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社員の休職は、企業にとっても社員本人にとっても、大きな負担となります。特に、メンタルヘルス不調による休職が増加傾向にある現代において、休職からの「復職判断」は、人事労務担当者にとって喫緊の課題であり、その判断の適切さが企業の生産性や健全な職場環境の維持に直結します。
「復職判断」は、単に社員が職場に戻れるかどうかを判断するだけでなく、再休職を防ぎ、社員が安心してパフォーマンスを発揮できる環境を整えるための重要なプロセスです。しかし、その判断基準やプロセスは複雑であり、適切な対応に悩まれている人事労務担当者の方も少なくないでしょう。
本記事では、「復職判断」における人事労務担当者の皆様の役割に焦点を当て、その具体的な進め方、判断基準、注意点、そして関連する法規や制度について、網羅的かつ実践的に解説します。本記事を読めば、貴社における「復職判断」のプロセスをより明確にし、社員の円滑な職場復帰を支援するための具体的な指針を得られるはずです。
目次
社員の健康は、企業にとってかけがえのない財産です。休職中の社員が適切なタイミングで、適切な環境で復職することは、社員の健康状態の悪化を防ぎ、再休職を予防するために不可欠です。
不適切な復職判断は、社員の病状悪化、業務パフォーマンスの低下、ひいては労災リスクの増大につながる可能性があります。また、再休職の繰り返しは、社員本人だけでなく、周囲の社員の負担増、士気の低下、企業の生産性低下といった負のスパイラルを引き起こしかねません。
労働契約法第5条には、使用者の安全配慮義務が明記されています。社員の心身の健康に配慮することは、企業の法的義務であり、適切な復職判断は、この安全配慮義務を果たす上でも極めて重要です。
また、障害者差別解消法(正式名称:障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律)では、事業主に対し、障害者に対する合理的配慮の提供を求めています。メンタルヘルス不調も障害とみなされうるケースがあり、復職にあたっての適切な配慮は、企業の社会的責任としても求められます。
社員が安心して働ける職場環境は、企業のイメージアップにつながり、優秀な人材の獲得・定着に寄与します。休職からの復職支援が手厚い企業は、社員からの信頼も厚く、エンゲージメントの向上にもつながります。
逆に、復職判断や復職支援が不適切であれば、社員の離職につながるだけでなく、企業イメージを損なう可能性もあります。
復職判断は、複数の関係者が連携して進める複雑なプロセスです。ここでは、一般的な復職判断のプロセスをステップごとに解説します。
休職中の社員が復職を希望する場合、まず主治医による「復職可能」の判断が前提となります。社員は、主治医から「復職可能」と記載された復職診断書を会社に提出することが一般的です。
この診断書は、社員の病状が回復し、業務遂行能力が回復していることを示す重要な書類となります。ただし、主治医はあくまで治療の専門家であり、職場の具体的な業務内容や負荷を把握しているわけではありません。そのため、主治医の診断書は復職判断の第一歩であり、これだけで復職を決定すべきではありません。
主治医の診断書が提出された後、企業は社員に対し、会社指定の医療機関や産業医との面談を求めることが推奨されます。これは、社員の現在の状態を客観的に評価し、業務遂行能力や就業上の配慮事項を判断するために非常に重要です。
特にメンタルヘルス不調の場合、主治医は患者の症状回復を重視しますが、産業医は「職場において業務を遂行できるか」という視点から評価します。
産業医の意見や社員の状況を踏まえ、円滑な職場復帰を支援するための「職場復帰支援プラン」を策定します。このプランには、以下のような内容を含めることが望ましいです。
また、いきなりのフルタイム勤務が難しいと判断される場合、「試し出勤制度」の活用も有効です。これは、本格的な復職の前に、模擬的な出勤や短時間勤務などを行うことで、社員が職場環境に慣れ、業務遂行能力を確認する期間を設けるものです。
職場復帰支援プランの一環として、段階的な復職を促すために半日勤務から開始するケースも多く見られます。
