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【産業医一問一答:50代・小児科】命を救った「予防の一言」。自らの経験を糧に企業を支える産業医の強い信念

「産業医」の役割を、健康診断の事後措置や休職者対応だと捉えてはいませんか? しかし、優秀な産業医は、企業の未来だけでなく、働く社員の「命」そのものをも守る、プロフェッショナルな「予防の専門家」です。

今回お話を伺ったのは、臨床経験24年を経て産業医となり、現在はフリーランスとして20社以上の企業を支える先生です。小児科医としての経験と、ご自身の病気の経験から、早期介入と予防に人一倍強い信念を持つ先生が語る、産業医の真の役割と、企業に求められる「命を守る健康経営」のあり方をお届けします。

【プロフィール】
・年代: 50代
・専門科目: 小児科
・産業医経験: 6年(20社以上)
・主な働き方: 臨床と並行して嘱託産業医として活動(現在はフリーランス)

産業医としてのキャリアは「自分の経験」が原動力に

―― 先生は、臨床経験が長い中で産業医の資格を取得されています。何か決定的なきっかけがあったのでしょうか?
先生: 24年の臨床経験を経て産業医資格を取りましたが、その原動力の一つには、私自身の病気の経験があります。以前、健康診断の「要経過観察」を放置してしまい、大病を患ってしまったんです。医師である私でさえ健康を軽視してしまうことがある。だからこそ、社員の方々には、自分の経験を通して「健康診断を放置することの怖さ」を伝えなければならない、という強い使命感を持つようになりました。病気をした分、社員の皆さんに深く寄り添える自負もあります。

―― ご自身の体験が、産業医としての活動の根幹になっているのですね。
先生: はい。臨床として、すでに病気になってしまった方を診るのがメインでしたが、産業医は「病気を未然に防ぐ」予防医療の最前線です。以前、血圧が200を超えているのに受診勧奨を無視していた社員さんが、旅行中に脳梗塞になってしまったことがありました。「先生の言うことを聞いておけばよかった」という言葉を聞き、予防の重要性を痛感しました。私は、社員が健康上の理由で大切な仕事を辞めることは、本人だけでなく、家族や社会にとっても損失だと考えています。

現場の命を守る、産業医の“先回り”の視点

―― 産業医として活動される中で、「これはうまくいった」「やってよかった」と感じる具体的な成功体験を教えていただけますか?
先生: 一番強く印象に残っているのは、屋外で働く社員さんが多い企業での事例です。私は衛生委員会で、ハチに刺された際のアナフィラキシーショックと、自己注射器(エピペン)による対処について啓発を行いました。

企業側がその話を真剣に受け止め、リスクのある社員にエピペンを持たせてくれていたんです。すると後日、実際に社員さんがハチに刺され、エピペンのおかげで命が助かったという報告を受けました。

臨床では薬を処方したり手術をしたりと直接的な行為をしますが、産業医は「衛生委員会での啓発」や「意見を述べる」という間接的な行為を通じて、社員の命を救うことができる。この成功体験は、私にとって最大のやりがいであり、産業医の仕事の真の魅力を示していると感じています。

企業人事担当者に伝えたい「早期介入」の重要性

―― 先生は現在フリーランスで、柔軟に面談対応をされているそうですが、企業側にはどのような点に注意してほしいとお考えですか?
先生: 産業医は、臨床と違い時間の融通が利きやすいので、病んでいる社員さんが増えて、訪問時以外の臨時の面談対応が増えてきています。これは社員さんの状態が悪化してから相談が来ている、ということの裏返しでもあります。

―― 具体的に、企業にはどのような対応を期待されますか?
先生: やはり「早期介入」です。健康診断の再検査を放置している社員さんや、些細な体調不良が見られる社員さんに対し、人事や衛生管理者の方が「先生に相談してみませんか」と声をかけるだけで、大きな病気を防げる可能性があります。産業医の役割は、単なる事後処理ではなく、社員の健康という「企業の資本」を守り育てることです。
エムスリーキャリアを通して産業医を選任される企業様には、ぜひ、病気の社員に寄り添う自負を持った私のような産業医を選んでいただき、早い段階で健康問題を食い止め、社員が長く活躍できる環境づくりに貢献したいと考えています。

エムスリーキャリア健康経営コラム編集部

エムスリーキャリア健康経営コラム編集部

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