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事業者には、従業員の健康と安全を守る義務があります。中でも重大な怪我や死亡を招く労災を発生させないために、不安全行動の防止策は必要不可欠です。
効果的な対策を講じるには、まずどのような原因によって不安全行動が起きてしまうのかを理解しておくことが重要です。
本記事では、不安全行動の原因や労災事例、防止策を解説します。
不安全行動とは、労災が発生する原因となる行動です。具体的には、作業者本人や業務関係者の安全を脅かす可能性がある行動を意識的に行うことを指します。
不安全行動は、作業者の不注意や先入観など人的要因によって引き起こされる傾向にあります。そのため、職場の安全を守るために、作業者一人ひとりの安全への心がけが重要です。
【参考】厚生労働省「職場のあんぜんサイト:不安全行動」
【関連記事】労災認定基準をケース別に解説!直近の改正や認定されない例も紹介
厚生労働省では、以下の12項目を不安全行動の類型として定義しています。
(出典:厚生労働省「職場のあんぜんサイト:不安全行動」)
上記の12項目から、不安全行動は安全装置や機械を適切に使用しない、誤った動作を行うなどの人の行為が定義されていることが分かります。
自社でこのような行動や状況が発生している場合は、大きな事故を引き起こす可能性があるため、早急な改善が必要です。
不安全行動と不安全状態の違いは、作業者の安全を脅かす原因が「人にあるのか」「環境にあるのか」の点です。
不安全行動は、従業員が起こす危険につながる行動です。一方、不安全状態とは業務上の環境に起因し、業務に使用する機械や物品が安全ではない状態にあることを指します。
たとえば、不安全状態とは以下のような状態です。
不安全状態は物的要因によるため、作業者の安全を保つには職場を整頓し、機械を適切な状態で管理することが求められます。
【参考】厚生労働省「職場のあんぜんサイト:不安全行動」
不安全行動が発生する原因は、主に以下の2種類があります。
不安全行動の原因を把握し、適切な対策を講じましょう。
【参考】厚生労働省「安全行動を確保するマネジメントのために」
ヒューマンエラーとは、人の特性による誤りです。以下のような行動により、作業者に危険がおよびます。
ヒューマンエラーには「事故や災害には至らなかったものの、あと一歩間違えば危険だった」という状況がよくあります。そのような、事故の一歩手前でヒヤリとした、ハッとした状態をヒヤリハットといいます。
ヒヤリハット自体は小さなミスでも、作業者の「うっかり」に対策を講じなければヒューマンエラーはなくせません。ヒューマンエラーをなくすために、まずはヒヤリハットがどのような状況で発生しているのかを把握し、減らしていきましょう。
【関連記事】ヒヤリハットで事故を防ごう!業種別の具体例と対策
リスクテイキングとは、危険と認識しているにもかかわらずあえて行動してしまうことです。このくらいなら大丈夫、他の人もやっているから問題ない、面倒だから手順を省こうなど、危険を軽視した考えが不安全行動につながります。
たとえば、滑りやすいため走ってはいけない作業場で、作業が遅れているから走るなどの行動がリスクテイキングによる不安全行動です。
作業者はリスクよりも目の前のメリットのほうが大きいと感じてリスクテイキングを取っていることが考えられるため、危険に対する教育実施が重要です。
厚生労働省の分析結果によると、労災の要因は不安全行動(人的要因)や不安全状態(物的要因)によるものがそれぞれ9割を超えるとされています
さらに、不安全行動および不安全状態の両方が労災の要因となるものは、全体の8割を占めます。
不安全行動や不安全状態が生じる原因は、安全衛生管理上の欠陥にあると考えられるため、安全衛生教育を含む労働災害防止対策に努めましょう。
【参考】厚生労働省「労働災害を防止するために」
不安全行動は、どんな職業でも起こり得ます。労災発生事例を参考に、自社に当てはまる状況はないか確認してみましょう。
一つ目は、集合住宅の建築現場にて発生した建設業の事例です。
トラッククレーンが木材を搬入する際、クレーンで木材を吊り上げたところ荷崩れが起きました。その際、吊り荷の下にいた作業者が木材に挟まれ、労災が発生しています。
本事例の原因と対策は以下のとおりです。
原因 | 対策 |
クレーン作業中に人が吊り荷の下に入った | 吊り荷の下に人が入らないよう措置を講じる |
クレーンの吊り荷が不安定な状態だった | 吊り荷には荷崩れしにくい方法を用いる |
作業方法が運転者任せであり、決定した作業方法に不備や不足があった | 吊り荷の下に人が入らない配置にするなど、適切な作業方法を決定する |
吊り荷が過荷重状態であった | 過荷重にならない方法で作業する |
作業者に対する安全教育が不十分だった | 作業者への安全教育を実施する |
この事例では、人が吊り荷の下に入り込む不安全行動が発生しています。さらに、吊り荷が不安定かつ過荷重である不安全状態も発生していました。人的要因と物的要因が合わさって引き起こされた労災といえます。
【参考】厚生労働省「職場のあんぜんサイト:労働災害統計」
【関連記事】安全衛生対策項目の確認表とは?建設業における必要性やひな形を紹介
二つ目は、木材加工などを行う加工所で発生した製造業の事例です。
かんな盤を用いて木材を加工していた作業者が、機械の一部のみを停止させた状態で清掃を行いました。その際、稼働していた機械のローラー部に作業者の衣服が巻き込まれ、労災が発生しました。
