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企業内で発生した重大な労務問題、特に社員の過労死や自殺といった事案は、企業と遺族、そして現場の上長にとって、計り知れない重圧となります。こうした危機的な状況において、「弁護士の壁」を超えて、誠実な対話を通じて関係者の心のケアに貢献できるのは、豊富な経験を持つ産業医の存在に他なりません。
今回は、28年という長いキャリアの中で、電力や造船といった巨大企業から金融・製薬まで幅広く産業医を経験し、大学でも教育・研究に携わる先生にお話を伺いました。先生が経験した最も困難な事案と、その中で見出した産業医の真のプロフェッショナリズムをお届けします。
【プロフィール】 年代: 60代 専門科目: 循環器内科、心療内科 産業医経験: 28年(26社) 主な働き方: 大学での教育・研究・臨床と嘱託産業医を兼任 |
―― 先生は28年という大変長いキャリアをお持ちです。産業医という仕事の魅力はどこにあると思われますか?
先生: 臨床では、薬の処方や手術など、直接患者さんに行為を施します。一方、産業医の魅力は、自身の専門知識を「助言や情報提供」という間接的な行為で活かし、組織全体の健康に寄与できることです。組織の仕組みや文化に影響を与え、多くの働く人をより健康にできることに、大きなやりがいを感じます。
―― 28年のキャリアの中で、最も大変だった事例を教えてください。
先生: ある社員さんが亡くなられた事案です。ご遺族が会社に責任を求め、裁判になり、さらに当時の上長が「自分の指導が悪かったのではないか」と自責の念から鬱病になってしまいました。私は上長の方の治療のための紹介状を書き、面談を重ねてサポートしました。
―― その上長の方への面談で、どのような言葉をかけられましたか?
先生: 面談を重ねる中で、上長の方からは「産業医との会話が自分の力になり、前向きに向けるようになった」という言葉をいただきました。また、会社からは弁護士を通じたやり取りを求められましたが、私は人事と相談の上で、直接ご遺族に説明に伺いました。
―― 裁判の渦中にもかかわらず、直接遺族と対話されたのですね。
先生: はい。何度もご遺族とお会いし、上長の状況や当時の状況を丁寧に説明しました。ご遺族からは「産業医が、裁判を離れたところで気持ちの面での話をしてくれて感謝している」というお言葉をいただきました。直接伺った当初はプレッシャーを感じていましたが、弁護士との字面だけのやり取りでは伝わらない部分で、気持ちの面での落としどころを見つけられたことが、私にとって最も嬉しかった成功体験であり、産業医のプロとしての役割だと感じています。
―― 企業が産業医を選任する際、人事担当者の方にどのような視点を持ってほしいと思われますか?
先生: 産業医は、社員の病気を防ぐだけでなく、組織内で起こる予期せぬ困難な事態、特にメンタルヘルスに関わる危機的状況において、「裁判という枠を超えた、人と人との心のケア」を担える専門家であることを認識してほしいです。
私の経験から、形式的な対応だけでなく、誠実に対話を通じて関係者全体の回復をサポートできる、人間力と経験値を持った産業医を選んでいただくことが、結果として企業の信頼を守ることにつながります。
50人以上の事業場向け
1,000人以上の事業場向け
※有害業務従事の場合は500人以上
単発の面談が必要な事業場向け