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従業員の健康を守り、活き活きと働ける職場環境を整備することは、企業にとってその重要性が増しています。しかし、産業保健活動には「唯一の正しい答え」があるわけではありません。リソースも限られる中で効果的な産業保健活動を実現するには、産業医などの専門家と連携することが必要です。
本記事では、精神科専門医・指導医、精神保健指定医の資格を持つ産業医・三宮先生(仮名)にインタビュー。企業と産業医が協働することで、従業員の健康課題を解決し、より良い職場環境を築いていくための具体的なヒントや、産業医の専門性を最大限に活かすコミュニケーションの秘訣を伺いました。
前編では、産業医になったきっかけから、産業医との連携を成功させるために初期段階で取るべきコミュニケーションについて深掘りします。
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精神科専門医・指導医、精神保健指定医の資格を持ち、病院勤務医としても活躍。これまで7年間で、従業員50人未満から300人規模の企業を中心に、合計10社の嘱託産業医を務める。 現在は5社の嘱託産業医を担当。企業と従業員にとっての最適な着地点を見出すことをモットーとしている。 |
――先生は精神科医としてご活躍されながら、産業医としても活動されています。産業医になられたきっかけを教えていただけますか?
同僚から産業医について教えてもらったのがきっかけでした。産業医資格の取得自体は、試しに取ってみようという軽い気持ちからでした。そのため、資格を取って5年くらいは産業医として活動していなかったんです。
転機が訪れたのは、資格更新のタイミングで参加した研修会でした。そこには実際に活動している先生も、私のように資格だけ持っている先生も混ざっていて、生の質疑応答を聞く中で、医療とは全く違う「健康管理」という視点の重要性を感じました。
特に精神科領域で悩んでいる先生方の質疑を聞いて、これからの時代は精神的な健康管理へのニーズが増していくと感じたんです。自分の専門性を活かせる場だと思い、嘱託産業医として活動を始めることにしました。
――初めて産業医として企業に入られた時の印象はいかがでしたか?
最初はやはりドキドキしましたね。いわゆる「1社目の壁」というものを感じました。でも、いざ担当してみると、思ったほどのハードルは感じませんでした。病院での治療の相談とは全く違うんです。当事者である従業員が直接困っているというよりは、管理者や衛生委員会のメンバーなど、何百人もの従業員を代表する担当者の方々から相談を受ける形でした。
たとえば、最初は「高血圧ってどのくらいの数値になったら働かせない方がいいんですか?」といった質問を受けました。私たち医師にとっては当たり前のことが、企業の方には通じない。なにかに特化した専門医というよりは、地域に根差して幅広く対応する“町医者”のような役割だと感じました。
――産業医として活動される上で、特に大切にされていることは何でしょうか?
私は、産業医としての自分と、病院勤務医としての自分は全く別物だと考えています。
勤務医は、病気を“治す”ためにどうするかを判断し、指示する立場です。病気を診るのが仕事です。一方、産業医は「医療につなげなければいけないのか、そこまでではないのか」というリスク判断、つまり“仕分け”をするのが主な役割です。従業員が病院を受診すべきか、就業制限が必要か、といった判断ですね。
「病院を受診してください」と言っても、素直に行っていただけないケースも多々あります。その場合は、上司などに協力していただくことも必要になります。一方で、こういったケースでやらないと決めていることもあります。それは、こちらから従業員を呼びつけて面談することです。仕事を止めてまで説教されても、嫌な感情しか残りませんし、それでは本人のためになりません。医師であれば、強く言うことで治療を進める役目もありままが、産業医の役割は「いかに病院につなげるか」。その動機付けを会社と連携して行うことだと考えています。
たとえば、「就業制限は掛けないけれど、このままだと掛ける可能性もある」ということを総務から伝えてもらう、といった連携も行います。ただ、就業制限をかけること自体にはあまり意味がないと思っています。解除条件が必要になりますし、受診する動機にはなっても、治療を継続する動機にはならないと感じるからです。数回受診して終わりになる可能性もあります。大切なのは、従業員自身に「当事者意識」を持っていただくことなんです。
――産業医に求められているのは治療ではない、ということですね。人事労務担当者は、産業医にどのようなスタンスで接すると良いでしょうか?
人事労務担当の方には、産業医に「何を期待しているのか」を最初に明確に伝えていただきたいと、常々思っています。
たとえば「がん治療から復帰した従業員がいつから働けるのか」「糖尿病で血糖値が高い従業員をどこまで働かせていいのか」といった具体的な相談を受けることがあります。このように、相談内容が明確であればあるほど、産業医としても動きやすくなります。ときには、産業医としてすぐに答えが出ない場合もあります。そうした場合でも「知らない」で止めるのでなく、「どこに聞けば良いか」と、次の選択肢を提案できるように努めています。
企業側が産業医に何を求めているのか、その期待値を共有することが、効果的なコミュニケーションの第一歩であり、産業医の活動をよりスムーズにする鍵となるでしょう。
企業の人事・労務担当者が思い悩むことの1つに、従業員のメンタルヘルス対応が挙げられるでしょう。 本資料では、VISION PARTNERメンタルクリニック四谷の産業医兼精神科医の岸本 雄先生に、 産業保健現場で起きていることやその対応について解説いただいた内容をまとめています。
50人以上の事業場向け
1,000人以上の事業場向け
※有害業務従事の場合は500人以上
単発の面談が必要な事業場向け