本事例の原因と対策は以下のとおりです。
原因 | 対策 |
機械の清掃を行う際、機械全体を停止させなかった | 清掃・給油・検査・修理・調整などを行う際は、危険をおよぼす可能性のある機械の運転を停止する |
作業主任者の直接指揮のもとで作業を行わなかった | 機械の清掃時は、必ず作業主任者の直接指揮のもと実施する |
モルダーのローラー部の清掃方法が書面化されていなかった | 木材加工用機械で行う作業手順を書面化し、手順書の周知・教育を徹底する |
リスクアセスメントや作業者への危険予知活動、教育など、労災に関する取り組みや管理体制の整備を行わなかった | 社内の安全管理担当者を明確にし、労災防止活動を定期的に行う |
この事例は、主に人的要因によって労災を招いています。適切な手順を確立し、手順に沿った作業を行っていれば防げた可能性は高いでしょう。
【参考】厚生労働省「職場のあんぜんサイト:労働災害統計」
三つ目は、店の環境と作業者の行動により発生した飲食業の事例です。
飲食店で食器洗浄をしていた作業者が、床が濡れていたことにより転倒し労災が起きました。作業者は体の不調を感じましたが通院せず、翌日亡くなっています。
本事例の原因と対策は以下のとおりです。
原因 | 対策 |
床が濡れており転倒の危険性があったが、すぐに拭き取るなどの対応を怠った | 滑りにくい素材や構造の床面にして、安全な状態を維持する |
一部の安全衛生教育が自主学習に任せられており、教育指導が不十分だった | 作業者へ安全衛生教育を行い、転倒による危険性や防止策を十分に理解させる |
作業者から耐滑性の高い作業靴購入の要望があったが購入できておらず、着用していなかった | 作業者に作業に適した服装をさせるなど、危険に対する具体的な措置を講じる |
安全推進者など安全管理の担当者が不在で、労災防止への対応ができていなかった | ガイドラインにもとづき安全推進者の配置や、職場環境および作業方法の改善対応を行う |
この事例も、不安全行動と不安全状態が組み合わさって労災が発生しています。作業者のみの問題ではなく、安全衛生管理者がいない、作業に適した服装を準備できていないなど、事業者側の対応にも改善を要する事例です。
【参考】厚生労働省「職場のあんぜんサイト:労働災害統計」
不安全行動は人の行動が原因であるため、考えや行動を改めれば発生を防げます。不安全行動を防ぐための対策は以下のとおりです。
作業者に不安全行動をさせないために対策を講じましょう。
【参考】厚生労働省「労働災害を防止するために」
労働安全衛生法により、従業員の雇い入れ時や作業内容が変更された際に安全衛生教育をするよう義務付けられています。
安全衛生教育は一度だけではなく、定期的な実施が重要です。作業者に注意を促すだけで終わりにせず、教育を継続して作業者の労働安全意識を高めましょう。
【参考】e-Gov法令検索「労働安全衛生法」
【関連記事】
OHSMS(労働安全衛生マネジメントシステム)とは?実施するメリットや導入方法も解説
作業者の労働衛生意識を高めるために、作業前にミーティングを行いましょう。
ミーティングでは、明確な作業指示の実施や、作業者の健康状況の確認をします。また、より作業者の労働衛生意識を高めるため、あわせてKY活動(危険予知)を実施しましょう。
KY活動の主な取り組みは、以下のとおりです。
第1段階 | 作業内容を確認しどこが危険要因になるか、どんな事象(事故)が起きるかを指摘する |
第2段階 | 危険要因を追求し、とくに危険なポイントを絞る |
第3段階 | 危険ポイントに対する具体的な対策を考える |
第4段階 | 対策のうち実施すべき項目を選び、行動目標を決める |
作業者自身で危険要因を洗い出し原因や対策を考えることで、安全意識を高めるとともに、事故につながる要因を排除できます。ミーティング時は、積極的にKY活動に取り組みましょう。
【参考】厚生労働省「KY活動」
作業手順を書面にするなどして明確化しましょう。定型作業の手順を明確にすれば、ヒューマンエラー防止につながります。
また、書面化する際にはリスクアセスメントも取り込むのがおすすめです。リスクアセスメントとは、作業で起こり得る危険性を洗い出し優先度をつけてリスクを減らしていくことです。手順を書面化する際は、リスク低減の対策を盛り込みましょう。
【関連記事】リスクアセスメントの評価表とは?書き方や実施方法を解説
作業場所を巡視し、危険要因がないか確認しましょう。不安全行動につながる恐れがあれば、早急な改善指示が必要です。
たとえば、床が濡れていることを発見したら、清掃する・滑りにくい作業靴を労働者に履かせるなど対策を講じます。
他にも、作業者の導線が悪いと危険な場所でも「すぐ通りすぎれば大丈夫」と考え、不安全行動を起こしかねません。危険な場所は立ち入れようにする、安全な場所が導線になるようにするなど対策しましょう。
不安全行動は、ヒューマンエラーやリスクテイキングといった人的要因によって引き起こされます。また、作業環境など物的要因が発生原因となる不安全状態も、不安全行動とともに労災発生の割合が高いので注意が必要です。不安全行動は、作業手順を明確にしたり安全衛生教育を徹底したりすることで防げるため、作業者の安全管理に努めましょう。
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