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社員の健康意識を変える!人事と二人三脚の取り組みとは―産業医インタビューvol.1前編

従業員の健康を守り、活き活きと働ける職場環境を整備することは、企業にとってその重要性が増しています。しかし、産業保健活動には「唯一の正しい答え」があるわけではありません。リソースも限られる中で効果的な産業保健活動を実現するには、産業医などの専門家と連携することが必要です。本記事では、これまで多岐にわたる業種で、約20社の嘱託産業医を務めてきた産業医・一里塚先生(仮名)にインタビューを実施。前編では、先生が産業医になったきっかけや、人事との連携による取り組みなどを伺いました。

産業医インタビュー・一里塚先生プロフィール画像 産業医資格のほか、血液専門医や内科専門医などの資格を持つ。これまでにIT、人材派遣、メーカー、不動産など、多岐にわたる業種で約20社の嘱託産業医を務める。活動歴は8年。従業員50人未満から999人まで幅広い事業場での経験を持つ。現在は週1回、嘱託産業医として活動中。「働く人の役に立ちたい」という思いを胸に、企業と社員の「幸せな着地点」を探ることをモットーとしている。趣味は読書とミュージカル観劇。

「働く人の役に立ちたい」一般企業での経験が産業医の原点

――先生が産業医を目指されたきっかけを教えてください。
私は元々、一般企業に3年ほど勤めていた時期があり、その経験から「働く人の役に立ちたい」という思いが強くなって、医師を志しました。当時は産業医という存在を知らなかったのですが、医師になってからその存在を知り、「これが私のやりたいことだ!」と思ったんです。ただ、いきなり産業医になるのは難しいと知り、まずは内科医として研鑽を積みました。医師になって6年目くらいだったでしょうか、専門医の資格取得と並行して産業医の資格も取得しました。

――専門医の資格取得と並行してとなると、かなりお忙しかったのではないでしょうか?
そうですね。あの頃はまだ独身でしたし、時間も比較的自由にできたので、取得しておいて良かったなと感じています。今は、産業医資格の更新講習を受けるのも一苦労です(笑)

全社員の健康リスク度を独自評価し、一人ひとり働きかけも

――産業医として活動を始めるにあたり、苦労されたことはありましたか?
最初の1社目を見つけるのが大変でした。「経験者優遇」という壁にぶつかり、応募してもなかなかご縁がなく…。秋口から年末にかけて求人が増えると聞き、根気強く応募を続けました。3ヶ月ほど音沙汰がない時期もあり、「このままできないんじゃないか」と思ったこともあります。「1社目の壁」という言葉があるようですが、まさにその通りでしたね。

――これまでの産業医活動で特に印象に残っているエピソードがあれば教えてください。
600人規模の人材派遣会社でのお話です。健康診断結果を拝見した初年度、人事の方がとても熱心で、一人ひとりに丁寧にフィードバックをして、精密検査が必要な方に対しては「ちゃんと受診してくださいね」と声がけするようにしたんです。すると、翌年には要精密検査の人数がぐっと減って、本当に驚きました。

中高年の方が多く、脂質異常症の方が非常に多かったのですが、悪玉コレステロールの数値が改善した方や、高血圧が改善された方もいらっしゃいました。個別に面談すると「もう受診しました」という声が多く、1年前とは皆さんの健康意識が大きく変わっていたんです。人事の方のご尽力によるところが大きいと思いますが、この経験を通して、健康診断結果をしっかり見てフィードバックすることの重要性を痛感しました。

――具体的にどのような働きかけをするようになったのでしょうか?
全社員のお名前をエクセルに入れていただき、私が独自に作ったリスク度を全員分入力しました。高リスクの方には、私のコメントを添えたメールを人事から送ってもらうようにしました。その際、血圧が高いとどうなるか、といった少し“怖い”感じのポスターを添付してもらったりもしましたね。他にも「〇〇科を受診してください」という具体的な指示や、保健指導的なコメントも入れました。

私の妹も一般企業で働いていて、健康診断結果を放置しがちなんです。それを知って「けっこう放置するものなんだな」と実感しました。だから、少しくどくど言って干渉しないと動いてくれないのかな、とも思いますね。妹もくどくど言われてようやく受診していましたから。

――そこまでされる産業医の先生は珍しいのではないでしょうか?
どうでしょうね。私も他の産業医の方々がどうされているのか分からないのですが、せっかく企業から費用を払っていただいているので、費用対効果を出したいという思いがあります。最近は、初訪問のときに「細かく見ても良いですか?」と企業に確認するようにしています。「良いですよ」と言われたら、くどくど言うようにさせていただいています(笑)

社員も企業も「幸せになる着地点」を探す

――産業医活動で大切にされていることは何でしょうか?
いくつかあるのですが、まず1つは「一人ひとりの社員を取りこぼさないこと」です。仕事には必ず緊張感や責任感が伴い、ストレスは発生します。面談の対象者ではない方でも、誰もがストレスを抱えているという意識を持って対応しています。

2つ目は、「社員と企業、どちらもが幸せになる着地点を見つけること」です。メンタル不調者への産業医面談では、特に強く意識しています。もちろん、元気に働き続けてもらうことが一番ですが、もし「ここじゃもう無理だ」となった場合、退職がその方にとって良い選択であることもあります。ただ、社員が急に退職となると、会社も困るでしょう。だからこそ、社員と企業の双方にとって最も良い着地点はどこなのかを常に模索しています。

そして、面談においては、「気持ちに寄り添いつつも、産業医として意図を的確に伝えること」を大切にしています。メンタル関連の面談は長くても30分で終わらせるよう心がけていて、いかに相手の気持ちに寄り添いつつ、最後にはこちらが伝えたいことを的確に伝えるかを意識しています。これには正解がないからこその難しさがありますね。

後編につづく

エムスリーキャリア健康経営コラム編集部

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