産業医の意見、主治医の診断書、職場復帰支援プランの内容などを総合的に検討するため、復職判定会議(または復職判定委員会)を開催することが、より客観的で公平な判断を下す上で推奨されます。
この会議には、人事労務担当者、産業医、直属の上司、場合によっては専門職(保健師、カウンセラーなど)も参加し、多角的な視点から社員の復職の可否、および復職後の具体的な支援策について議論します。
復職判定会議の結果を踏まえ、最終的に会社が復職の可否を決定します。復職が決定した場合は、社員に辞令を発令し、正式に復職となります。辞令には、復職日、配属先、就業条件などを明記します。
復職の目安としては、一般的には、休職期間中に症状が安定し、日常生活に支障がなくなり、試し出勤などで業務遂行能力が確認できるレベルとなります。その判断ポイントについて見ていきましょう。
最も基本的な判断基準は、社員の心身が回復し、業務を安全かつ適切に遂行できる状態にあるかどうかです。
休職に至った原因が、職場環境や業務内容にある場合は、復職後に同様の問題が再発しないよう、原因を明確にし、対処策を講じることが不可欠です。
原因が社員の個人的な問題にある場合でも、ストレスマネジメントの研修機会の提供や、カウンセリングの継続的な利用を促すなど、再発防止に向けた支援を検討します。
社員が安定して通勤できるか、日常生活に支障がないかどうかも重要な判断基準です。
これらは、業務遂行能力と密接に関わります。
社員が復職するにあたり、何らかの配慮が必要な場合、その内容を具体的に明確にする必要があります。
そして、それらの配慮を企業側が現実的に提供できるか、受入体制が整っているかを確認します。現場の理解と協力も不可欠です。
また復帰先は、原則として元の職場への復職が望ましいですが、状況によっては配置転換も検討されます。特に休職原因が元の職場環境にある場合は、慎重な判断が必要です。
社員本人の復職に対する意欲と、就業上の配慮事項を受け入れ、治療を継続する覚悟があるかどうかも重要です。
本人の意思を尊重しつつ、安易な復職は再休職につながるリスクがあるため、慎重な見極めが必要です。
休職中の社員との適切なコミュニケーションは、復職判断を円滑に進める上で不可欠です。
企業内に明確な職場復帰支援制度を整備し、社員に周知することが重要です。
産業医は、復職判断における重要なパートナーです。産業医との連携を強化し、必要に応じて外部の専門機関(EAPサービス、カウンセリング機関など)も活用することで、より専門的で適切な支援が可能となります。
人事労務部門だけでなく、社員が復職する部署の理解と協力も不可欠です。
特に、復職後の社員に対する上司や同僚からの声かけは、社員の安心感につながります。しかし、過度な声かけやプライベートに踏み込む内容は避けるべきです。配慮事項を踏まえた、適切な声かけが重要です。
復職はゴールではなく、新たなスタートです。復職後の適切なフォローアップは、再休職を防ぎ、社員が長期的に安定して就業するために不可欠です。
復職時の配慮事項は、社員の回復状況に合わせて段階的に見直し、最終的には解除を目指します。
社員の再休職を防ぐためには、根本的な職場環境の改善も重要です。
万が一、再休職に至った場合でも、再休職時の対応と、再度の復職判断のプロセスを明確にしておくことが重要です。
人事労務担当者が復職判断を行う上で、関連する法律や制度への理解は不可欠です。
労働契約法第5条により、企業は社員の生命および健康について、必要な配慮をする義務(安全配慮義務)を負います。適切な復職判断と復職支援は、この安全配慮義務を果たす上で極めて重要です。
労働安全衛生法に基づき、企業は社員の健康管理に関する様々な義務を負います。
障害者差別解消法は、障害を理由とする不当な差別的取扱いを禁止し、合理的配慮の提供を求めています。メンタルヘルス不調も、程度によっては「障害」とみなされ、復職にあたって合理的な配慮が求められる場合があります。
社員の健康情報(病状、休職理由など)は、機微な個人情報であり、個人情報保護法により厳重な管理が求められます。社員の同意なしに第三者へ開示することはできません。
