合もあります。しかし、会社が一般的に求めているのは「従来通りに業務を遂行できる」状態であることが多いように思います。
このように、復職をめぐっては「働ける状態(すなわち「復職基準」)」の認識が関係者ごとにずれており、誰がどの基準で判断するのかが問題になりがちです。
「じゃあ、先生が復職基準を決めてください」
こう求められることもありますが、産業医が一人で基準を定めるのは現実的ではありません。なぜなら、実際の業務の内容や、どの程度の配慮なら現場が対応可能かといった情報は、会社、特に現場の上司や同僚が最もよく把握しているからです。
したがって、復職基準を設定する主体は会社であり、産業医は「会社が定めた復職基準に『医学的に妥当な範囲』で本人が達しているか」を評価する立場にあります。
とはいえ、会社側としても突然「復職基準」を決めなさい、といわれても、目安がなければ運用できないため困ってしまうと思います。その際に有用なのが、「業務基準」「労務基準」「健康基準」という3つの観点です(この考え方は※高尾メソッドを参考にしていますが、一部私なりに改変しております)。
職場復帰は元の慣れた職場へ復帰させることが原則です。 よって本来的な業務基準は、従来の労務が提供できる状態か、もしくは、1-2ヶ月程度の軽減業務を行えば、従来の業務が提供できる程度に回復しているかになります。ただ問題は、休職中に実際の業務を行わせることができないという点です。実際の業務をさせてしまうと労務提供と見なされ、賃金支払義務や傷病手当金の支給停止といった事態が生じるためです。このため、間接的に業務に関係する活動を通じて、仕事への復帰準備状況を把握するという手段を取ります。
たとえば、私が関与した休職者は、皆と協力しながら患者さん全員分の食事の調理、献立作り、配膳準備などを行う業務を行っていました。このケースでは以下のような課題を実施してもらいました。
いずれも本来の業務内容を意識しつつ、あくまで「日常生活の範囲内で実施可能な活動」として設定されたものです。
これにより、本人の自己申告だけでは見えにくい、注意力や体力の現実的な水準を確認できます。
労務基準では、就労を前提とした生活リズムの維持が可能かを確認します。よく使われるのが「生活習慣表」の記録です。
例えば、始業が8時半で通勤に60分かかる場合、逆算して6時半頃には起床し、朝食・着替え・通勤準備を済ませ、8時15分に会社近くに到着していることが望まれます。そこから定時(17時半)まで睡眠をとらなくても活動が継続できるかを確認します。
さらに、それが週5日連続で4週間程度継続できているか、週末に反動で寝込んでいないか、といった安定性も重要な評価ポイントです。
在宅勤務や時差出勤といった柔軟な勤務形態が契約上認められている場合は、それに即した生活リズムが構築できているかどうかを見ていく必要があります。
復職に向けた準備期間中に病状が不安定にならないか確認することも重要です。腹痛や息切れのせいで出勤や外出がままならず(いわゆる「事例性」になります)、休職に至ったケースであるならば、その頻度や程度が悪化しないか確認する必要があります。一方で自分なりの対処行動や緊急用の内服でコントロールができているのであれば、それはむしろ望ましい状態といえるでしょう。
なお上記の①~③の活動が実施可能かについては、主治医もしくは産業医に事前に確認することが重要です。ときに休職者側が「厳しすぎる」と難色を示すことがありますが、一般的にこれらの復職基準を確認するタイミングは、主治医から「復職可能の診断書」が発行された後です。この診断書は、本来「休職前の従来の業務が提供可能な状態になっている」ことを前提としているため、従来の業務より軽負荷である①~③の活動ができない時点で、客観的に就労可能とは判断するのは難しくなる――と、本人に説明する形になります。
ここまでの内容を読んで、ややハードルが高く感じられた方もいるかもしれません。もちろん、すべてのケースで厳密な基準を設けているわけではありません。しかし、復職基準について話し合い、すり合わせていくことで、「すでにクリアできている部分」と「これから整えるべき部分」が明らかになります。
休職者本人・主治医・産業医・人事労務担当者、場合によっては現場の関係者も含めて、「働ける状態」についての共通認識を形成することが、結果的にスムーズな職場復帰への大きな一歩になるのです。
※高尾メソッドとは、岡山大学の産業医である高尾総司准教授が構築した、業務遂行レベルに基づくメンタルヘルス対応の手法です。10年以上の実績と、多くの企業での運用を通じて発展してきた実践的モデルであり、「職場は働く場所である」という原則に立脚しています。詳細はこちらをご覧ください。
休職中の従業員が職場復帰をするにあたり、事業者にはさまざまな対応が求められます。 本資料は産業医監修のもと、厚生労働省「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」の内容に基づいて作成した以下の資料をセットにしたものです。 流れがわかる!従業員の職場復帰支援ガイド 復職及び就業上の配慮に関する情報提供書 復職支援に関する情報提供依頼書 産業医面談記録表 両立支援プラン/職場復帰支援プランの作成フォーマット 生活記録表 「従業員の職場復帰の流れについて把握したい」 「従業員の職場復帰時に必要な資料がほしい」 とお考えでしたら、ぜひご活用ください。
本資料は、企業担当者様が従業員の方に配布することを目的とした資料になります。 内容を編集してご利用いただけるよう、PowerPoint形式でご用意しております。 【資料の内容】 ・従業員の皆様へ:産業医と面談してみませんか? ・産業医面談の流れ ・よくある質問:Q1.産業医との面談内容は会社に伝わりますか? ・よくある質問:Q2.産業医と面談する意味は?面談した後はどうなるの? ・一般的な産業医への相談と事後対応例 ・産業医プロフィール
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