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法令の改正により、2025年6月1日以降では熱中症対策に求められる内容が変わりました。法改正の背景には、昨今の熱中症による労働災害(特に死亡災害)が増加傾向にあることが挙げられ、職場において喫緊の課題とされています。
本記事では、厚生労働省の通達に示された内容をもとに、その要点と対応策について紹介します。
目次
出典:厚生労働省「2024 年(令和6年) 職場における熱中症による死傷災害の発生状況(確定値)」より作成
近年では、夏場の気温上昇等を背景に熱中症による死傷者数が増加傾向にあります。厚生労働省の公表しているデータ(上図)によれば、2024年の死傷者数は1,257人(前年比151人・約14%増)とされており、統計開始から最も多い数となりました。
中でも建設業と製造業における熱中症の発生件数が多く、業務中の事故による死傷者数は全体の約4割を占めています。
また、熱中症による死亡者の数も3年連続で30名を超える事態になっており、職場における熱中症対策は喫緊の課題です。
これらの理由等を背景に、熱中症対策に関する法改正が行われ、2025年6月1日から施行されています。
今回の法改正では、事業者に対して適切な熱中症対策に取り組むことを義務化しており、これに違反した場合には罰則が科せられる可能性があります。
熱中症による重篤化や死亡事故を防ぐため、必ず対策に取り組むようにしましょう。
今回の法改正によって義務化された内容について、具体的な対応策は以下の3つです。
①連絡体制の整備:熱中症の自覚がある人、またはそのおそれがある人がいる場合の連絡体制を整備する
②初期対応の手順作成:熱中症が発生している(そのおそれがある場合)に身体を冷やす、医療機関に搬送するなど重篤化を防ぐ初期対応の手順を決めておく
③上記①・②など熱中症対策の内容について、職場にて周知する など
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※労働安全衛生規則の一部を改正する省令
(熱中症を生ずるおそれのある作業)
第六百十二条の二
事業者は、暑熱な場所において連続して行われ(新設) る作業等熱中症を生ずるおそれのある作業を行うときは、あらかじめ、当該作業に従事する者が熱中症の自覚症状を有する場合又 は当該作業に従事する者に熱中症が生じた疑いがあることを当該 作業に従事する他の者が発見した場合にその旨の報告をさせる体 制を整備し、当該作業に従事する者に対し、当該体制を周知させ なければならない。
2 事業者は、暑熱な場所において連続して行われる作業等熱中症 を生ずるおそれのある作業を行うときは、あらかじめ、作業場ごとに、当該作業からの離脱、身体の冷却、必要に応じて医師の診 察又は処置を受けさせることその他熱中症の症状の悪化を防止す るために必要な措置の内容及びその実施に関する手順を定め、当 該作業に従事する者に対し、当該措置の内容及びその実施に関する手順を周知させなければならない。
出典:厚生労働省令第五十七号ーーーーー
なお、対象となるのは前述した「WBGT値28度以上または気温31度以上」の環境下で「連続1時間以上または1日4時間を超える」ことが見込まれる作業についてです。
これらの熱中症対策を怠った場合は、事業者に対し6か月以下の拘禁刑、または50万円以下の罰金が科されます。
労働者の健康と安全を守るためにも、確実に取り組む必要があります。
まずは熱中症対策の基本について知っておきましょう。熱中症の基本的な対策は「見つける」⇨「判断する」⇨「対処する」というものです。
また、対策においてはWBGT値(暑さ指数)の活用があります。WBGT値には作業の強度(代謝率レベル)により区分の例が示されており、この基準値をもとにした対策が必要となります。
以下の図のように、身体作業の強度とWBGT値の基準を比べ、それを超える場合は適切な熱中症対策を行うようにします。
具体的な対応については厚生労働省の「熱中症予防のための情報・資料サイト」が参考になりますので、そちらもご覧ください。
出典:厚生労働省「職場における熱中症対策の強化について」(2025年)
今回の法改正によって義務化された主な内容は「報告体制の整備・周知」「手順の作成と周知」の2つです。適切に対応するためにも、事前に確認しておきましょう
1.報告体制の整備と周知が義務化
作業者が熱中症の自覚症状がある場合、または他の作業者が熱中症の疑いを発見した場合に、その旨を報告させる体制を事業者が事前に整備します。そして、その内容について関係作業者へ周知することが義務付けられました。
また、職場巡視やウェアラブル機器の活用や、双方向での定期連絡を行うなどして、積極的に熱中症の症状を把握するよう努めてください。
周知の方法については、事業場の見やすい場所への掲示やメール、文書の配布、朝礼での伝達など、複数の手段を組み合わせることが効果的です。
2.手順の作成と周知が義務化
熱中症が生ずるおそれのある作業を行う場合、作業からの離脱、身体冷却、必要に応じた医師の診察・処置など、症状の悪化を防止するために必要な措置の内容と、その実施に関する手順を事業者が事前に定め、関係作業者へ周知することが義務付けられました。
例えば初期対応の手順内容として、身体の冷却方法(例:作業着を脱がせて水をかける、アイスバスに入れる、涼しい休憩所に避難させる、ミストファンを当てるなど)や、医療機関への搬送等(医療機関の連絡先・所在地等の情報を含む)についてあらかじめ手順を作成する必要があります。
周知の方法については前述したものと同様に、全ての労働者が把握出来る方法を取ることが重要です。
熱中症対策は人事などの担当者だけでなく、労働衛生の専門家である産業医と連携することで、より効果的な取り組みにすることができます。
熱中症対策について理解を深めるためには、労働衛生教育や衛生委員会(衛生講話)の場を有効活用することも効果的です。
熱中症の危険性がある作業に従事させる労働者や、その作業管理者に対し、産業医等の専門家を通じて以下の事項の教育を実施します。
日常的な健康管理と指導も重要です。
体調やコンディション(睡眠不足や体調不良、飲酒、朝食未摂取など)は熱中症発症に影響を与えることがあります。
また、糖尿病や高血圧といった持病の有無にも注意が必要であることから、衛生委員会などの場で適切な対策について事前に審議しておきましょう。
体調不良時の報告や始業前の健康状態の確認などについては、産業医からアドバイスをもらうことも有効です。
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今回の熱中症に関する法改正は、事業者により詳細かつ具体的な熱中症対策の実施を求めるものです。
人事担当者および産業医は、厚生労働省の通達(基発0520第6号)の内容を深く理解し、労働者の不調を早期発見し、迅速な対応ができる体制の整備・周知を徹底することが、健康と安全を守る上で不可欠です。
適切な予防と迅速な対応によって、熱中症による労働災害を未然に防ぎ、重篤化を防ぐための取り組みを強化していきましょう。
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