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「パワハラ法案が可決したことで、人事や社内においては具体的にどのような対策や対応が必要なのだろうか・・・」
――この本案の登場によって人事や総務、労務担当者の中には、気になる社員の顔がチラついている人も少なくないはずです。
2020年4月から、パワハラ法案と呼ばれるパワーハラスメント(以下、パワハラ)防止を義務ける関連施策が正式に始動することが決まりました。
この記事では「法案の意味やその内容」「企業として、どのような対策や心構えが必要なのか?」など、ご担当者の疑問を一つでも多く解消していきます。
最初に、パワハラ法案について簡単にご説明します。
この法案を一言で説明すると、「これまで企業の自主性に任せていた『パワハラへの防止策』を義務化する」というものです。
これまでセクハラやマタハラ(※)に対しては、企業への防止措置が義務化されている一方、パワハラに対しては企業の裁量に任せているのが現状でした。
そのため、企業によって対応にばらつきが出ていたのです。
厚生労働省の調査によると、従業員規模によらず、パワハラ予防・解決への取り組みを実施する企業は増加してきています。
しかし、取り組みを実施している企業はおよそ52.2%に過ぎず、特に取り組みを考えていない企業が25.3%存在するのです(※1)。
企業におけるパワハラへの取り組み格差を少しでも減らすため、そして誰しもが働きやすい未来を作るためにも、国を挙げてパワハラ問題に取り組む必要がありました。
現在までに判明している企業に求められる対策としては、相談窓口の設置、社内調査体制の整備、当事者のプライバシー保護、パワハラをした従業員の処分内容を就業規則に設けることなどです。
対策に取り組まない企業は厚生労働省から指導が入り、それでも対応しない場合には企業名が公表されるなどの措置が取られる予定です。
国は具体的な指針を2019年内に公表できるよう現在動いています。
本法案は大企業に対しては2020年4月、中小企業に対しては2022年4月に施行される見込みです。なお中小企業の施行は大企業よりも2年遅れとなっていますが、その間は努力義務とされます。
※マタハラ:妊娠、出産、子育てを機に受けるハラスメントの総称。マタニティ・ハラスメントの略語である。
ではパワハラと一言でいっても、具体的にどのようなものがあるのでしょうか。
まずパワハラの定義を簡単にご説明します。
パワハラの定義は「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」です(※2)。
要約すると、「職場内で自分が有利な状況にいることを利用して、業務の適正範囲を超えた行動を取らないでください」ということになります。なお、業務上必要とされる指導や注意は、これに該当しません。
次に厚生労働省が定義するパワハラ6つの典型例をご紹介します。
【6種類のパワハラ典型例】
(引用元:厚生労働省 職場のパワーハラスメントについて 職場のパワーハラスメントの6類型(※2))
例えば、「人間関係からの切り離し」というのは一人だけ違う部屋で仕事をさせたり、社内イベントに声をかけなかったりなどを指します。
「個の侵害」というのは、交際関係について過度に尋ねたり、パートナーや家族の悪口を言われたりなど、プライベートな領域に関するハラスメントのことです。
働く人の身体的・心理的安全が脅かされるのはもちろん、その人を仕事において正当に評価していない業務要求、ひとりの人間として尊重しない行動も含めパワハラなのです。
なお、裁判等で取り上げられたパワハラを大きく分類するとこの6種類になるだけであり、これがパワハラの全てを表すものではないことに注意してください。
では、会社として今後どのようなパワハラ防止に向けた対策が求められてくるのでしょうか。
ここでは3つの内容をご紹介します。
組織として「パワハラ問題に立ち向かう」という意思を示す意味から、トップメッセージを全従業員へと発信する必要があります。
社内イントラ、年次挨拶など発信する形は企業によって様々ですが、パート・アルバイト、派遣社員を含め雇用形態によらず全従業員に見える形で伝えることをおすすめします。
「社長が乗り気ではない・・・」と悩む場合には、発信することの意義はもちろん、パワハラがもたらすリスクなどを踏まえた上で経営判断をして欲しいと説得してみましょう。
並行して行っていきたいのが、社内制度の見直しと明確化です。
就業規則や服務規律などに「パワハラ」を行ったものに対する処罰規定の適用条件や処分内容といった懲戒規定などをはじめ、相談者の不当扱いの禁止などを明確に記載する必要があります。
パワハラに関する詳細規定を別途定める方法も有用です。
労使協定を結んで、組合と連携しながらパワハラに立ち向かうことも忘れてはいけません。
制度を整えただけでは社内に浸透しないため、制度が変わったことを社内報や研修などで周知していくことが求められます。
社内規定を見直した場合には、関連事項の説明が従業員に対して求められることから、このタイミングに併せて背景などを説明することが有用ではないでしょうか。
さらにパワハラに対する認識アンケート、社員研修などを通してパワハラに対する啓蒙活動を実践していく必要があります。
特に20代〜30代と40代以上になると価値観の違いから「パワハラ」というものに対する認識自体が異なります。
「ここまでは大丈夫だろう」という自分の感覚が全く通用しないケースもあることを企業として強く発信することが必要です。
最後に担当者の皆さんがパワハラ問題に向けて動く上で、持って欲しい心構えを中心にご説明します。
様々な世代が一緒に働くからこそ、パワハラは誰が被害者・加害者になるかが分かりません。
「〇〇課長に限って・・・」のような思い込みを担当者が持っていると、問題が起こった時にパッと行動に移せない可能性があるからです。
パワハラ対策を自社だけで取り組もうとするとリサーチなどに膨大な時間を要します。
ここで活用して欲しいのが厚生労働省が出している「パワーハラスメント対策導入マニュアル」や「実態調査」をはじめとする各種資料です。
いきなり社内で使用するよりも、事前に担当者レベルで内容を把握しておくことで、よりスムーズに活用できます。
自社の方向性が見えていない時こそ、先行してパワハラ問題に動いている他社の事例を学んでみませんか。
もちろん自社に直接活かせるケースもあれば、そうでないケースもあります。
しかし、関連事項の引き出しが多いことに越したことはないため、ぜひこの機会に勉強してみましょう。
厚生労働省の「明るい職場応援団」に掲載されている企業インタビューは、最初の学びにちょうど良いかと思います。
パワハラ問題にこれから取り組んでいきたい企業に向けて、パワハラ法案の概要をはじめ、対策に向けて企業として取り組みたいことを中心にご紹介しました。
まずは担当者レベルから取り組めるパワハラ法案の理解やガイドラインの確認から開始し、パワハラ法案対策の協議へと繋げていきましょう。
【引用】
※1:平成 28 年度 厚生労働省委託事業 職場のパワーハラスメントに関する 実態調査報告書(概要版) P.2-P.3
※2:厚生労働省:パワーハラスメントの定義について
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