業務に起因する疾病(メンタルヘルス不調を含む)は、労災の対象となる可能性があります。復職判断の過程で、業務と疾病の因果関係が疑われる場合は、慎重な対応が必要です。
ここでは、人事労務担当者の方からよく寄せられる復職判断に関する質問と、その回答をまとめました。
A. 主治医の診断書だけでは情報が不足している場合、社員の同意を得た上で、産業医から主治医へ問い合わせる、あるいは企業として「復職に関する意見書」を主治医に記入してもらうなどの対応が考えられます。企業が求める情報を明確にすることで、より具体的な意見を得やすくなります。
復職診断書の内容として、「業務遂行能力の有無」「就業上の配慮事項」「再発防止のための留意点」などを記載してもらうと、企業として判断しやすくなります。
また、企業側で求める情報を含んだ「復職に関する意見書」のフォーマットを作成し、例文として提示するのも有効です。
A. 復職判定会議のメンバーは、人事労務担当者(必須)、産業医(必須)、直属の上司(必須)、必要に応じて保健師、カウンセラーなどの専門職、総務部門担当者など、多角的な視点から判断できるメンバーで構成することが望ましいです。
A. 試し出勤制度は、社員の負担を考慮し、労働時間や業務内容を限定的に設定することが重要です。また、期間や目的を明確にし、社員との間で合意形成を図る必要があります。制度の運用については、就業規則に明記することも検討しましょう。
A. まずは、復職時の配慮事項が適切に守られているかを確認し、必要に応じて見直しを行います。定期的な面談を通じて、社員の状況を丁寧にヒアリングし、体調や業務への適応状況を把握します。場合によっては、産業医との再面談や、主治医との連携も検討します。すぐに期待通りのパフォーマンスが出なくても、焦らず、段階的な回復を支援する姿勢が重要です。
A. 再休職を繰り返す社員に対しては、初回よりもさらに慎重な復職判断が求められます。休職に至った根本原因を再確認し、職場環境の抜本的な改善や、より専門的な医療機関との連携、場合によっては配置転換や、休職期間満了後の自然退職といった規定に基づいた対応も視野に入れる必要があります。個別の状況に応じて、粘り強く支援しつつも、企業としての限界も見極める必要があります。
A. 復職診断書は「復職が可能である」という主治医の意見であり、必ずしもすぐに復職させなければならないわけではありません。企業側は、産業医面談や復職判定会議を通じて、社員の心身の状況、業務遂行能力、職場の受入体制などを総合的に判断し、復職日を決定します。主治医の診断書提出から復職までには、数週間程度の期間を設けるのが一般的です。
本記事では、社員の「復職判断」について、その重要性から具体的なプロセス、判断基準、そして関連する法律や制度まで、幅広く解説しました。
人事労務担当者の皆様は、社員の心身の健康を守り、企業の持続的な成長を支える上で、復職判断における重要な役割を担っています。単に休職社員を職場に戻すだけでなく、社員が安心して、長期的に活躍できる環境を整えることが、皆様に課せられた使命です。
適切な復職判断は、社員の健康回復と再休職の予防に直結し、結果として企業の生産性向上、良好な職場環境の維持、そして企業の社会的信頼の向上に繋がります。
本記事で解説した内容を参考に、貴社における「復職判断」のプロセスをより強固なものとし、社員一人ひとりの健康とキャリアを支援する体制を構築されることを願っています。
休職中の従業員が職場復帰をするにあたり、事業者にはさまざまな対応が求められます。 本資料は産業医監修のもと、厚生労働省「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」の内容に基づいて作成した以下の資料をセットにしたものです。 流れがわかる!従業員の職場復帰支援ガイド 復職及び就業上の配慮に関する情報提供書 復職支援に関する情報提供依頼書 産業医面談記録表 両立支援プラン/職場復帰支援プランの作成フォーマット 生活記録表 「従業員の職場復帰の流れについて把握したい」 「従業員の職場復帰時に必要な資料がほしい」 とお考えでしたら、ぜひご活用ください。
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